SNSで話題を集めている「格付けミーム」をご存じでしょうか。キャラクターや物事をランク分けするシンプルな形式ながら、ユーモアや風刺を交えた投稿が多く、若者を中心に爆発的に広がっています。
その元ネタは、1999年中国・深セン生まれのクリエイター・星有野による地下鉄を舞台にしたアニメ作品に登場する“格付け”シーン。
独特のテンポと表現がミーム化のきっかけとなりました。この記事では、格付けミームの成り立ちや広まり方、そして代表的な活用例までをまとめて紹介します。
目次
星有野 元ネタのアニメ動画
格付けミームの日本での定着には、星有野氏が制作したアニメ動画が大きな役割を果たしています。彼が手掛けた短編は独特のテンポ感とシンプルな構図が特徴で、比較や対立を表す場面がSNS上でテンプレートとして流用されやすいものでした。
特にbilibili(アニメ・ゲーム・漫画などのサブカルチャーに強い中国の動画共有プラットフォーム)やYouTubeといった動画プラットフォームを通じて拡散されたことで、日本のユーザーにも認知され、格付け文化と結び付けられるようになりました。
ここではその元ネタとされる作品の概要を整理します。
2020年8月にbilibiliへ投稿された地下鉄アニメ
元ネタの一つとされるのは、2020年8月に中国の動画サイト「bilibili」に投稿された星有野氏のアニメ作品です。舞台は地下鉄のような空間で、動物やキャラクターが独特のリズムで動き回る内容でした。
単純化された線画と繰り返しの動きが特徴的で、見る人に強烈な印象を与えると同時に、編集や引用がしやすいフォーマットでもありました。当時から一部のアニメファンやネットユーザーの間で人気を集めましたが、後に格付けミームとして再利用されることで再評価されるきっかけとなりました。
“ライオン&ドーベルマン vs ニワトリ”の構図がテンプレ化
このアニメで特に注目されたのが、「ライオンとドーベルマンが並んで登場し、対面にニワトリが立つ」という構図です。一見アンバランスで意外性のある対比が、格付けやランク付けの表現と結びつきやすく、SNSでは「強そう vs 弱そう」といったシンプルな構図の例えとして頻繁に使われるようになりました。
この構図は後に静止画キャプチャやGIFに切り出され、ユーザーが好きなキャラクターや要素を当てはめて楽しむ“テンプレート”として広がります。ユーモアや皮肉を交えて比較するのに最適な素材であったため、多くの派生ミームを生むきっかけとなりました。
YouTube再投稿で二次創作素材として認知
この作品はその後YouTubeにも再投稿され、海外ユーザーを含む幅広い層に視聴されるようになります。YouTubeの拡散力により、星有野氏のオリジナル作品は単なるアニメ動画から、ミーム素材として国際的に認知される存在へと変化しました。
特に「格付け」形式の動画やTier表にこのアニメの構図を組み合わせる二次創作が増え、結果として「格付けミーム」の代表的なビジュアルとして定着していきます。オリジナルの魅力とSNSユーザーの創作力が重なり、文化的に再解釈されながら拡散した好例といえるでしょう。
「格付けミーム」とは?
「格付けミーム」とは、対象をランク付けや序列化して並べることで視覚的にわかりやすく表現するSNS発のコンテンツです。英語圏で流行した「Tier List」形式がベースとなっており、日本では「格付け」という呼称で親しまれています。
画像や動画の中でキャラクターや商品、地域や出来事などを比較し、ユーモラスに順位づけする手法が多く見られます。SNSユーザーの間では共感やツッコミを誘う定番の投稿形式となり、2024年末からは日本語圏でも「格付けミーム」という呼び名で定着し始めました。
呼称の意味:対象の”格”を並べて見せるSNSミーム
「格付け」という呼び方は、対象に優劣や序列をつけるイメージから来ています。海外の「Tier(ランク)表」文化を日本語に置き換えることで、より直感的に理解されやすくなりました。
ミームとしては必ずしも本気の評価ではなく、遊び心を持って「ここはSランク」「これはCランク」と分けるのが特徴です。食べ物やゲームキャラ、アニメ作品などを題材にすることが多く、ユーモラスなオチや意外な位置づけが話題になります。SNS上では画像生成ツールやテンプレートを利用し、誰でも簡単に「格付け」表を作れる環境が整っているため、投稿が増えていきました。
この呼称は日本語特有のニュアンスを持ち、ランキング文化と親和性が高いことも広がりの背景といえるでしょう。
主な使われ方:スポーツ・地域・作品などの比較に当てはめ
格付けミームは多様な題材で使われます。スポーツでは「歴代選手の格付け」や「チーム強さランク」として投稿され、地域ネタでは「ご当地グルメの格付け」「観光地のTier表」といった形が人気です。
作品関連ではアニメや漫画のキャラクターを並べ、「推しキャラの強さ格付け」や「好きな回の格付け」などが盛んに共有されています。必ずしも真剣な比較ではなく、半ばジョークとして盛り上がる点も魅力です。
視覚的に一覧できるため、SNSでの拡散性が高く、コメント欄で「この位置はおかしい」「いや、わかる!」と議論が生まれやすいのも特徴といえるでしょう。ユーザー参加型で盛り上がるフォーマットとして、格付けミームはさまざまな場面に応用されています。
日本での呼び名が広まった時期(2024年12月頃〜)
日本で「格付けミーム」という呼称が広がり始めたのは、2024年12月頃とされています。もともと「Tier表」として認知されていたものの、SNSユーザーの間で「格付け」という言葉の方がキャッチーでわかりやすいと感じられ、自然に使われるようになりました。
この時期にはX(旧Twitter)やTikTokで「格付け○○」という投稿が急増し、ハッシュタグとしても拡散されます。年末年始のランキング文化やバラエティ番組「芸能人格付けチェック」との語感の親和性も後押しし、一気に定着したといえるでしょう。
2025年に入るとニュース記事やまとめサイトでも「格付けミーム」という表記が使われるようになり、SNS発のスラングから一般的なネット用語へと拡大しました。
国内で拡散されるまでの流れ
格付けミームが日本国内で大きく広がるまでには、いくつかの転機がありました。初期はゲーム実況やネタ動画を中心に盛り上がり、特定のジャンルでファン層を獲得。
その後、地域や日常ネタに派生することで一般層にも浸透し、SNSでの汎用的なフォーマットとして定着しました。特にX(旧Twitter)やYouTube Shortsの拡散力が後押しし、瞬く間に幅広いジャンルへと展開。ここでは国内での代表的な拡散経緯を整理します。
2021年「APEX格付け」動画で大規模バズ(770万回再生)
国内で格付けミームが最初に注目を集めたのは、2021年にYouTubeへ投稿された「APEX格付け」動画でした。人気FPSゲーム『APEX LEGENDS』のキャラクターを格付け風に並べた編集が話題となり、再生数は770万回を突破。
ゲーム実況文化とミーム表現が結びついたことで、若年層を中心に爆発的な人気を得ました。この成功がきっかけとなり、他ジャンルでも「キャラの強さランキング」や「推しキャラ格付け」といった派生動画が増加。格付けミームが「誰でもわかりやすく楽しめるフォーマット」として認知される最初の転機となりました。
2024年12月頃からXで「神奈川編」など派生が急速拡散
2024年末になると、格付けミームはXを舞台に再び脚光を浴びます。「神奈川編」「都道府県格付け」など、身近な題材をテーマにした投稿が次々とバズり、コメント欄で議論や共感が巻き起こりました。
特定の地域や文化を題材にしたことで共通の話題として盛り上がりやすく、リツイートによって急速に拡散。加えて、画像やGIFとして一目で理解できる形式で投稿されることが多く、SNSにおける消費スピードに適していたのも人気を後押ししました。
この時期から「格付けミーム」という日本語呼称も広く定着し、ネット文化の一部として定番化していきます。
典型パターン:字幕で立場を置換し”格の差”を演出
国内で流行した格付けミームの多くは、元ネタの「ライオン&ドーベルマン vs ニワトリ」の構図に字幕を当てはめて楽しむ形式です。例えば「大企業 vs スタートアップ」「陽キャ vs 陰キャ」といったわかりやすい対比が、キャプションや字幕で表現されます。
単純な比較構造が共感や笑いを生みやすく、幅広いユーザーに受け入れられました。また、字幕を自由に置換できる編集のしやすさも拡散の一因です。ユーザーがそれぞれの視点で「格の差」を可視化できるため、二次創作的に楽しむ文化が形成され、結果として格付けミームは多様なジャンルに応用されるフォーマットとして定着しました。
まとめ
格付けミームは、シンプルな構図とわかりやすい「格の差」を表現できる点から、ゲーム実況や地域ネタなど幅広い題材に応用され、国内外で親しまれるネット文化となりました。元ネタとなった星有野氏のアニメ動画がテンプレートとして受け入れられ、2021年の「APEX格付け」バズや2024年末のXでの派生ブームを経て、多くのユーザーに浸透した流れは象徴的です。
字幕や表現を自由に差し替えられる柔軟さが拡散性を高め、笑いや共感を生み出すフォーマットとして定着しました。今後も新たな題材や社会的テーマに応用されながら、SNSミームの定番スタイルとして進化を続けていくでしょう。