身近な廃材の一つである新聞紙は軽くて扱いやすいので、保育園や幼稚園でも安心して子どもが使用できる素材としてよく利用されています。
今回は、この新聞紙を使ってできる手軽で楽しい新聞遊びの他、保育に取り入れる際のねらいや注意点についてご紹介します。
新聞遊びとは
新聞遊びとは、丸めたり破いたりさまざまな形に変えて何かに見立てたりと、自由に楽しみながら音や感触を楽しむ保育園でも人気の遊びの一つです。
乳幼児期から楽しく遊ぶことができ、アイディア次第では無限に広がる新聞遊び。注意すべきポイントを押さえつつ、日々の保育に取り入れていきましょう。
身近にある新聞を活用しよう
乳幼児期の子どもでも簡単で安全に扱うことができる新聞紙は、外に出ることが難しいほどに暑い日や寒い日、雨の日でも室内で楽しく遊ぶことができます。
新聞は定期購読していれば毎日届くものなので、職員や各家庭に声をかけておけば簡単に手に入れることが可能です。
あらかじめ広告は抜いておき、新聞紙だけをストックしてもらうようにすると使用する際にスムーズです。
広告は紙質によっては指先を切ってしまったり、硬くて幼児には不向きだったりするので、新聞遊びに使用するのは新聞紙だけの方が良いでしょう。
導入の仕方
子どもにいきなり新聞紙を渡しても、遊び方がわからないとどうして良いのかわからなくて困ってしまうことが予想されます。
新聞遊びを行う前には、子ども達が新聞を使ってこれからどんなことが始まるんだろう?と興味が持てるような導入方法を考えていきましょう。
乳幼児期の子どもの場合、紙や新聞を題材にした絵本の読み聞かせがあるといいですね。
「ビリビリ」「クシャクシャ」といった紙にまつわる擬音語が含まれている絵本であれば、絵本から得たイメージと実際に新聞紙で遊ぶ体験を重ね、「ビリビリって言ってる!」「クシャクシャできた!」と、新聞遊びの楽しさや達成感を味わうことができます。
3歳以上児の場合には、保育士が新聞にどんなことが書いてあるのか読んでみたり、実際に折ったり破いたりしてみせるといいでしょう。
声に強弱をつけたり、ビックリした様子でTV欄を読み上げたり、先に広げた新聞紙を見せ、次に半分に折った新聞紙を見せながら「ちっちゃくなったー!」と言って見せたり、破いた部分から目や顔を覗かせて子ども達を見回したり。
「僕(私)もやってみたい!」と興味や好奇心を引き出してあげることができるような声掛けを行いながら進めていくことがポイントです。
保育に新聞遊びを取り入れるねらい
保育に新聞遊びを取り入れる際にはどのようなねらいがあるのでしょうか。
ねらいを押さえた上で、年齢に合わせた新聞遊びの内容を考えていくといいですね。
身近なものを利用して創造力を養う
不要になった新聞紙は、身近なものでありながら手に入れやすい廃材の一つです。
捨ててしまえばただのゴミになってしまいますが、遊びに取り入れることで、折ったり、切ったり、貼ったりしながらイメージしたものを作り上げたり、何かに見立てて楽しんだりと、子ども達の発想力や創造力を育んでくれます。
このようなイメージしたものを工夫を凝らしながら作り上げていくという経験は、新聞紙以外のものにも興味をもつキッカケとなります。
遊びを通して繰り返すことで、発想力や創造力を楽しく身につけていくことができるでしょう。
指先・手先~全身を使って遊ぶことを楽しむ
新聞遊びでは指先・手先を使ってビリビリ破ったり、つまんだりといった細かい動きを行う微細運動と、全身を使って立ったり歩いたりといった大きな動きの粗大運動の両方を組み合わせて行うことが可能です。
微細運動はその後のボタンをかける、靴を履く、お箸を持つといった身の回りのことを行う際に必要な動作へと繋がっていくため、幼少期から遊びの中で習得していけることが好ましいです。
また、子どもは全身をのびのびと動かして遊ぶことも大好きです。しゃがむ、寝転がる、バランスを取るといった全身を使った楽しみ方も取り入れながら新聞遊びを楽しみましょう。
五感を使って音や手触りを楽しむ
新聞遊びではグシャグシャ・ビリビリといった音や、破いたり丸めたりする時の感触、ほのかなインクの匂いといった五感を刺激しながら楽しんで遊ぶことができます。
乳幼児には、保育者が「ビリビリ~!」と言いながら手で破いていく様子を見せたり、ちぎった新聞紙を「ヒラヒラヒラ〜」と言いながら頭上から振らせたりすることで擬音語とその様子を一致させていくことができるようになります。
五感は外界からの刺激によって発達が促されるため、新聞遊びではたくさん新聞に触れることができるようにしてあげると良いでしょう。
新聞遊びを行う際の注意点3つ
新聞遊びではどのようなことに注意したら良いのでしょうか。
楽しく遊ぶためにも保育者は周囲の様子に目を配り、以下のことに気をつけて保育を行っていきましょう。
誤飲
乳幼児は何でも口に入れてしまうため、新聞紙を口に入れてしまうことが誤飲の原因となる恐れがあります。
新聞紙は唾液で溶けてしまうこともあるので、小さくちぎった新聞を扱う際には注意しましょう。
使い終わったらすぐに片付ける、子どもから目を離さないといった対策を考えておく必要があります。
転倒
新聞遊びを行う際には、破いた新聞紙や丸めた新聞紙、まだ使っていない新聞紙など、たくさんの新聞紙が床に広がることが予測されます。
歩いたり、小走りの状態で新聞紙を踏んでしまうとそのまま転倒してしまう恐れがあるため、保育者は使っていない新聞紙はまとめておくようにし、使わない分はすぐに片づけるようにしましょう。
新聞遊びを取り入れる際にはマットの上で行うようにすると安心ですね。
インク汚れ
新聞紙のインクは指先や手につきやすく、そのままその手で洋服や他のものを触ってしまうとインクが移ってしまいます。
新聞遊びが終わったら、石鹸で綺麗に手を洗うように促しましょう。
洋服へのインク移りが心配な場合には、予めスモッグを着せておくと安心です。
手軽に楽しく!おすすめの新聞遊び7選
子どもの発達に合わせて行えば、アイディア次第で無限に遊びの幅が広がる新聞遊び。
その中から7種類の新聞遊びをご紹介します。
①新聞紙ビリビリ
1歳児におすすめの新聞遊びは、新聞紙を破ったりちぎったりして音や形の変化を楽しむ「新聞紙ビリビリ」です。
新聞紙の上部についているギザギザから破いていくだけの単純なものですが、乳幼児にとっては指先を上手く使わないとなかなか難しいもの。
保育者はゆっくりと見本を見せたり、「ここに親指と人差し指を置いて〜」と説明しながら一緒にやってみると良いでしょう。
子どもが上手くできないときは、保育者が少し破ってから渡してあげるとスムーズです。
「ビリビリって言ってるね~!」「上手にできたね」等、一緒に楽しさを共有できる声掛けを行いましょう。
②ヒーローに変身
ヒーローごっこが楽しくなる幼児期には、新聞紙を使って「ヒーローに変身」する遊びがおすすめです。
新聞紙の中央に十字に切り込みを入れておくだけで準備はOK!ですが、余裕があれば中央にバイキンマンやおばけといったキャラクターの顔を描いておくと子ども達のやる気がアップします。
切り込みの大きさで破れやすさが変わってくるので、子どもの年齢に合わせて変えていくと良いでしょう。
「ア~ンパンチ!」等、子どもの動きに合わせて声を掛けてあげるようにします。
周囲に誰もいないことを確認してから、パンチやキックといった動きを行うようにすると良いですね。また、保育者は新聞紙を持つ時は新聞紙の上下や左右を持ち、両手を伸ばした状態にします。子どもが勢いよくパンチをし、顔に当たらないようにするためです。
③かぶと・紙鉄砲
小さい頃は新聞紙で作るかぶとや紙鉄砲で遊んだことがあるという保育者も多いのではないでしょうか。
「かぶと」は新聞紙で作ると、戦国武将がかぶっていたような立派な兜が出来上がります。子ども達の頭のサイズに合わせて両端をセロハンテープで止めると、ピッタリのサイズに調整することが可能です。
「紙鉄砲」は、勢いよく振り下ろすことで「パン!」と音が出るおもちゃです。こちらも新聞紙で作ることで幼児でも比較的簡単に音を出して遊ぶことができます。
コツは振り下ろす時に真っすぐ勢いよく振り下ろすことです。
④輪投げ・けんけんぱ
「輪投げ」と「ケンケンパ」は、どちらも新聞紙で輪っかを作って遊びます。
①新聞紙を広げた状態で下からクルクルと巻いていき、巻き終わりにガムテープで数か所止めます。
②丸めた新聞紙を同じ方向に上から下まで捻っていきます。
③新聞紙の上と下を合わせ、ガムテープで止めて輪っかを作ります。
「輪投げ」の土台はダンボールの上に、垂直になるようにラップの芯を固定します。トイレットペーパーの芯を縦に2つ繋げたものや牛乳パック等で代用しても良いでしょう。
配置を詰めすぎると入れにくくなるので、余裕を作りながら決めていくと良いですね。
【ケンケンパで遊ぶ場合】
【輪投げの作り方】と同じように新聞紙で輪っかを作りますが、子どもの足が引っかかってしまわないように新聞紙を繋げて少し大きめの輪っかにします。
年齢の低い子の場合には両足ジャンプ飛びだけ行うとして輪っかを縦4つに並べる。年齢が高くなるにつれ不定期に「ケン・ケン・ケン・パ・ケン・パ・パ」といった並べ方に変えていくと難易度が上がって飽きずに楽しめます。
輪っかに着地する足の右足・左足を変えてみるだけでも難易度は変わってきますので、年齢に合わせて工夫をしてみて下さいね。
⑤玉入れ
固定しておいたダンボールやかごに新聞紙で作ったボール(玉)をひたすら投げ入れていく遊びです。
新聞紙でボールを作る場合は、子どもの手のひらで握りやすいサイズにしても、大小サイズ違いを用意しても面白いですね。
保育者がダンボールを持つ場合は、上下左右にゆっくり移動させてみるのも楽しいですよ。
遊びのルールとして、「ダンボールには触らない」ことを約束しましょう。子ども達がダンボールに手をかけてしまうと、そのままダンボールをひっくり返してしまったり、引っ張り合いになってしまうことがあるからです。
また、保育者がダンボールを持つ場合には歩き回ることはしないようにします。子ども達はボールと保育者の動きに集中しているため、他の子どもとぶつかってしまったり、転倒する恐れが出てくるからです。
保育者は子どもの動きに注意しながら、無理のない範囲で楽しく遊ぶことができるように留意しましょう。
⑥新聞じゃんけん
用意するものは新聞紙のみで、じゃんけんや片足でバランスを取ることが上手にできるようになったら挑戦してみたい年長さん向けの遊びです。
二人一組になり、それぞれが広げた新聞紙の上に立ちます。あとはじゃんけんをしていくのですが、ルールとして「じゃんけん」に負けた方はその都度、新聞紙を半分に折って立つ範囲を狭めていきます。
足が新聞紙のない床についた方が負けになります。
じゃんけんに負ける度に新聞紙は半分の大きさになっていくため、最終的には片足でバランスを取ったり、つま先立ちで粘ったりしながらじゃんけんしていきます。
⑦ほうきでお片づけ
新聞紙でたくさん遊んだ後は、新聞紙で作った「ほうきでお片づけ」を楽しみながら終えるのがおすすめです。
半分に折った新聞紙を2枚重ね、下からクルクルと巻いていき、巻き終わりをガムテープで数か所止めます。
片方の端から縦に15㎝ほどの切込みを4〜5箇所に入れます。切込みの一部を引っ張るとクルクルと回りながら切込みが飛び出してきます。これでほうきの完成です。
掃除の前には「見て!こんなに新聞紙がいっぱい!これじゃあ給食が食べられないね。みんなで片付けしよう!」と声を掛け、ちぎった新聞紙や散らかった新聞紙を掃き集めましょう。
保育者はビニール袋を持って中央で待機し、部屋の四隅から中央に新聞紙を集めていくように子ども達を促します。
掃除の後には「こんなにピカピカになったよ!みんなで一緒にお掃除したからだね!」と掃除の前と後の部屋の様子を子ども達に知らせると共に、みんなでピカピカにすることができて嬉しい気持ちを表現すると良いですね。
まとめ
いらなくなった新聞紙を使って遊ぶ新聞紙遊び7種類と、新聞遊びのねらいと注意点についてご紹介しました。
新聞紙は身近な廃材の一つですが、その材質と大きさの扱いやすさから子どもの遊びに取り入れやすいというメリットがあります。
アイディア次第で遊びの幅はどんどん広がりますので、ねらいと注意点を念頭に置きつつ工夫を加え、子どもの発達に合わせて保育に取り入れてみてはいかがでしょうか。