「認知症の方に対するレクリエーションの内容や効果、注意点はどのようなものなのか?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
認知症の高齢者にとって、レクリエーションは非常に重要で、様々な良い影響をもたらす活動です。
本記事では、「認知症の方向けのレクリエーション」について、具体的な効果や留意点、おすすめの方法などを詳しく解説しています。
もし認知症について興味をお持ちであれば、ぜひこの機会にレクリエーションに関する知識を深めてみましょう。
高齢者レクリエーション認知症の目的
高齢者に対するレクリエーションの目的は、大まかに言えば以下の3つが挙げられます。
- 脳機能の活性化や五感の刺激による認知機能の維持・向上
- 運動機能の向上や体の健康維持
- コミュニケーションと社会的なつながりの促進による心理的な充実感
認知症の方においては、これらの目的に加えて、特に3が重要とされます。
認知症の方向けのレクリエーションは、主に「居場所を提供する」「幸せな気分を与える」「楽しいと感じさせる」といった精神的な効果を最優先に考えて行われます。
ただし、この目的を達成するためには、あまり1と2の目的に過度な重点を置かない方が良い場合もあります。
認知症の方は、機能回復や達成感を求めるレクリエーションに取り組むことで強いストレスや不安を感じることがあります。その結果、レクリエーションを楽しむことが難しくなり、心理的な効果も得られにくくなります。
そのため、認知症の方にとっては、「楽しい」「気持ちいい」「嬉しい」といった感情を引き出せるプログラムや活動が重要です。各個人が安心して楽しめる居場所を提供し、それぞれの方が心地よさや幸福感を感じることができる環境づくりを心掛けることが望ましいのです。
高齢者レクリエーション認知症の特徴
認知症を抱える高齢者向けのレクリエーションには、以下のような特徴があります。
【高齢者レクリエーション認知症の特徴】
過去の経験や特技を生かせる
認知症の方にとって、自身の経験や得意なことを活かしたレクリエーションは理想的です。そのような活動によって、自信を取り戻すことができます。
また、レクリエーションを通じて昔の思い出を蘇らせたり、自分の特技を再確認したりすることもできます。自分の経験や能力を肯定する活動は、認知症の方にとって非常に重要な要素です。
一方、過去に経験しなかった内容や複雑な活動は、認知症の方には適していない場合があります。したがって、レクリエーションの選択には注意が必要です。
楽しめる興味に合わせる
認知症の方は、刺激に敏感で脳の疲労が早く現れる傾向があります。そのため、認知症の方にとって負担のかからないレクリエーションを考えることが重要です。
強制的に興味のない活動を行うのではなく、個々の興味に合わせた楽しい内容にすることが大切です。
認知症の方にとって、興味のないことや苦手なことを無理に行うのは過度なストレスになります。したがって、ご本人が嫌がっている場合は、内容を変更する配慮が必要です。
短時間で負担のないように
興味を持って楽しめる活動でも、長時間続けると脳が疲れてしまうことがあります。特に認知症の方の脳は疲労しやすいため、適度な休憩を取ることが重要です。
ただし、集中している時に無理に休憩を入れるのは逆効果と言えます。それはご本人にとって大きなストレスとなる可能性があります。
したがって、休憩をとるタイミングは、ご本人が自由に選べるような柔軟なスケジュールにすることが望ましいです。ご本人が休憩を必要と感じた時に、自由に休むことができる環境を提供することが重要です。
適切な難易度に設定する
認知症の方のレクリエーションにおいて、適切な難易度設定は非常に重要です。ご本人が自信を持てるような適度な難易度を選ぶことが必要です。
あまりにも簡単すぎる内容では、ご本人が「子供扱いされている」と感じる場合や、自尊心を傷つけてしまうことがあります。特に認知症の方は、能力を過小評価されることへの過去の経験から、それに敏感になっていることもあります。そのため、適切な難易度設定が重要と言えます。
一方で、難易度を高くしすぎると、できないことによって自信を失う可能性があります。達成感や成功体験が得られないことで、ご本人の意欲や参加意欲が低下することも考えられます。したがって、難易度を適切に調整することが必要です。
周りとのコミュニケーションを重視する
レクリエーションを通じて、他の人とのコミュニケーションの機会を増やすことは非常に重要です。
高齢者が体を動かす機会が減ると、外出することが難しくなり、他人との交流が減ってしまいます。このようなコミュニケーションの不足は、認知症の症状の進行を促す要因とも考えられています。
レクリエーションを通じて他の人とコミュニケーションを取ることで、共有の楽しみや活気に満ちた雰囲気を共有することができます。これにより、心の状態も前向きになりやすくなります。
また、コミュニケーションは脳のさまざまな機能を使用するため、脳の活性化にもつながると言われています。レクリエーションを通じて他の人との交流を楽しむことは、認知機能の維持や向上にも役立つのです。
写真や動画に記録する
認知症の方にとって、記憶障害による思い出や達成感の喪失は非常につらい経験です。そのため、レクリエーションの内容は、少しでもこのつらさを和らげることが重要です。
成果や進行の記録を残せるようなレクリエーションが適切です。たとえば、素敵な作品を制作したり、活動の様子を写真や動画で記録したりすることで、後から振り返ることができます。
これらの成果や記録は、ご本人の人生の証であり、他の人と共有できる貴重な思い出となります。特に認知症の方にとっては、これらの記録が大切な存在となります。
高齢者レクリエーション認知症の種類
介護現場でよく用いられる一般的なレクリエーションには、主に以下の3つのタイプがあります。
【高齢者レクリエーション認知症の種類】
集団レクリエーション
集団レクリエーションは、多人数で参加する形式のレクリエーションです。グループ全体でゲームや体操を楽しんだり、一緒に歌を歌ったりする活動です。
この形式のレクリエーションでは、他の人とのコミュニケーションを通じて楽しみます。他の人との交流や関わりを通じて、新たな生きがいや目標を見つけることもあります。
個別レクリエーション
個別レクリエーション(一人遊び)は、個人や少人数で楽しむ形式のレクリエーションです。個々の好みや興味に合わせて、ゲームや囲碁・将棋、手芸などを行います。
この形式のレクリエーションは、集団での活動が難しい方や他の人とのコミュニケーションが苦手な方でも楽しむことができます。また、認知症の進行によって集団レクリエーションに参加することが難しくなった場合にも、一人で遊ぶことで充実感や喜びを感じることができます。
基礎生活レクリエーション
基礎生活レクリエーションは、食事や入浴などの日常生活の活動を通じて、心地よさや楽しさを見つけ出すレクリエーションです。
この形式のレクリエーションでは、食事の際に好きな音楽を流したり、居室に絵画や花を飾ったりといった工夫が行われます。基礎生活レクリエーションは、個々の生活の質(QOL)を向上させるために効果的です。
日々の暮らしの中で実施できるため、特別なレクリエーションの時間を設ける必要がありません。例えば、レクリエーションに興味を持たない方や、認知症の進行により一人での遊びが難しい方にも適しています。
認知症の方向けのレクリエーション|道具なしでできるゲーム
ここでは認知症の方向けのレクリエーションの中でも道具なしでできるゲームを3つご紹介していきます。
【道具なしでできるゲーム】
体操ゲーム
参加者全員で楽しみながら体操を行うレクリエーションでは、身体を活動させることができます。
立ち上がりの強化や、腰痛や肩こりの予防・改善に効果的な体操など、高齢者にとって有益な体操がたくさんあります。
また、音楽を取り入れながらリズムに合わせて行う体操もありますので、バラエティに富んでいると言えるでしょう。
イントロクイズゲーム
イントロクイズは、曲の冒頭部分を流してその曲のタイトルを当てるクイズで、最も早く正解した人が勝者となります。
イントロを聴いた後、曲名を思い出すためには集中力が必要とされますので、注意力や集中力の向上に役立つと言えます。
また、高齢者の方でも知っている曲を思い出しながら答えを考えることになるため、脳の活性化にも寄与するでしょう。
口を使ったじゃんけんゲーム
口を使ったじゃんけんゲームは、脳のトレーニング効果だけでなく、誤嚥(ごえん)の予防にも役立ちます。
このゲームでは、グー・チョキ・パーの手の形を顔で表現しますが、グーは「口をすぼめる」、チョキは「舌を出す」、パーは「口を大きく開ける」といった動作を行います。
これらの動作は、通常の嚥下(えんげ)体操とも共通しており、口や喉の筋肉を活性化させる効果があります。そのため、このゲームは誤嚥の予防にも一石二鳥と言えるでしょう。
認知症の方向けのレクリエーション|集団でできるゲーム
ここでは認知症の方向けのレクリエーションの中でも集団でできるゲームを3つご紹介していきます。
【集団でできるゲーム】
糸電話伝言ゲーム
糸電話伝言ゲームは、糸電話を使った楽しい伝言ゲームで、全ての参加者に正確に伝わった言葉が最終的な目標です。
ゲームの進め方は、参加者が糸電話で繋がった状態で、それぞれの位置に配置します。参加者は糸電話が張られる範囲内にいる必要があります。
最初の人が伝言を始めて、糸電話を通じて順々に伝えていきます。そして最後の人にまで、正確に伝わるように参加者全員が協力します。
このゲームは、参加者全員で協力し合いながら進められるため、楽しみながら盛り上がることができます。
ボウリング
ボウリングは通常、一人で楽しむ娯楽として知られていますが、工夫次第で集団での楽しみ方も可能です。
例えば、通常のボウリングよりも多くのピンを用意し、チーム全員が1回ずつボールを転がしてスコアを競う方法があります。
参加者全員が一丸となって倒したピンの数を競い、最も多くのピンを倒したチームが勝利となります。
ボウリングはその知名度も高く、参加者全員で楽しみながら盛り上がることができる活動です。
連想ゲーム
連想ゲームを進行する際には、最初に司会者がお題を提示し、参加者はそのお題に関連する言葉を紙に書いていきます。(例えば、お題が「犬」ならば、「忠実」「愛らしい」など)
一定の時間が経ったら、各チームが順番に発表し、それぞれの答えを確認します。
正解した回数をスコアとしたり、他のチームと同じ答えがあれば1点、独自の答えだった場合は3点など、点数の計算方法は様々で、楽しみ方も多彩です。
認知症の方向けのレクリエーション|盛り上がる面白いゲーム
ここでは認知症の方向けのレクリエーションの中でも盛り上がる面白いゲームを3つご紹介していきます。
【盛り上がる面白いゲーム】
ピンポンゴルフゲーム
ピンポンゴルフゲームは、上記のイラストに示されているように、点数が書かれたカップなどを横にして配置し、ピンポンボールを転がして的に入れていくゲームです。
一定の回数を投げ終わった後に、得点を計算し、最も高得点の人が勝者となります。
このゲームは座ったままでも楽しむことができ、競争要素も取り入れられているため、参加者たちの盛り上がりを引き出すレクリエーションと言えます。
風船バレー
風船バレーは、風船を使ったバレーボールのようなゲームであり、安全性が高く適度な運動が楽しめます。
単にバレーボールをプレーするだけでなく、風船に書かれた文字を当てるなど、様々な楽しみ方があります。このような応用方法を上手に活用することで、脳トレの一環としても効果的です。
また、車いすの方でも手軽に参加できるレクリエーションとして、多くの介護施設で採用されています。
玉入れゲーム
玉入れゲームは、運動会でおなじみの玉入れをイメージすると分かりやすいでしょう。
参加者が輪になって座り、職員が中央で逆さに持った傘を開いて立ち、参加者が玉を傘に入れて点数を競います。
傘の大きさを変えたり、レベルを調整することでさまざまなバリエーションを楽しむことができます。これにより、盛り上がりのあるレクリエーションとなるでしょう。
認知症の方向けのレクリエーション|頭を使うゲーム
ここでは認知症の方向けのレクリエーションの中でも頭を使うゲームを3つご紹介していきます。
【頭を使うゲーム】
お手玉体操
お手玉を使った体操には、さまざまな種類がありますが、実際の現場では簡単な体操が主流になりがちです。
しかし、難しい動作であっても、少しずつ挑戦していくことが体操の本旨であり、成功や失敗にこだわらずに体を動かすことがレクリエーションの大切な要素です。
お手玉を使った体操は、体を動かすことが苦手な方でも挑戦することで成果を得られる可能性があります。ですから、どんなに難しく感じても、ぜひ挑戦してみてください。
数探しゲーム
数探しゲームは、ランダムに数字を書きながら「1」の個数や「2」の個数などを探していく楽しいゲームです。
書き終わった後、全員に数字を見せて、最も多く出現した数字を当てることで勝者を決めます。
多くの人が最も大きな数字を回答する傾向にあるため、脳のトレーニングにもなるでしょう。
また、応用として最も少ない個数の数字を当てるバリエーションも試すことができます。参加者のレベルが上がってきたら挑戦してみましょう。
文字シャッフルゲーム
文字シャッフルゲームは、まず文字をランダムに並べて表示します。
参加者はそれらの文字を組み合わせて正解となるひらがなの単語を作り出し、ホワイトボードに答えを書きます。
このゲームでは複数の正解がある場合もあり、より難しくなるように工夫することで脳トレにもなります。
問題が難しい場合、参加者が苦労しているときにはヒントを提供することが効果的です。事前にヒント材料を用意しておくこともおすすめです。
レクリエーションを行う際の注意点
ここでは高齢者向けのレクリエーションを行う際の注意点を3つご紹介していきます。
【レクリエーションを行う際の注意点】
少ない人数で行う
少ない人数で行うレクリエーションは、個別のニーズや関心に合わせてよりパーソナライズされた体験を提供することができます。
参加者の個々の特性や能力を重視しながら、より密接な関わりや対話が可能です。これにより、参加者は自身の意見や感情を表現しやすくなり、より深い満足感や結びつきを感じることができます。
また、少人数のグループではコミュニケーションが活発になり、参加者同士の交流や協力が促進されることも特徴です。
個々のニーズや能力を考慮しながら、少人数でのレクリエーションを通じてより密接なつながりや充実感を実現することができます。
15分単位でストレスを軽減する
どれだけ素晴らしいレクリエーション内容であっても、長時間続けることは避けるべきです。長時間続けると、集中力が切れたり、苦痛やストレスを感じる可能性があります。
特に認知症の方は、心理的な疲労やストレスによって心の安定が乱れることがあるため、無理に続けることは避けるべきです。
疲れている様子やイライラが見られた場合は、レクリエーションの内容を変更したり、休憩を取るなどの配慮が必要です。
また、人は深く集中できるのは15分程度と言われているため、レクリエーションは15分単位で行うことをおすすめします。15分経ったら一度休憩を挟んで再開するか、内容を変えるなどの工夫をしましょう。
同じメンバーでリラックスできるようにする
認知症の方は新たな人との接触に苦手意識を持つ一方で、日常的におなじみの人々との交流は比較的スムーズに行え、心がリラックスしやすい傾向があります。
そのため、レクリエーションを行う際には少人数のグループを構成し、メンバーを固定することをおすすめします。
常に顔見知りの参加者たちと一緒に活動することで、参加者同士のコミュニケーションが促進され、レクリエーションの成功率も高まります。
高齢者レクリエーション認知症のよくある質問
ここでは高齢者レクリエーション認知症のよくある質問をまとめました。
作業中に集中しない時はどうするの?
レクリエーション中に認知症の方が内容とは関係のない話を始めた場合、まずはその話を丁寧に聞きましょう。そして、巧みにその話題からレクリエーションに戻すように誘導してください。
決して「関係のない話はしないでください」とか「その話は前に聞いたよ」といった否定的な発言を避けましょう。また、相手の話を遮ったり中断したりすることも避けましょう。
認知症の方が関係のない話をするのは、記憶力や社会的認知の能力が低下しているためであり、病状の一部と言えます。彼らが意図的にそうしているわけではないので、対応方法によって彼らの感情を傷つけてしまう可能性があります。
そのため、言葉遣いや態度には細心の注意を払いましょう。
道具を口に入れる時の注意方法は?
認知症が進行すると、食べ物と非食物の区別がつかなくなったり、食欲の抑制ができなくなったりすることで、「異食行動」と呼ばれる行動が現れることがあります。
異食行動は、誤って口に非食物を入れてしまうことを指します。レクリエーション中にもこの異食行動が起こる可能性があるため、注意が必要です。
もし参加者がレクリエーションで使用する道具を口に入れようとする場合は、まずは「今はやめましょうね」と優しく声をかけて止めましょう。また、道具の使い方を再度実演することで理解を促す効果もあります。
また、もし道具を誤って口に入れてしまった場合は、その口に手を近づけると噛まれる可能性があるため注意が必要です。
大きな声を出してしまう時の対応法は?
感情のコントロールが難しくなり、大声で怒鳴るような場合、適切な対処法は「人的なまたは物的な環境の変化」です。
例えば、ご本人が落ち着くまで、他のスタッフに一時的にその場から連れ出してもらうなどの対応が効果的です。
また、よく話を聞いて支えることや、一時的な休憩を取ってからレクリエーションの内容を変更するなどのアプローチも有効です。
ただし、仲間外れや無視するなどの行動は避けるべきであり、不安定な感情を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
高齢者レクリエーション認知症のまとめ
認知症の方向けのレクリエーションについて詳しく解説しました。
認知症の方を対象にしたレクリエーションの目的は、まず第一に精神的な効果をもたらし、ご本人が楽しんで参加し、自信をつけることです。
具体的な方法としては、回想法やウォーキング、音楽、手芸などさまざまな活動があります。ただし、最も重要なのはご本人が楽しめることや感動できることであり、形式にこだわる必要はありません。
症状が進行している場合でも、部屋の飾り付けや楽しい会話によっても素晴らしいレクリエーションになります。
これらの情報を参考に、認知症の方に向けたレクリエーションを計画する際にご活用ください。