「あんたがたどこさ」は、伝承遊びのひとつです。古くから日本の子どもたちに親しまれてきました。
「保育園で伝承遊びをしたい」「あんたがたどこさを保育に取り入れたい」と考えている保育士の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、あんたがたどこさの概要や遊び方・ルールを解説します。また、あんたがたどこさで遊ぶメリットや保育に導入する際のねらいについても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
あんたがたどこさはどんな遊び?
あんたがたどこさは、伝承遊びのひとつではありますが、世代や地域によってはあまり遊ばれていない可能性もあります。
言葉の響きに聞き覚えがあるものの、どのような遊びか分からないという方もいるのではないでしょうか。まずは、基本情報を紹介します。
あんたがたどこさの概要
あんたがたどこさは、熊本市船場地区に関する伝承遊びです。ボールやお手玉を使って遊ぶ際の挿入歌として歌われるケースが多いでしょう。
歌詞には「船場(せんば)」という言葉が出てきますが、これは、お城を立てるために土を掘った際にできる土塁のことです。熊本城を作っている場所に狸が現れ、その状況を歌ったものが、あんたがたどこさであると言われています。
あんたがたどこさの歴史
あんたがたどこさは、熊本県で生まれた童謡・伝承遊びであるという説が有力です。しかし、一説によると、「埼玉県で発祥した」とも言われています。
この説によると、江戸時代後期に、地元の子どもたちが薩長連合軍の兵士たちに「どこから来たのか」と尋ねられた様子が歌詞に描かれていると考えられています。
また、江戸時代の権力者であった「徳川家康」は「狸」というあだ名を有していることからも、この説が事実に近いと考える方も少なくありません。
あんたがたどこさで遊ぶ4つのメリット
数ある伝承遊びの中でも、あんたがたどこさはなぜ高い人気を誇っているのでしょう。あんたがたどこさで遊ぶメリットを4つ紹介します。
地域の伝統や文化を感じられる
あんたがたどこさは熊本、あるいは埼玉で作られた歌・遊びであると言われています。地域の伝統や文化を感じられるのは、伝承遊びならではの魅力です。
また、最近ではテレビゲームやスマホアプリなどで遊ぶことも少なくありません。このような遊びでは、日本らしさや伝統などはなかなか感じられないでしょう。
伝承遊びをきっかけに、日本の歴史や文化に興味を持つ可能性もあります。子どもの興味関心や好奇心を自然な形で伸ばせるのも嬉しいポイントです。
運動能力を高められる
あんたがたどこさは複数の遊び方ができるのが特徴です。歌を歌いながらボールをついたり、ジャンプをしたりするバーションで遊ぶことが多いでしょう。こういった動きをすることで、運動能力を向上させることができます。
歌いながらボールをついたり、タイミングを見計らって足を上げたりと、さまざまな運動機能を使用します。手足をバラバラに動かすため、脳が活性化されるのもメリットのひとつです。
忍耐力や集中力が身に付く
忍耐力や集中力が身に付けられるというメリットもあります。あんたがたどこさは体のさまざまな器官を同時に動かすため、難易度の高い遊びです。1回や2回練習しただけでは上達しないでしょう。
何度も繰り返し、根気強く練習することで、徐々に体の動かし方が分かるようになります。諦めずに取り組むことで達成感も味わえるのもうれしいポイントです。
幅広い年齢の子どもが楽しめる
あんたがたどこさの遊び方は複数あります。そのため、幅広い年齢の子が楽しめるという点も魅力のひとつです。
例えば、ボールをつきながらの遊びであれば、年長~小学生の年齢で楽しむことができ、ジャンプしながらの遊びであれば、年少児や乳児期の子でも楽しめます。
保育園で行う異年齢保育や、全学年を交えたレクリエーションで取り入れても盛り上がるでしょう。
あんたがたどこさを保育に導入するねらい
新しい遊びを保育に取り入れる際は、ねらいを定めましょう。あんたがたどこさを導入するねらいとして考えられる内容の一例は以下の通りです。
- リズムに合わせて体を動かすことの楽しさを知る
- ルールに沿って遊ぶ中で、社会性を培う
- 友達と楽しさを共有し、コミュニケーション能力を養う
- 日本の伝統や文化を感じ、自分の住む国に興味を持つ
- 諦めずに何度も挑戦する中で、集中力や忍耐力を身に付ける
- 体を思い切り動かし、運動機能を向上させる など
子どもの様子や発達に合わせて適切なねらいを定めることが大切です。上記の例も参考にしてみてください。
あんたがたどこさの遊び方は?
あんたがたどこさのルールや遊び方、歌詞を解説します。
あんたがたどこさの歌詞
あんたがたどこさの歌詞は以下の通りです。
船場山[2] には狸がおってさ それを猟師が鉄砲で撃ってさ 煮てさ 焼いてさ 食ってさ。それを木の葉でちょいと隠(かぶ)せ。」
伝承遊びに使われているわらべうたは、地域によって歌詞に違いがあります。地元で採用されているアレンジがあれば、その歌い方に合わせると良いでしょう。
あんたがたどこさの遊び方・ルール
あんたがたどこさは、複数の遊びに使用されています。特に有名な遊び方について解説するので、参考にしてみてください。
ジャンプバージョン
地面に4つの丸を描き、歌に合わせて丸に向かってジャンプしていくバージョンです。ルールは以下のようになります。
- あんたがたどこさを歌いながら、左右の丸に向かって交互にジャンプをする
- 歌詞の「さ」が出てくるタイミングで、前方の丸に向かってジャンプする
- 次のリズムで後方の丸に戻り、再度左右にジャンプする
- 最後まで同じように行う
- 「ちょいと被せ」の「せ」のタイミングで、足を左右に大きく開く
ボールバーション
手毬のようにボールをついて遊ぶバージョンです。遊び方のルールは以下のようになります。
- あんたがたどこさを歌いながら、ボールを地面につく
- 歌詞の「さ」が付く部分で、ボールが地面についている間に、片足を内側から外側に素早く抜く
- 「ちょいと被せ」の「せ」のタイミングでボールを強くバウンドし、背中でボールをキャッチする
お手玉バージョン
お手玉を使った遊びです。手のひらに乗せたお手玉を隣へと順番に回していく遊びで、大人数でも楽しめます。
- 1人1つお手玉を持つ
- 内側に向かって輪を作り、座る
- 左の手のひらを上に向けてスタンバイする
- 右手にお手玉を用意する
- あんたがたどこさを歌いながら、お手玉で左手をポンポンとしながら拍を取る
- 「さ」のタイミングで、お手玉で右側にいる人の左手にお手玉を乗せる(渡す)
- 最後まで同じように繰り返す
- 「ちょいと被せ」で、お手玉を頭の上に乗せる
- お手玉を前に落とし、キャッチできた人は成功
真似っこバージョン
あんたがたどこさの童謡を使用した手遊びです。動きが少ないため、室内遊びやバスレクリエーションでも活用できます。
- 向かい合って輪を作る
- リーダーを1人決める
- あんたがたどこさを歌いながら、左右にジャンプする
- 歌詞の「さ」が出てくるタイミングで、リーダーがポーズを取る
- 次の「さ」が出てきたタイミングで、他の人が真似する
- 最後まで同じように行う
- 「ちょいと被せ」の「被せ」で左右の人と手を3回ほどハイタッチする
あんたがたどこさを楽しむ2つのポイント
あんたがたどこさの遊びを導入する際のポイントは2つあります。事前にポイントを押さえ、みんなで楽しく遊べるよう準備しましょう。
年齢に合わせて難易度を変える
あんたがたどこさは、比較的動きが複雑で、難易度の高い遊びです。保育園で取り入れる場合、4~5歳児クラスに適しています。
そのため、乳児クラスや3歳児クラスで取り入れる場合、難しさを感じるかもしれません。そういったときは、年齢や発達に合わせて難易度を変更することが大切です。
例えば、「歌いながら最後までボールをつくことができたらクリアにする」「ジャンプするのは「さ」のタイミングだけにする」などと、アレンジできます。
初めは簡単にアレンジしたもので導入し、クラスで遊びを展開しながら、順次難易度を上げるようにしましょう。
コミュニケーションを増やす
あんたがたどこさは、友達と手を繋いで遊べるルールにアレンジすることもできます。「集団遊びにしたい」「もっと友達とコミュニケーションを取れるようにしたい」というときにおすすめです。アレンジ方法は以下の通りです。
- 全員で丸くなって輪を作り、手を繋ぐ
- あんたがたどこさの歌に合わせて回る
- 「さ」のタイミングで、全員でジャンプする
- 毎回同じタイミングでジャンプできたら成功
ジャンプ以外にも、手を叩いたりしゃがんだりとアクションを変更しても楽しめます。友達と協力しながら行うため、協調性やコミュニケーション能力を育てたいときにピッタリです。
あんたがたどこさを保育に取り入れる際の注意点
あんたがたどこさを取り入れる際の注意点を紹介します。事故やトラブルが起こらないよう配慮しながら遊びを展開しましょう。
ボールの使い方を練習する
ボールを使用してあんたがたどこさをする際は、ボールを手鞠のように地面に向かってつく練習をしましょう。
常に自分の足元にボールを固定させておく必要があるため、普段あまり使用しない子にとっては難易度が高いと感じるかもしれません。ボールの扱い方に慣れておくことで、上手にコントロールできるようになります。
体を動かす前に運動する
ジャンプバージョンやボールバージョンで遊ぶ際は、事前に少し体を動かして準備運動しておくことが大切です。普段使用しない筋肉を使うような動きもあるため、いきなり行うと怪我に繋がる恐れがあります。
足を屈伸する、手首・足首をくるくると回すなど簡単な運動でも良いので、事前に行いましょう。そうすることで、体が柔らかくなり怪我のリスクを下げることができます。
広いスペースを用意する
あんたがたどこさは、外遊びとしても室内遊びとしても楽しめる便利な遊びです。ただし、実際に遊びを展開する際は、できるだけ広いスペースを用意しましょう。
狭い空間で行うと、友達にぶつかったり、手が顔に当たったりと怪我やトラブルを招く可能性があります。
子どもたちにも、「周りの子とぶつからないように気を付けようね」などとあらかじめ声をかけておくと安心です。
まとめ
あんたがたどこさは、日本全国の幅広い年齢の方から親しまれている遊びです。ボールを使用した遊び方が最も有名ですが、ジャンプをして遊ぶものやお手玉で遊ぶという内容のものもあります。
さまざまなアレンジ方法があるので、クラスの子どもの年齢や発達の様子に合わせて遊びをアレンジしてみましょう。今回の記事も、ぜひ参考にしてみてください。