最近、耳にする機会が増えてきたSDGs。カラフルなロゴを見たことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、何となくわかっているようでも説明してと言われたら困ってしまうという方も多いのではないでしょうか?
この記事では、SDGsとはどのようなものか、服のリサイクルを通して子ども達にSDGsの大切さを知ってもらうための3つのねらいやポイントについて詳しくご紹介します。
そもそもSDGsとは?
SDGsとは、Sustaineble Deveropment Goalsの頭文字を取ったもので、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
2015年に国連サミットで採択され、2016年〜2030年までに達成すべき17の目標とそれを成し遂げるための169のターゲットで構成されています。
世界中の国々では気候変動を含めた環境・自然問題、貧困、人権、紛争といった社会問題など、早急に解決しなければならない問題が溢れており、このままの生活を続けていくと資源はどんどん減っていき、温暖化が進み、人も動物も自然も生きていくのが困難な世の中、暮らしにくい社会になってしまいかねません。
そこで、世界共通の17個の大きな目標と169個の目標基準となるものを具体的に示しました。より平和で持続していくことが可能な社会を作っていくために、企業や市民1人ひとりレベルで「自分に何ができるか」を考えて行動し、2030年までに世界共通目標の達成というゴールを目指していきましょう、というものです。
些細な事でも地球上の1人ひとりが意識的にできることを続けていくことで、よりよい社会に変えていくことが可能なのです。
身近なモノでSDGsを伝えるのがおすすめ
SDGsは年齢の制限はなく、地球で暮らしているみんなが考え、行動していくことが大切です。とはいえ、子ども達に世界規模の話をしてもイメージするのが難しく、漠然とした対象では行動に繋がりにくくなってしまいます。
そこで、身近なモノを題材に挙げることで理解しやすく、取り組みやすくなるのでおすすめです。
【個人でできるSDGsの取り組み例】
ゴミの分別を行う | 買い物をするときはマイバッグを使う |
キャンプ先でのゴミを持ち帰る | 家事は家族で分担して行う |
フードロスを意識して食材を購入する | 余った食材を子ども食堂に提供する |
使わない電化製品のコンセントを抜く | 水の流し過ぎに気をつける |
例えば、服は誰でも毎日着用するものであるため、とても身近なモノだと言えます。好みや季節、TPO、成長に合わせて買い替える必要があるため、1年の間に何度か購入する機会がある人も多いでしょう。
では逆に、着れなくなってしまった服はどうなるでしょうか?捨ててしまった服はどうなっていくのでしょうか?
ちょっとした疑問を投げかけると、これまで考えたこともなかったことについて掘り下げて考えるキッカケ作りができます。
ここからは服のリサイクルに焦点をあて、子ども達にSDGsの大切さを知ってもらうための3つのねらいやポイントについてご紹介します。
服のリサイクルでSDGsを伝える3つのねらい
成長してサイズが合わなくなってしまった等の理由から、これまで着ていた服ともお別れしなければならない時がやってきます。
「もう着ないから」という理由で捨ててしまえばそれはただのゴミですが、服はリサイクルすることが可能です。
兄弟・姉妹におさがりとして譲ったり、リメイクして別のものに作り変えたり、自治体や販売店で回収を行っているところもあります。近年ではフリマアプリを利用して必要としている人に安価で売るという選択肢を選ぶ方も増えています。
「着ることができなくなった服をリサイクルすることが、実はSDGsにも繋がっている」ということがわかれば、よりSDGsについても身近に感じることができるのではないでしょうか。
服を大切にすることの重要性を伝える
たった1着の服にもデザインを考える人、服を作る人、それを運ぶ人、お店で販売する人・・・とたくさんの人が関わっています。
服を通して、会ったことのない人たちの存在に気づき、その人たちがどのように働き、どのような想いを持って服に関わっているのかを想像してみると良いですね。
服を大切にするということは、その服に携わった人たちの想いや労力に感謝することにも繋がります。
また、服には取り扱い方法を知らせるタグが付いており、生産国も記載されています。現在、日本の小売市場で販売される衣類の約98%が海外からの輸入となっています。
では、なぜその国で作られているのか?ということも併せて考えてみるのも良いですね。
発展途上国の多くの労働者が低賃金で働いているということも人権問題として大きな問題となっています。
服を捨ててしまうことのデメリットを理解してもらう
着れなくなった服を捨ててしまうと、ゴミとして焼却または埋め立てられます。
日本では1日あたり焼却・埋め立てされる衣服の総量は約1,300トンにも上ります。これは大型トラック130台分です。1日でこれだけの量がゴミとして出ているのです。
服を焼却すると、大量の二酸化炭素が発生します。二酸化炭素は地球温暖化の原因でもあり、異常気象の発生や生態系にも大きな影響を与えています。
温暖化の影響により、寒い地域の雪が解けて雪崩が起きやすくなったり、ゲリラ豪雨や大型台風の頻発といった気候変動による災害・被害も増えたりしています。
また、干ばつ・砂漠化により植物が育たない、動植物の生息域が減少しているといった問題も起きています。
服を捨てるということが巡り巡って、地球上のさまざまなところに影響を与えているのです。
服という身近なモノをきっかけにSDGsに興味をもってもらう
これまでの流れを追っていくと、服を通してこれまで見えてこなかった人たちや自然、生き物、地球の今の姿が徐々に見えてきたのではないでしょうか。
服という身近なモノをきっかけとして、私たちが暮らしている地球で起こっている問題に気づき、「どうにかしなくちゃいけない!」「自分にできることはあるのかな?」と子ども達にもSDGsに興味をもってもらうことが大切です。
子ども達が感じたこと、考えたことに共感しながら保育者も一緒になって考えてみるといいですね。意見や疑問を出し合いながら話していくことで、より自分たちにとって身近な問題であることを実感することができます。
服からSDGsの大切さを伝えるポイント
服を作り上げるのには多くの資源が使われていますが、資源は決して無限ではありません。
また、作る工程での水質汚染、土壌汚染、二酸化炭素の排出といった環境問題も無視できません。
しかし、服をリサイクルする人が増えれば資源をムダにすることなく、廃棄量も減らすことができます。
1枚の服にも多くの資源が使われていることを伝える
私たちが着ている服の1着1着にも多くの資源が使われており、コットンなどの天然繊維は栽培時や染色、洗浄などの過程において大量の水を必要とします。
その染色された水が川や海にそのまま流れ、水を汚染してしまうこともあります。そして、化学肥料は土壌汚染の原因になっています。
ポリエステルなどの合成繊維では、石油資源を使用するため、二酸化炭素を多く排出します。
環境省の調査によると、原材料調達から製造段階までに排出される環境負荷の総量は、服1着あたりに換算すると二酸化炭素の排出量が約25.5㎏で、これは500mlのペットボトル約255本製造する分と同等です。また、水の消費量は約2,300ml、これは浴槽の約11杯分に相当します。
たった1枚の服を作り上げるまでに、多くの資源が使われ、それによって土壌汚染、環境汚染にさらされ、多くの生き物たちの命を奪ってしまっている現実があることを忘れてはいけません。
そして、着れなくなってしまった服は、そのほとんどがゴミとして廃棄するという人がほとんどです。
2020年12月〜2021年3月に環境省が「日本で消費される衣服と環境負荷に関する調査」をした結果によると、服を処分する際の手段として大きく3つに分かれました。
1.古着として販売・譲渡、寄付・・・14%
2. 地域、店頭での回収・資源回収・・・18%
3. 可燃ごみ、不燃ごみとして廃棄・・・68%
着ることができなくなった、いらなくなってしまった服の68%が可燃ごみや不燃ごみとして廃棄されているのです。
ゴミとして捨てるのではなく、多くの人が意識的にリサイクルすることで資源を有効に使うことができます。また、大量廃棄に伴う環境汚染も抑えることが可能なのです。
現状を知ったうえで自分に何ができるのか考えさせる
服が製造されてから処分されるまで、多くの資源が使われ、多くの環境問題が起きていることがわかりました。
このままの生活を続けていくと、私たちの未来はどうなっていくのでしょうか?
服のリサイクルはリメイクやリデュース、自治体や販売店で回収といった方法でリサイクルすることができます。
しかし、大人が単に「着なくなった服はリサイクルしましょう」と呼びかけるのではなく、子ども自身が考える機会を持つことが大切です。
SDGsの取り組みを無理なく続けるためには、大人にやらされているからやっているのではなく、子ども達が自発的に「やってみたい!」「こうしたら良いかもしれない」という気持ちを持つことが大切です。保育者は、そこに導くための言葉がけも工夫したいところです。
まとめ
服のリサイクルを通して子ども達にSDGsの大切さを知ってもらうための3つのねらいやポイントについてご紹介しました。
ファッション業界は、石油業界に次いで2番目に二酸化炭素を含む温室効果ガスを排出し、地球温暖化に大きな影響を与えている産業といわれています。
しかし、近年ではサステナブルな社会の実現に向けて積極的に動き出している自治体や企業、ブランドも増えてきました。
自分たちにできることは何か、自分たちがやるべきことは何かと考える機会を作り、自発的に取り組もうとすることが大切です。
2030年のゴールに限らず、これからの未来を誰もが暮らしやすい環境にしていくために、継続してSDGsに取り組んでいきたいものです。