介護が必要になると認知症の可能性がある場合があります。認知症は、認知機能の低下によって日常生活に支障をきたす病気であり、介護が必要になることも少なくありません。

介護が必要な場合、介護保険制度を利用するためには、介護認定が必要です。しかし、介護認定の手続きや介護サービスの種類には、初めての人にとってはわかりにくい点が多いです。

この記事では、介護認定の手続きのポイントから介護サービスの活用まで、認知症と介護認定の関係を踏まえて、わかりやすく解説します。

認知症の介護度と介護サービス

認知症の介護度は、介護保険制度において「要介護度」として評価されます。介護度は、日常生活での身体的・精神的な機能の低下度合いに応じて1から5までの段階で評価され、介護度が高いほど介護が必要な状態となります。

認知症による要介護度は、認知症の進行度合いや症状によって異なります。例えば、認知症の初期段階では、自己管理能力が低下していることがあるため、訪問介護や通所介護などのサービスを利用することで、日常生活の支援を受けることができます。

一方、認知症が進行した場合は、居宅介護支援事業所や特定施設入居者生活介護など、より高度な介護サービスが必要となる場合があります。そのため、認知症の進行度合いに合わせて適切な介護サービスを利用することが重要です。

認知症の介護度とは

認知症の介護度とは、介護保険制度において、認知症の症状や日常生活の自立度、介護を必要とする時間などを総合的に評価し、その程度に応じて支給される介護サービスの種類と限度額を決定するために用いられる指標です。

介護度は、認知症の状態に応じて6段階に分かれており、介護度が高いほど、必要な介護サービスの種類や量が増えます。

介護度の評価は、医師やケアマネージャーなどの専門職によって行われます。また、介護度に応じた介護サービスの選択や利用については、介護保険制度に基づいています。

認知症の介護度は、認知症の進行度合いや症状の程度を正確に把握し、必要な介護サービスを適切に利用するために非常に重要な指標です。

認知症の介護に必要なサービス

認知症の介護には、状況に合わせたさまざまなサービスがあります。

  • 訪問介護
  • 居宅介護支援事業所
  • デイサービス
  • 介護施設
  • 特別養護老人ホーム
  • グループホーム
  • 介護老人保健施設

例えば、自宅での介護を行う場合には、訪問介護や居宅介護支援事業所、デイサービスなどが適しているでしょう。一方、自宅での介護が難しい場合は、特別養護老人ホームやグループホーム、介護老人保健施設など、介護施設に入居することも一つの選択肢です。

また、介護施設には個室や2人部屋など様々なタイプがあり、入居者のニーズに合わせて選択することができます。認知症の進行に合わせて、適切な介護サービスを選択することが大切です。

介護保険制度における認知症の特例措置

介護保険制度において、認知症に特化した特例措置があります。

通所介護サービス:定員の一部を認知症の方に優先的に割り当てる、利用日数の上限を緩和する、施設内に認知症対応の専門スタッフを配置するなどの対応がある。

訪問介護サービス:訪問介護員の中に認知症ケアに特化したスタッフを配置する、訪問時間を長めにするなどの対応がある。

施設入居:特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、認知症の方を受け入れる施設があり、認知症ケアに特化したサービスを提供している。また、住宅型有料老人ホームでは、認知症ケアを専門とするユニットや、専門のスタッフを配置した施設がある。

その他:デイサービスやショートステイなどの利用も可能であるが、一定の制限がある場合がある。
これらの特例措置により、認知症の方やその家族が介護保険制度をより活用しやすくなっています。しかし、その対象や条件には限定があり、全ての認知症の方が対象になるわけではありません。

さらに各自治体によっても内容が異なるため、お住まいの自治体や利用するサービスについて、事前に相談または確認しておくようにしましょう。

認知症の介護に必要な準備と注意点

認知症の介護に必要な準備としては、専門家の相談やケアプランの作成があります。また、介護保険の申請や施設の選定も大切です。

介護する人が安心して過ごせるよう、家の改修や車椅子の用意なども必要になるでしょう。以下では、介護環境の整備とケアプランの作成、介護中の負担軽減について詳しく解説します。

介護環境の整備

介護環境の整備は、認知症の高齢者が安全かつ快適に生活できるように、住環境の改善や介護用具の設置、認知症に適した生活スペースの確保などを行うことが必要です。

例えば、住環境の改善として、段差や滑りやすい床などの大きな怪我につながりやすい原因を除去し、安全な空間を作るイメージです。また、介護用具として、歩行器やつり架け式ベッド、車いすなどを準備することで、介護する方や介護される方の負担を軽減することができます。

さらに、認知症に適した生活スペースとして、落ち着いた色合いの壁紙や床材、手すりの設置やシンプルな家具の配置などが挙げられます。これらの環境整備は、介護者の負担を減らしつつ、高齢者が快適に生活できる環境を整えることができます。

ケアプランの作成と見直し

認知症の介護では、ケアプランの作成と見直しが重要です。ケアプランは、介護を受ける人の状態に応じて、必要な介護内容や方法をまとめたものです。

まず初めに、専門家に相談し、介護の必要性やレベル、介護目標などを明確にします。また、介護計画書を作成し、介護スタッフや家族に共有しましょう。ケアプランは定期的に見直すことで、介護の状況や病状、介護者の状況などを把握し、必要に応じて改善を加えることができます。

定期的な見直しで介護の質を向上させ、介護者や介護を受ける人の負担を減らすことができます。

介護中のストレスや負担の軽減

介護は、介護者にとって大きなストレスや負担をもたらすことがあります。このため、ストレスや負担を軽減することが非常に重要です。

例えば、日々の生活リズムを整え、十分な休息をとること、また、運動をすることが大切です。さらに、介護者のストレスを軽減するために、セルフケアやストレス解消法を取り入れると効果的でしょう。

認知症の介護における支援制度

認知症の介護においては、介護者が利用できる支援制度が複数あります。

例えば、介護休業制度や介護離職防止支援金などがあります。これらの支援制度は、介護者の負担を軽減し、介護に必要な費用や時間の捻出を支援します。

ただし、制度によっては手続きや条件が複雑であるため、事前に情報収集や相談を行うことが重要です。

ここでは、介護保険における主な支援制度を3つ紹介します。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、介護や福祉に関する情報提供や相談、地域の高齢者や障がい者などを対象とした支援サービスの提供などを行う施設です。

とくに以下のような特徴があります。

  • 認知症の早期発見や家族への相談
  • ケアマネジメント
  • 訪問介護やデイサービス
  • グループホームなどの施設の紹介

また、介護予防の取り組みや地域住民の健康づくりにも力を入れており、さまざまなイベントや講座も開催されており、利用料金も基本的に無料です。

地域によっては、認知症の方や家族に対して、個別に支援を行う「認知症対応型地域包括支援センター」が設置されていることもあるため、積極的に活用しましょう。

ケアマネジャー

ケアマネジャーからサポートを受けられるのも大きなメリットです。とくに以下のようなサポートを受けられます。

  • 介護保険サービスを受けるために必要な手続き
  • 介護サービスの提供計画を作成
  • 介護保険制度の運用についてのアドバイス
  • 介護保険給付に関する手続きのサポート

ケアマネジャーは、介護現場で必要とされる高度な専門性を持ち、利用者やその家族と密に連携しながら、より良い介護サービスを提供することが求められています。

そのため、介護サービスの利用方法や各種手続きなどについては、積極的にサポートしてもらいましょう。

介護休業制度

介護休業制度とは、労働者が家族を介護するために、一定期間労働を休むことができる制度です。この休業制度を利用することで以下のようなメリットがあります。

  • 市区町村、地域包括支援センター、ケアマネジャーへの相談
  • 介護サービスの手配
  • 家族で介護の分担を決定
  • 民間事業者やボランティア、地域サービスなど利用できるサービスを探す

また、申出を行うための条件は以下のとおりです。

対象となる労働者 対象家族を介護する男女の労働者(日々雇用を除く)
対象となる家族 配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
利用期間/回数 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業可能

参考:介護休業制度|厚生労働省

また、勤めている企業によっては介護休業中の賃金が支払われない場合がありますが、介護休業給付金制度があるため、あらかじめ申請しておくことで経済面での不安をカバーできるでしょう。

なお、介護休業給付金制度への疑問等については、お近くのハローワークへ問い合わせるようにしてください。

まとめ

介護保険制度において、認知症の症状がある場合には、認知症の診断を受け、介護認定を受けることが重要です。介護度が高いほど、必要な介護サービスが充実します。

また、介護サービスは、介護保険サービスや市町村が提供するサービス、民間の介護サービスなどさまざまです。介護サービスを利用する際には、事前にケアプランを作成し、サービス内容や費用を確認するようにしましょう。

また、地域包括支援センターやケアマネジャー、介護休業制度などさまざまな制度が用意されているため、有効的に活用して少しでも介護による負担を軽減できるように準備してみてください。

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