暑い夏と共に、「プール開き」がやってきます。子どもたちにとっての一大イベントです。お水をかけあったり、水の中に顔をつけてみたりと、水遊びの時間を楽しむ子は多いことでしょう。
ただ、水遊びには危険を伴うリスクがあるため、いつも以上に注意が必要です。そこで今回は、プール開きまでに確認しておきたい、水遊びを行う際の保育者の役割とポイントをご紹介します。安心・安全に配慮した環境作りを行いましょう。
まずは確認!プール開きの基礎知識
プール開きは、ただ単に遊ぶために行うのではありません。子ども達の成長を促す上での「ねらい」や「目的」があり、適切な時期と時間を選んで行っています。
まずは水遊びのねらいや、プール開きの時期といった基礎知識を確認しましょう。
プール開きの時期と場所
プール開きの時期は、気温が高くなり始める6月下旬~7月上旬になるのが一般的です。気温が上がらない場合は無理に行わず、その年の天候やその日の気温を確認し、適切な日を選びます。
水遊びを行うのは、幼稚園や保育園の敷地内であることがほとんどです。プールが常設されている園はほとんどないので、園庭の片隅やベランダなどに簡易プールを用意します。
また、プール納めの時期は、気温が下がり涼しくなり始める8月下旬~9月上旬になることが多いでしょう。
プール開きのねらい
プール開きや水遊びは、主に以下のような目的の元に行っています。
- 5感を使い楽しむ
- 水の性質に興味を持つ
- 季節にちなんだ遊びを通して夏を感じる
- 安全や健康について学ぶ
また、年齢ごとさらに具体的な「ねらい=保育目標」も定めているのが一般的です。園によって異なるものではありますが、例をあげると以下のようになります。
- 水中での体の動かし方を知る
- 水が顔にかかることを怖がらずに楽しむ
- 水着の着脱や持ち物の管理を自分で行う
水遊びは、ただ単に水を使って遊ぶだけの時間ではなく、子どもの発育上必要な体験ができる機会でもあります。そのため保育者は、全体目標と年齢ごとのねらいを考慮し、個人に合わせた働きかけを行いましょう。
必要な持ち物
プールが開始されると、今までの登園グッズに加えプールに入るための用具も必要になります。水遊びの際の持ち物は、以下を参考にしましょう。
- プールバッグ:水をはじく素材や速乾性のある素材のもの
- 水着(男の子):ウエストが丁度よいサイズのもの
- 水着(女の子):ビキニでないワンピースのもの
- 帽子:自分で被りやすいもの
- タオル:タオルを巻いて着替えができるデザインのもの
- その他:ゴーグル、おもちゃ、フェイスタオル、サンダルなど園の規定による
特に男の子の場合、水着を下着代わり履いて登園することも多いですが、その場合は替えの下着を持っているか事前に確認するようにしましょう。持ってくるのを忘れていることも少なくありません。
水遊びに潜む危険やリスク
プールにはさまざまな事故が起こる可能性があります。保育者はいつも以上にしっかりと子どもたちを観察しなければなりません。
乳幼児は、数センチしか水が張っていない状態のプールでも溺れることがあります。また、プールサイドを走って転倒し頭を地面に打ち付けるといった事故も多いです。他にも、熱中症や水を介する感染症にかかるリスクもあります。
特に園児の数が多い場合や、職員が少人数で対応しなければならないときなど、「目を離す時間」が長くなると事故に繋がる危険性も上がります。
プール開き前にチェックしたい項目
プール開きをする前には、保育者間で注意事項や流れなどを確認しておくことが大事です。そのためここでは、プール開き前に保育者が行っておきたいことをご紹介します。
学年ごとの保育目標
プール開きのねらいは園や学年ごと異なります。どのような目的で行うのかを、事前に確認しておきましょう。ねらいに合わせて、保育中の遊び方や用意する玩具など環境設定も変わってきます。
設備の点検
園児の人数が多い場合は、学年ごとプールを用意します。保育園では幼児と乳児に分ける場合や、規模の小さい園では園全体で1つのプールを共有することもあるでしょう。
プール開きの前には、プールを設置する場所に異変はないか、プールの破損や水がしっかりと溜まるかなどを確認します。また、玩具の点検や、プールの掃除も事前に行いましょう。点検は1人や2人ではなく複数人の保育者が行うことで、確認漏れを防ぐことができます。
消毒や日よけの用意
消毒や日よけといった、プール開きに伴う準備も必要になります。プールはさまざまな雑菌が繁殖しやすく、感染症やシラミなどが流行することもあるため、衛生管理は入念に行わなければなりません。当日までに消毒の用意を済ませておきましょう。
また水遊びでは、水に入ることで涼しくはなりますが、熱中症を避けられるわけではありません。プールサイドには日よけが必要です。屋根のある場所で水遊びができる場合は問題ありませんが、屋根がない場合にはテントを立てるなど工夫し、日よけを準備しましょう。
職員の流れ確認
プール開きの前には、水遊びの際の保育者の流れ、行動などを共有しておくことが重要です。特に複数人保育者がいる場合は、いつ誰がどのような動きをするのか事前に決めておきましょう。他にも、以下のような点について、保育者の間で確認しておく必要があります。
- 保育者の流れ
- 立ち位置と役割
- 緊急時の対処法
- 留意すべき感染症と消毒方法
- 健康管理のポイント
- 入水を控える場合の目安
子どもたちと約束
保育者の声かけ次第で、子どもたちが危険な目に遭うリスクを下げられるかもしれません。水遊びは、通常のカリキュラムとは少し異なる「特別感」があり、興奮状態になる子も多いです。
プール開きを行う前には、子どもたちの楽しみな気持ちを盛り上げながらも、「プールに潜むリスク」についてもしっかりとお話をしましょう。子どもたちに伝える内容は以下のとおりです。
- プールサイドやプールの中で友達を押さない
- プールサイドはゆっくり歩く
- 足や手の先から徐々に水をかける
- 体調が悪い場合や寒くなった際は保育者に伝える
- 友達の顔には水をかけない
- 先生の話をしっかり聞く
楽しみになる工夫
プールにはさまざまな危険があるとはいえ、子どもたちにとっては楽しいイベントです。その気持ちを盛り上げることも、保育者の役割といえます。
そのため、興奮を煽らない程度に、楽しみになる言葉かけや配慮も必要とでしょう。プールや水遊びに関する絵本を読むのも効果的です。
水遊び中の保育士の動き
プール開きを行い、いざ水遊びがはじまった際の保育士の動きを確認しておきましょう。保育者同士の打合せでも、全員で共有し確認しておきたいポイントです。
動きやすい服装に着替える
水遊びを行う際には、保育者も水着や濡れても良い服に着替える必要があります。保育者は子どもと一緒に水を浴びることも多く、またそのような遊び方をしない園でも、万が一の際にプールに入水することも考え、保育者も動きやすい服装で水遊びに参加するのが一般的です。
危険があった場合や子どもに注意を促す際、いつでもすぐ周りに知らせることができるよう、笛を首にかけてくことも忘れないようにしましょう。また、帽子を被ったり、冷たいタオルを首に巻いたりと、熱中症にも気を付けなければなりません。
準備体操
当日水着に着替えたら、入水前に必ず準備体操をします。ストレッチからはじめ、少しずつ体を起こしましょう。準備運動を行わない場合、いきなり水を浴びると心臓発作を引き起こすリスクがあります。
子どもたちが楽しく体操できるよう、音楽をかけたりラジオ体操を行うものおすすめです。また、準備体操は日よけの下で行い、熱中症にも配慮しましょう。
監視
水遊びが始まったら、入水中の子どもを注意深く監視します。子どもは数センチの水でも溺れることがあるため、できるだけ監視しやすい環境を作りましょう。
人数が多いと押し合いになるリスクが高いので、男女で分けるなど少人数ずつにグループ分けして入水する必要があります。また、補助の保育者を付け、入水しているグループとしていないグループの全員に目が届くようにしましょう。
プールに入れない子への配慮
風邪をひいていたり怪我をしていたり、水着を忘れてしまったりと、プールに入れない子も中にはいます。そういった園児に対する配慮も必要です。
保育室で遊べるようにするのも良いですが、できればプールサイドの日よけの下で、シャボン玉をしたり足だけ水で濡らしたりと、いつもと違う遊びができるとベストです。プールに入水しなくても、友達と同じように季節を感じ楽しさや喜びを共有できます。
子どもの健康観察
プールに入る日は特に、健康観察をしっかりと行いましょう。登園時と入水前、入水後、降園時の少なくとも4回の視診が必要です。
風邪気味、お腹が緩いなど気になることがあれば、無理をしてまで入水する必要はありません。また入水後は唇の色や顔色などを見て、様子がおかしければ体温を測り、必要に応じて園長や保護者にも連絡を入れます。
寒くならないよう、気温や湿度を確認しながら入水時間を決めるのも保育者の役割の一つです。また水遊び後は体力が落ち疲れが出やすいので、静かに過ごせるようなカリキュラムを組みましょう。
保護者への情報共有
体調が悪くなった場合はもちろん、子どもの様子を普段からこまめに連絡しておくことも大事です。連絡帳に記載したりお迎えの際に少し話をするよう心がけたりと、保護者の方へはさまざまな方法で連絡できます。
またプール開きが近づいてきたら、「いつプール開きを行うのか」「必要な持ち物」「体調がすぐれない場合の連絡方法」などをクラスだよりに記載し、全体へお知らせしましょう。水遊びが実際にはじまった際には、再度その様子をクラスだよりに載せて報告すると、子どもの様子を身近に感じられ保護者も安心できます。
自分自身の体調管理
保育士や幼稚園教諭など、子どもに関わる仕事に就く方は自分の体調にも気を付ける必要があります。水遊びを行った日は、大人でも体力が落ち疲れやすくなるため、少し早めに寝て体調を整えましょう。
また、保育者は自分のことがつい後回しになってしまうもことも多いですが、水遊び中にも水分補給や適度な休憩を入れて、無理のないように過ごすことが大切です。
水遊び期間中の健康観察方法とポイント
水遊び期間中には、子どもの体調管理を入念に行いましょう。ここでは、保育者が積極的に行いたい重要なポイントを具体的にご紹介します。
プール前後の視診
視診は登降園の時間はもちろん、日中の生活の中でも自然と行うものではありますが、プール前後は特にしっかりと視診を行いましょう。
全身をくまなくチェックするというよりも、表情や雰囲気、ちょっとした変化などで総合的に判断します。視診のポイントは以下のとおりです。
- 風邪症状の有無
- お腹の調子の変化
- 皮膚の状態
- 目の充血の有無
- 唇の色の変化
- シラミの有無
- 泣くことが多くないか
- 疲れた様子がないか
検温
体調に変化が見られた場合は、すぐに検温します。体温が平均より少し高めであれば、水遊びには参加せず、静かに過ごせるよう環境作りを行いましょう。
また、水遊び後に体温が上がった場合は少し様子を見て、なかなか落ち着かないようであれば、早めに保護者に連絡します。風邪なのか熱中症なのか、症状を見て適切な対応を取る必要があるので、日ごろから研修などを行い知識を深めておきましょう。
水分補給
水遊びの際は、こまめに水分補給を行います。水に触れることで涼しくはなりますが、熱中症のリスクが下がるわけではありません。10分に1回など時間を見ながら、保育者が積極的に水分補給の声かけを行いましょう。
またそれに伴い、保育者は水筒をプールサイドの日よけの下に用意し、喉が渇いたときにいつでも飲めるよう環境作りを行います。
気温に合わせて入水時間を決める
気温が高い日は15分程度、涼しめな日は5〜10分など気温に合わせて入水時間を調整しましょう。また、晴れているか雲が出ているか、湿度によって暑く感じるかなど、天気予報と体感で確認しながら保育者間で話し合って決めます。
準備運動や着替え、片付けなどの時間を考慮すると、全体で30分程度はかかります。あまりに涼しい日は、無理して水浴びの時間を設ける必要はありません。
少人数ずつ入水する
溺れないようにしっかりと監視するためにも、少人数に分けて入水することが大事です。また時にはプールに入ってから「寒い。やっぱり出たい!」と言う子もいます。1人1人に丁寧に対応できる環境作りを行うことも、保育士の役割の一つです。
入水しない子は、日よけの下でシャボン玉をしたり少量の水で遊んだりながら、入水しない時間も楽しく過ごせるよう配慮しましょう。
まとめ
プール開きは、子どもたちにとって一大イベントです。楽しい時間を過ごすためには、環境作りや事前準備、健康管理などをしっかりと行う必要があります。
保育者間で打ち合わせし、水遊び中の保育者の動きや役割分担、起こりうるリスクなども確認しながら、安全で楽しい水遊びになるように配慮しましょう。