1歳半になると、子どもは言葉を使い始め、簡単な単語で自分の気持ちや欲求を表現するようになります。この時期の言葉の発達は個人差が大きく、「ほかの子と比べて遅れているのでは?」と不安に感じる親御さんも多いのではないでしょうか。また、どのように言葉を促せばよいか悩む方も少なくありません。
この記事では、1歳半の言葉の発達の目安や、言葉をスムーズに引き出すためのポイントを詳しく解説します。
1歳半の言葉の発達目安と特徴
1歳半は、子どもが言葉を使い始め、コミュニケーション能力が育まれる大切な時期です。この頃には、言葉を理解し始めたり、自分の気持ちを簡単な単語で表現する姿が見られます。
以下では、1歳半で期待される言葉の発達や、語彙数や発音の目安、理解力と表現力のバランスについて詳しく解説します。
1歳半で期待される言葉の発達とは
1歳半の子どもは、周囲の言葉を真似し始め、自分の言葉で表現する力が育つ時期です。この時期に期待される主な発達には、以下の特徴があります。
単語を話し始める
1歳半になると、「ママ」「ワンワン」などの簡単な単語を話せるようになる子が多くなります。物の名前を覚え、それを使って「ボール」「リンゴ」などを指差しながら話そうとする姿も見られるようになります。
ジェスチャーと併用する
言葉だけではなく、指差しや手振りなどを組み合わせて自分の意思を伝える姿が見られます。例えば、飲み物が欲しいときにコップを指差しながら「ジュース」と言うなど、非言語と言語の両方を使う行動が多くなるのが特徴です。このような非言語コミュニケーションは、言葉の発達に向けた大切なステップです。
周囲の言葉を理解し始める
親の簡単な指示(例:「ボールを取ってきて」「靴を持ってきて」)に応じるなど、言葉を理解する能力も進みます。この時期は、話す言葉よりも理解する言葉の数が多いことが一般的です。
模倣行動が増える
親や周囲の大人の話し方や言葉を真似する姿が増えます。例えば、親が「ありがとう」と言うと、子どもも同じ言葉を繰り返したり、同じトーンで話すようになることがあります。模倣を通じて、言葉やコミュニケーションのスキルを自然に学ぶ機会が増えます。
これらの発達は個人差が大きいため、周囲の子どもと比べず、子どものペースを大切にしましょう。言葉の発達は焦らず、日々の成長を温かく見守ることが大切です。
一般的な語彙数と発音の目安
1歳半の子どもの語彙数や発音には目安がありますが、個人差が大きいことを理解しましょう。この時期には、10~20語程度の単語を話す子が多いとされています。ただし、話せる単語が少なくても、親の言葉を理解して行動している様子があれば心配はいりません。例えば、「靴を持ってきて」と言われて靴を探しに行くようであれば、理解力が順調に育っています。
子どもがよく話す言葉には特徴があります。家族の名前(「ママ」「パパ」)、動物の名前(「ワンワン」「にゃーにゃ」)、そして「ちょうだい」「ない」といった簡単な要求の言葉が挙げられます。これらは身近な環境から自然に学びやすいため、頻繁に使われます。
発音については、多くの子どもがまだ不明瞭で、一部の音が省略されることがあります。例えば、「りんご」が「んご」になるような発音です。「さ行」や「ら行」などの音は特に難しく、もう少し成長してから言えるようになるのが一般的です。
この時期、発音の正確さにこだわる必要はありません。子どもの言葉を正しい形で繰り返し聞かせることで、自然と発音が向上します。例えば、「んご」と言ったら「そうだね、りんごだね」と優しく返すだけでも十分です。焦らず見守ることも子どもの成長のサポートになります。
理解力と表現力の発達バランス
1歳半の子どもは、言葉を「理解する力」と「表現する力」の発達バランスが特徴的です。特にこの時期は、理解力が先行するのが一般的です。発語が少なくても、親や周囲の話をよく理解しています。例えば、「靴を持ってきて」と伝えると、正しく行動する姿が見られることもあります。
一方で、表現力は徐々に発達します。発語に必要な口や舌の動きの発達には時間がかかるため、理解力より遅れることが一般的です。また、ジェスチャーや表情で意思を伝える行動も表現力の一つと言えます。
さらに、理解力と表現力の発達は個人差が大きいのもこの時期の特徴です。ある子は理解力が優れている一方で、別の子は発語が早い場合もあります。このバランスが子どもごとに異なるのは自然なことなので、焦らず子どもの特性に応じたサポートを心がけましょう。
1歳半の言葉の発達は、日々のやり取りの中で、楽しくコミュニケーションをとることが発達を促す鍵となります。語彙数や発音の目安はあくまで参考にし、焦らず温かく見守る姿勢が大切です。
言葉の遅れが気になるときの確認ポイント
子どもの言葉の発達には個人差があるため、「周りの子と比べて遅いのでは?」と不安になることもあります。しかし、言葉の発達を正確に判断するためには、いくつかのポイントを観察することが重要です。
ここでは、発語の有無やジェスチャーの使用状況、他の子どもと比較する際に注意すべき点について解説します。
発語の有無と周囲への関心度
子どもの発語の有無は、言葉の発達を確認する重要なポイントです。ただし、発語の数だけに注目せず、周囲への関心や反応も観察することで、子どもの成長をより正確に理解できます。
発語の有無を確認する
1歳半から2歳頃には、「ママ」「ワンワン」などの単語を話し始める子が多いですが、発語が少なくても理解力が進んでいれば問題ない場合がほとんどです。親の言葉に対して動作で反応する様子も重要な成長のサインです。
周囲への関心を見る
発語が少なくても、視線を向ける、近づくなど、周囲の人や物に興味を示す場合、コミュニケーションの意欲がしっかり育っています。例えば、大人が指をさした方向を子どもが見たりする行動は、理解力や共感性の発達を示します。
名前を呼んだときの反応
名前を呼んだときに振り向いたり、笑顔を見せたりする反応があれば、言葉の理解が進んでいると考えられます。発語が遅れていても、このような反応があれば心配しすぎる必要はありません。
発語の遅れだけに注目せず、周囲への関心や反応を温かく見守ることが、子どもの発達を正しく理解するポイントです。
ジェスチャーや指差しの使用状況
言葉を話し始める前段階として、ジェスチャーや指差しなどの非言語コミュニケーションが発達するのはごく自然な流れです。これらの行動は、子どもが周囲と意思疎通を図ろうとする重要なステップであり、言葉の発達を支える基盤となります。
例えば、1歳頃から興味のあるものを指差しで示す行動が見られることが多いです。この「指差し」は、子どもが自分の気持ちや関心を周囲に伝えたいという意欲の現れであり、コミュニケーション能力の発達を示す大切なサインです。
また、バイバイの手振りや「もっとちょうだい」を表す仕草などの簡単なジェスチャーは、言葉を使わなくても気持ちを伝えるための手段です。これらの行動は、言葉を習得する準備段階として非常に重要な役割を果たしています。
さらに、親や兄弟のジェスチャーを真似る姿が見られる場合、子どもは観察と模倣を通じてコミュニケーションを学んでいると言えます。これも、言葉の発達に欠かせないプロセスの一つです。
もし、これらのジェスチャーや指差しが活発であれば、言葉の発達が少し遅れているように見えても、過度に心配する必要はありません。ただし、指差しやジェスチャーが全く見られない場合や、子どもが周囲にあまり関心を示さない場合は、専門家に相談することで安心感を得られることもあるでしょう。
温かく見守りながら、必要に応じて適切なサポートを検討するのも育児への不安を解消するという意味ではとても効果的です。
他児との比較で気をつけたい点
子どもの言葉の発達には大きな個人差があるため、他の子どもと比較する際には注意が必要です。同じ年齢でも、話し始める時期はそれぞれ異なり、性格や育った環境によって影響を受けます。
例えば、保育園で多くの子どもと触れ合う場合は発語が早いことが多く、家庭中心の環境では安心感の中でゆっくりと言葉が育つこともあります。他児と比べて「遅い」と感じても、焦りは禁物です。
無理に促すよりも、子ども自身のペースを尊重し、温かく見守ることが大切です。発語の有無やジェスチャー、周囲への関心などを総合的に観察し、少しずつ成長している姿を感じ取りましょう。
1歳半の言葉の発達を促すための関わり方
1歳半は、言葉の発達が急速に進む時期です。この時期の子どもとどのように関わるかで、言葉への興味や成長スピードが大きく変わります。日常生活の中での語りかけや絵本の読み聞かせ、歌やリズム遊びを取り入れることで、子どもが楽しく言葉を学べる環境を作りましょう。
以下では、言葉の発達を促すためのポイントについて解説します。
語りかけを工夫する方法
日々の語りかけは、子どもの言葉の発達を促すうえで非常に重要です。ただ話しかけるだけでなく、いくつかの工夫を加えることで、より効果的に言葉を引き出すことができます。
具体的で簡単な言葉を使う
子どもには、短くてわかりやすい言葉が伝わりやすいです。「これ、ボールだよ」「ワンワンがいるね」といったように、物の名前や状況をシンプルに伝えると効果的です。
子どもの興味に応じた会話
指差しやジェスチャーで示した物について話しかけることで、子どもの興味を引き出します。例えば、子どもが車を指差したら「赤い車だね。ブーブーって走るよ」と話すと、自然と言葉を覚えやすくなります。
オウム返しで応答する
子どもが発した言葉をそのまま繰り返すことで、自分の言葉が認められたと感じ、話す意欲が高まります。例えば、「ワンワン」と言われたら「そうだね、ワンワンだね」と返すのが効果的です。
感情を込めて話す
表情や声のトーンを豊かにすることで、子どもは話しかけに興味を持ちやすくなります。「楽しいね!」「美味しいね」といった言葉に感情を込めることで、言葉に感情を結びつけて覚えるきっかけになります。
これらの工夫を日常の語りかけに取り入れることで、子どもの言葉の発達を楽しくサポートできます。
絵本や読み聞かせの活用ポイント
絵本や読み聞かせは、語彙の増加や言葉のリズムを学ぶうえで非常に効果的です。1歳半の子どもに合った方法で取り入れることで、より楽しく言葉を育むことができます。
短いストーリーの絵本を選ぶ
1歳半の子どもには、短い文章やシンプルなイラストの絵本が最適です。物の名前や動作がわかりやすく描かれた絵本を選ぶと、興味を持ちやすくなります。
親子で対話しながら読む
読み聞かせの途中で「これ、何かな?」「ねこさんは何て鳴く?」と問いかけると、子どもの興味を引き出せます。この対話が、楽しいコミュニケーションにつながります。
子どもが好きな本を繰り返し読む
お気に入りの絵本を繰り返し読むことで、子どもは安心感を得ながら言葉やストーリーを自然に覚えます。同じ本を何度も読むことは、学びの基本です。
読んだ内容を生活に取り入れる
絵本に出てきた動物や食べ物を実際に見つけたとき、「絵本に出てきたリンゴだね!」と声をかけると、子どもの学びが広がります。
絵本を楽しい体験にすることで、子どもは言葉への興味を深め、学ぶ意欲を高めます。親子で楽しみながら取り組みましょう。
歌やリズム遊びの取り入れ方
歌やリズム遊びは、音や言葉のリズムを学ぶ絶好の機会です。遊び感覚で楽しめるため、子どもが無理なく言葉に触れられる環境を作ることができます。
簡単な手遊び歌を活用
「いないいないばあ」や「むすんでひらいて」などの動作を伴う手遊び歌は、子どもの興味を引きつけ、言葉のリズムを覚えるのに役立ちます。
親子で一緒に歌う
親も一緒に歌うことで、子どもは歌や言葉に親しみを持ちます。親が楽しそうにしている姿は、子どもに安心感を与え、興味を引き出します。
リズム遊びで言葉を引き出す
タンバリンや太鼓などの楽器を使い、「トントン、ドンドン」といった音を真似る遊びを通じて、発語や音声模倣を自然に促すことができます。
季節の歌を取り入れる
季節に合わせた歌を歌うことで、歌を通じて自然や行事への関心を引き出せます。例えば、春には「チューリップ」、冬には「たき火」など、季節感のある歌が効果的です。
歌やリズム遊びを日常に取り入れることで、子どもが楽しみながら言葉を学べる環境を作りをしてみるのも良いでしょう。
このように語りかけ、絵本の読み聞かせ、歌やリズム遊びのいずれも、子どもにとって言葉を学ぶ大切なステップです。親子で楽しく取り組むことが、言葉の発達を促す最大のポイントとなります。日常生活の中で無理なくこれらを取り入れ、子どもの成長を温かく見守りましょう。
まとめ
言葉の発達は、子どもの成長を見守る上で欠かせない重要な要素です。発達を促すためには、家庭での親子の関わりや、集団生活での経験、そして子ども一人ひとりの特性を理解することが大切です。
言葉の発達は一朝一夕には進みませんが、親や周囲の大人が温かく見守り、適切なサポートを続けることで、子どもはしっかり成長していきます。日々の関わりを楽しみながら、子どもの言葉の世界を広げていきましょう。