訪問介護士のお給料について、不安を抱える人は多いのではないでしょうか。訪問介護士として働く魅力のひとつに、自分のスキルや経験に応じて昇給や賞与があることが挙げられます。しかし、給料アップのためにはどのようなスキルが必要なのか、またどのような職場選びをすることが重要なのかについては、意外に知られていないかもしれません。そこで、訪問介護での給料について基本的な情報から、アップするためのポイントまでを解説します。
訪問介護の給料の基本情報
厚生労働省が発表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、2021年における訪問介護のホームヘルパーの平均給与額は、常勤で31万4,590円、非常勤で20万1,120円です。
■訪問介護のホームヘルパーの平均給与額
常勤の場合 | 31万4,590円 |
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非常勤の場合 | 20万1,120円 |
ただし、常勤は必ずしも正社員とは限らず、一般的なフルタイムの正社員を常勤として考えると、訪問介護の正社員の平均給与は約31万円ほどということになります。
令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省
平均給与と地域差
訪問介護の給与は地域によって大きく異なる傾向があります。一般的に都市部の方が給与が高く、地方や山間部では給与が低めとなっています。また、同じ地域でも訪問介護事業者によって給与が異なることもあります。訪問介護の給与は、労働時間や資格・経験年数などによっても変わります。地域ごとの平均給与は以下の通りです。
北海道 | 200,000~210,000円 |
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東北 | 185,000~227,000円 |
北陸 | 210,000~229,000円 |
関東 | 226,000~271,000円 |
中部 | 210,000~230,000円 |
東海 | 230,000~244,000円 |
近畿 | 220,000~246,000円 |
四国 | 179,000~210,000円 |
中国 | 190,000~228,000円 |
九州・沖縄 | 180,000~210,000円 |
平均給与を基準にする場合でも、非正規雇用である非常勤スタッフの平均給与と、正規雇用である常勤スタッフの平均給与では差があります。そのため、自分が働きたい地域の訪問介護事業者や、雇用形態によって、給与を比較して判断することが大切です。
資格や経験による給与差
訪問介護の給与には、資格や経験による差があります。たとえば、ホームヘルパー2級や介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)などの資格を持っている場合、ノンキャリアよりも給与が高くなることがあります。
また、経験年数が長いほど給与が上がる傾向があります。さらに、特定のスキルや知識を持っている場合には、給与がアップすることもあります。たとえば、在宅医療や訪問看護などに詳しい場合には、そのスキルを活かして給与をアップさせることができます。
しかし、給与差は地域や企業によって異なるため、転職をする際には求人情報をよく確認し、自分の資格や経験に応じた給与を得られるように努力することが大切です。
正社員と非正規雇用の違い
正社員と非正規雇用の最大の違いは、雇用形態の安定性と労働条件の差です。正社員は、企業や団体に所属して正式な雇用契約を結び、安定した労働条件を得ることができます。
一方、非正規雇用は、契約期間が短く、正社員に比べて労働条件が不安定である場合が多いです。非正規雇用の代表的なものにアルバイト、パート、派遣、契約社員などがあります。
また、正社員には社会保険や退職金制度がある一方、非正規雇用では、そのような福利厚生が受けられない場合があります。このため、正社員は給与面や労働条件面で優遇される傾向にありますが、非正規雇用でも自分に合った働き方を選ぶことで、自分に合った働き方を実現することができます。
給与アップのための資格取得
「給与アップのための資格取得」には、介護福祉士やケアマネージャー資格の取得が有効です。介護福祉士は、介護業界でのキャリアアップに必要な資格であり、高い技術力を持つ人材として求められています。ケアマネージャー資格は、介護保険制度における認定資格であり、ケアマネージャーとしての職務に就くために必要な資格です。
その他にも、介護職員初任者研修や介護職員実務者研修、ホームヘルパー2級など、様々な資格があります。これらの資格を取得することで、自分のスキルアップや、給与アップにつながる可能性があります。ここでは、介護福祉士、ケアマネージャー資格、その他の関連資格と給与への影響について解説していきます。
介護福祉士の資格とそのメリット
介護福祉士の資格は、介護の現場で必要とされる基本的な技術や知識を習得し、実践的なケアに必要な能力を身につけることができる資格です。介護福祉士の資格を持つことで、以下のようなメリットがあります。
- 給与アップ:介護現場で働く際に必要とされる資格の一つであり、介護福祉士の資格を持っていることで給与がアップする可能性があります。
- 仕事の幅が広がる:介護の現場だけでなく、福祉施設や保育園などでの就職も可能です。
- 職業上のスキルアップ:介護の基本的な技術や知識を習得することができ、介護の現場での業務において高い質のサービスを提供することができます。
- 心理的なメリット:資格を持つことで自己肯定感が高まり、自己実現やキャリアアップにつながります。
介護福祉士の資格を取得するためには、2年間の介護福祉士養成課程に通うことが必要です。また、介護福祉士の資格を持つことで、さらに上位の資格である社会福祉士の試験を受けることもできます。
介護福祉士の資格は、介護の現場で必要な技術や知識を身につけることができるだけでなく、仕事の幅も広がるため、今後ますます需要が高まると考えられます。介護現場で働く際には、介護福祉士の資格を持つことで、より高い報酬を得ることができるため、資格取得に取り組むことが重要です。
ケアマネージャー資格の取得とその効果
ケアマネージャー資格は、介護保険制度におけるケアマネジメント業務を担う資格です。ケアマネージャーは、利用者のニーズや環境、地域の支援リソースなどを踏まえ、適切なサービスプランを作成し、利用者や関係者と協働しながら、サービスの提供や調整を行います。ケアマネージャー資格の取得には、介護福祉士や社会福祉士などの資格が必要です。
ケアマネージャー資格の効果は以下の通りです。
- 高収入: ケアマネージャーは、介護保険制度における中心的な役割を担っており、高い専門性が求められます。そのため、他の介護職種に比べて高収入である傾向があります。
- スキルアップ: ケアマネージャーは、専門的な知識やスキルが必要とされるため、その取得により、より高度なスキルアップが可能です。
- 就職・転職のチャンス: ケアマネージャー資格を取得することで、介護職種以外の福祉関連職種や、民間企業に就職・転職する機会が増えることがあります。
- 自己実現の機会: ケアマネージャーは、利用者や家族と密に関わり、彼らがより良い生活を送るためのサポートを行います。そのため、自己実現の機会が多いとされています。
ケアマネージャー資格は、介護職種の中でも高いスキルが求められる資格であり、その効果も大きいと言えます。しかし、取得には他の介護職種よりも多くの時間や労力が必要であるため、十分な検討が必要です。
また、資格取得後も、より高度なスキルや知識の習得が求められるため、常に自己研鑽が必要となります。
その他の関連資格と給与への影響
介護現場で役立つ資格は多岐に渡ります。中でも、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士、ケアマネージャーなどの資格取得によって給与アップが期待できます。また、医療事務や調剤薬局事務、診療情報管理士などの医療関連資格も介護現場で需要があります。
これらの資格を持つことで、介護業界以外にも転職する際の選択肢が広がることもあります。ただし、資格取得には時間と費用がかかるため、自分自身のキャリアプランをしっかりと考え、将来の見通しを持った上で資格を選択することが重要です。
給与アップのためのキャリアアップ
介護業界において、給与アップを目指す場合、スキルアップが必要不可欠です。しかし、スキルアップの方法はさまざまです。ここでは介護業界における給与アップにむけたキャリアアップの方法をご紹介していきます。
スキルアップを目指す方法
介護の仕事において、スキルアップすることは非常に重要です。スキルアップすることで、より高度な介護が提供できるようになり、給与アップやキャリアアップにもつながります。スキルアップの方法は様々ありますが、代表的なものを以下に挙げます。
- 研修やセミナーに参加する
- 資格試験を受ける
- 専門書や専門誌を読む
- 同業者と情報交換する
- 実務経験を積む
また、スキルアップするためには、自己研鑽することが大切です。日々の業務においても、自分自身が不十分だと感じた点や改善点を見つけ、自己改善をしていくことが重要です。自分でスキルアップするだけでなく、周りの人をサポートすることもスキルアップにつながります。
スペシャリストとしての道
スキルアップして、介護業界でスペシャリストとして活躍する道もあります。具体的には、以下のようなスペシャリスト資格があります。
- 認知症ケア専門士
- 栄養士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
それぞれの資格は、介護現場で必要とされる専門的なスキルを習得できます。資格を持っていることで、専門的な知識や技術を身につけ、高度な介護を提供できることが求められます。
スペシャリストとしての道を目指すには、まずは資格取得を目指すことが大切です。その後、実践的な経験を積むことで、さらなるスキルアップが可能です。スペシャリストとして高度な介護を提供できることで、高い評価を受け、給与アップにも繋がるかもしれません。
管理職や独立開業への道
介護業界においても、管理職になることで給与をアップすることができます。例えば、施設長や事業所長、部長など、組織の中で管理的な役割を担うポジションに就くことで、高い給与を得ることができます。
また、独立開業することで自分の給与を決めることができます。例えば、介護サービスを提供する会社を起業する場合、自分でサービス内容や価格を決めることができます。ただし、管理職や独立開業には、専門的な知識や経験だけでなく、人材管理や経営能力などのスキルが求められます。
そのため、これらのスキルを磨くためには、専門的な研修や経営学の学習などが必要となります。また、経験を積むことも重要であり、前職からのキャリアパスや、異業種からの転職も考えることが大切です。
訪問介護で働く際の福利厚生と待遇
訪問介護で働く際には、福利厚生や待遇が気になるところです。仕事内容や勤務時間に加えて、社会保険や退職金制度、有給休暇の取得など、さまざまな面で待遇に差があるため、比較検討が必要です。
また、訪問介護には介護福祉士やヘルパーなど、様々な職種があり、それぞれに対して待遇が異なることもあります。ここでは、訪問介護で働く際の福利厚生や待遇について解説していきます。
休暇制度と労働環境
訪問介護で働く際の休暇制度は、法定通りの有給休暇や慶弔休暇のほか、夏季休暇や年末年始休暇、生理休暇、介護休暇などがある場合があります。
また、フレックスタイム制度やテレワーク制度が導入されているところもあり、自分の都合に合わせて勤務時間を調整できる場合もあります。労働環境については、屋内での仕事が多く、季節や気候の影響を受けにくいことが特徴です。
一人ひとりの利用者宅を訪問するため、比較的自由な雰囲気で働ける場合があります。ただし、移動時間が長い場合や、利用者宅によっては設備が整っていない場合もあるため、ストレスを感じることもあります。訪問介護で働く際には、自分に合った休暇制度や労働環境を重視し、適切な職場を選ぶことが大切です。
交通費や残業手当などの手当について
訪問介護の場合、交通費や残業手当などの手当は、企業や団体によって異なる傾向があります。交通費については、徒歩や自転車での通勤の場合は支給されず、公共交通機関を利用する場合に支給されることが多いです。
残業手当については、基本給とは別に時間外労働に対して支払われることが多いですが、残業時間が少ない場合は支給されないこともあります。また、夜勤手当や休日手当など、訪問介護に特化した手当もある場合があります。企業によっては、資格手当や研修手当など、スキルアップに直結する手当を支給している場合もあります。各企業や団体の福利厚生や待遇を比較することで、自分に合った職場選びができます。
社会保険や退職金制度の有無
訪問介護で働く際には、雇用形態によって社会保険や退職金制度の有無が異なります。正社員であれば、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険に加入し、退職金制度が設けられることが一般的です。
一方、非正規雇用である場合、保険に未加入であったり、退職金制度がない場合が多くあります。これは、非正規雇用で働く場合には、雇用期間や勤務時間が短く、契約更新が毎年行われることが一般的であるためです。
しかし、最近では、正社員に比べて非正規雇用の待遇が改善される傾向があります。訪問介護の企業によっては、正社員に準じた福利厚生を提供する場合もありますので、求人情報などで確認してみることが大切です。
まとめ
今回の記事では、訪問介護で働く際の給料について詳しく解説しました。訪問介護は高齢化社会の中でますます需要が高まっており、その分野で働くことは安定した職種の一つです。しかし、同時に責任も大きく、必要なスキルや資格も多く求められます。そのため、スキルアップや資格取得にも注力する必要があります。
また、訪問介護の給与は地域や施設によっても異なるため、自分自身が働く地域や施設の給与体系を調べ、適切なアップ方法を考えることも重要です。
訪問介護の仕事に興味がある方や現在訪問介護で働いている方は、ぜひ今回の記事を参考にして、より充実したキャリアを築いていきましょう。