子どもが自分で歯を磨けるようになるためには、「楽しく学ぶ」工夫が欠かせません。その中でもおすすめなのが、手作りの歯の模型を使った歯磨き練習工作です。実際に歯の形や並びを再現することで、正しい磨き方や磨き残しの場所を視覚的に理解しやすくなります。
親子で一緒に作る時間は、歯磨きへの関心を高めるきっかけにもなるでしょう。
この記事では、歯磨き練習に役立つ工作の作り方や遊び方のコツをわかりやすく紹介します。
目次
歯磨き練習工作のねらいと効果
工作としての楽しさと、生活習慣づくりという教育的要素を兼ね備えている点が特徴です。
保育園・幼稚園では6月の「*虫歯予防デー」などに合わせて実施することで、年間行事とのつながりも生まれ、子どもたちの理解がより深まります。
*「虫歯予防デー」は、6月4日を指します。語呂合わせで「む(6)し(4)」にちなんでおり、日本歯科医師会が1928年(昭和3年)に始まりとされています。
現在では、6月4日から10日までの1週間が「歯と口の健康週間」となっており、歯科疾患の予防や健康増進に関する啓発活動が行われています。
楽しく歯磨きを学ぶ意義(遊び→習慣化)
歯磨きは毎日の生活習慣の中でも特に大切な行動ですが、幼児にとっては「やらされている」と感じやすい場面でもあります。そこで、工作を通じて「歯磨きって楽しい!」という前向きな印象を持たせることが重要です。
たとえば、スポンジやストローで作った歯ブラシで模型の“歯”を磨く活動は、遊びの延長として自然に参加できます。楽しみながら動かすうちに、力加減や磨く順番が身についていき、実際の歯磨きにも自信を持てるようになります。
また、鏡を見ながら自分の口を観察する習慣にもつながり、衛生意識を高めるきっかけになります。
「遊び→行動→習慣化」という流れを作ることが、歯磨き練習工作の最大のねらいです。
6月4日の「虫歯予防デー」と年間行事へのつなげ方
歯磨き練習工作は、6月4日の「虫歯予防デー」や「歯と口の健康週間」(6月4日〜10日)に合わせて行うと、より意味のある学びになります。この期間は全国的に歯科衛生への意識を高める行事が多く、園での健康教育にも最適なタイミングです。
工作と組み合わせることで、子どもたちは“歯の大切さ”を体験的に理解できます。
- たとえば、紙コップで作る歯の模型
- 絵本「はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!」を一緒に読む
など、視覚・聴覚の両方から学べる工夫も効果的です。
また、年間を通して“健康週間”“食育活動”などと連動させれば、歯磨きだけでなく生活習慣全体の意識づけにもつながります。楽しい工作を通して、子どもたちが自分の歯を大切にする気持ちを育むことができるでしょう。
必要な材料と道具の準備
歯磨き練習工作は、家庭や園にある身近な素材で簡単に準備できます。特別な材料を買い足さなくても、ティッシュ箱やトイレットペーパー芯などの再利用素材を使うことで、環境にもやさしい制作活動になります。
工作を通じて“身近なもので工夫する”ことを学ぶ点も、この活動の教育的な魅力です。ここでは、使いやすく安全な材料選びのポイントと、100円ショップでそろうおすすめ素材を紹介します。
ティッシュ箱・トイレットペーパー芯の活用アイデア
ティッシュ箱は「口の模型」や「歯の土台」として活躍します。
- 箱の底を切り抜いて開くと、子どもの手にも扱いやすいサイズの“口”を再現でき、上段と下段を別々に作って「上の歯」「下の歯」と分けることも可能です。
- ティッシュ箱の内側に白い紙を貼ると清潔感が出て、磨き残しチェックにも使えます。
- トイレットペーパーの芯は「歯ブラシの持ち手」や「口の奥歯パーツ」にぴったり。芯を3〜4本並べて白い紙を巻けば、立体的な歯の模型としても使えます。
これらの素材は切りやすく軽いため、小さな子どもでも安心して扱える点が魅力です。遊びながら、歯の並び方や口の形を自然に理解できるようになります。
基本の工作道具と安全対策(ハサミ・カッター・のり)
- 工作の基本道具としては、はさみ・カッター・のり・テープがあれば十分です。
- 3〜5歳児の場合は、刃先が丸い子ども用はさみを使用し、切るときは保護者がしっかり見守りましょう。
- 段ボールやティッシュ箱をカットする場面では、カッターを大人が代わりに使うのが安全です。
- のりはスティックタイプや速乾ボンドを用いると手が汚れにくく、乾きも早いので作業がスムーズに進みます。
- 机の上には新聞紙や作業マットを敷き、切りくずが落ちないようにしておくと後片付けも簡単です。
- 安全に作業できる環境を整えることで、子どもも安心して“ものづくり”に集中できるでしょう。
100均でそろう追加素材(スポンジ・ストロー ほか)
歯磨き練習をより楽しくするために、100円ショップで手に入るアイテムをプラスするのもおすすめです。
- たとえば、スポンジを歯ブラシの先に見立てたり、ストローを持ち手部分として使うと、本物に近い形の“歯磨きセット”が作れます。
- フェルトやカラーペーパーを使えば、歯ぐきの部分を色分けでき、視覚的にも分かりやすい作品になります。
- モールで「歯ブラシ立て」を作ったり、シールで“バイキン”を貼って磨き取る遊びを加えたりすることで、楽しさがぐんと広がります。
どの素材も軽く柔らかいので、けがの心配が少なく、園や家庭でも安心して取り入れられます。
工作後も壊れにくく、繰り返し歯磨き練習に使えるのがうれしいポイントです。
基本の工作手順とコツ
歯磨き練習工作を楽しく、かつ実際の歯磨き練習につなげるためには、形の再現と強度のバランスが大切です。子どもが繰り返し遊べるように、丈夫に作るポイントを押さえながら進めましょう。
特に「口の形を整える」「歯を並べる」「歯ブラシを作る」の3工程は、制作の楽しさと完成度を左右します。
作業は焦らずステップごとに行い、できるだけ子どもが主体的に関わる時間をつくるのが理想です。
口の部分の切り抜きと補強のしかた
- ティッシュ箱や空き箱を用意し、前面に“口”となる大きな穴を切り抜きます。
- 箱を横向きにして、上あごと下あごのイメージで楕円形や半円形にカットするとリアルな見た目になります。
- 切り抜く際は、カッター部分は保護者が担当し、子どもにはペンで下書きをしてもらうと安全です。
- 切り抜いたら、切り口をガムテープやビニールテープで囲って補強します。
- さらに内側に厚紙を貼っておくと、繰り返し遊んでも破れにくくなります。
- 赤やピンクの色紙を貼って“歯ぐき部分”を再現するのもおすすめです。
- 作業中に角が立たないよう、すべての切断面は丸く処理しておくと安心です。
歯の配置と仕組みづくり(並べ方・固定のコツ)
- 歯はトイレットペーパーの芯や小さく丸めた紙を使って作ります。
- 白い画用紙を巻いて“歯”の形を作ったら、上下に10本ずつ並べて貼り付けると本物の口に近づきます。
- 歯の間隔を少しあけると、磨くときにスポンジやブラシが入りやすくなります。
- 貼る位置は箱の内側の底や上ふた部分が安定しやすく、のりやボンドを多めに使ってしっかり固定しましょう。
- さらに、子どもが磨いたときに「きれいになった!」と実感できるように、歯の一部に黄色い紙を貼り「汚れ部分」を作っておくのもおすすめです。
- 完成後は「磨く前」と「磨いた後」の変化を目で見て確認でき、達成感や理解が深まります。
歯ブラシの手作り方法(柄・毛先の再現)
- 歯ブラシは、ストローや割りばしを柄として使い、先端にスポンジを貼り付けて作ります。
- スポンジを小さめにカットして両面テープで固定し、上から輪ゴムを数回巻くとしっかり留まります。
- スポンジ部分を平らに整えると、歯の表面をなでるように磨けてリアルな動きが再現できます。
- ブラシの色を子どもに選ばせることで、より愛着のある道具になります。
- さらに発展として、使い終わった歯ブラシを清潔に洗って再利用する方法もありますが、毛先が硬い場合はスポンジタイプに差し替えると安全です。
- 柔らかく弾力のある素材を使うことで、歯磨きの力加減を練習する感覚も身につけやすくなります。
正しい歯磨き指導のポイント
歯磨き練習工作を使うと、単に「歯を磨く」だけでなく、動作の順序や力加減まで体で覚えることができます。子どもは見て学ぶ力が強いため、実際に大人が手本を見せながら声かけを行うことが大切です。
「持ち方」「順序」「力のかけ方」という3つの基本を意識すると、遊びながらでも自然と正しい磨き方が身についていきます。
ここでは、家庭や園で実践できる歯磨き指導のポイントを具体的に解説します。
歯ブラシの持ち方と動かし方(ペン持ち・小刻み)
- 歯ブラシの正しい持ち方は「ペン持ち」が基本です。えんぴつのように軽く握ることで、力を入れすぎずに細かく動かせるようになります。幼児は手の筋力が未発達なため、大人が手を添えてサポートすると安心です。
- 磨くときは「ゴシゴシ」ではなく、「シャカシャカ」と音を立てるくらいの軽い力で小刻みに動かすのが理想的です。前後ではなく、歯ぐきに対して45度の角度であて、汚れをかき出すように動かします。
- 歯磨き練習工作を使う際も、ブラシの毛先が歯に当たる感覚を伝えながら「ここをちょんちょん」「小さく動かそう」と声をかけると、実際の歯磨きにスムーズにつながります。
磨く順序と時間の目安(前歯→奥歯→噛む面)
- 歯磨きの効果を高めるためには、順序を決めて習慣化することが大切です。基本は「前歯 → 奥歯 → 噛む面 → 裏側」の流れで行い、左右の順番を毎回そろえると、磨き残しが減ります。
- 目安としては全体で2〜3分程度が理想ですが、小さな子どもの場合は“楽しく続ける”ことを優先して短時間でもOKです。工作で作った歯の模型を使って「上の前歯を磨こう」「今度は奥のほうね」と声をかけながら進めると、視覚的にも理解しやすくなります。
- 仕上げ磨きの際は、子どもに自分で順番を言ってもらうと習慣化が早まり、「自分でできた!」という自信にもつながります。
力加減と細部ケア(歯ぐき・奥・奥の裏)
- 歯磨きで最も難しいのが、力加減と細かい部分のケアです。強く磨きすぎると歯ぐきを傷つけてしまい、弱すぎると汚れが残ります。正しい力の目安は、歯ブラシの毛先が少ししなる程度。親指と人差し指だけで軽く動かすイメージが理想的です。
- 奥歯の裏や歯ぐきの境目など、見えにくい場所こそ丁寧に行いましょう。工作の歯模型を使って「ここが虫歯になりやすい場所だよ」と説明すると、子どもにも理解しやすくなります。
- 舌の表面や頬の内側も軽くブラシを当てる練習をすると、口内全体の衛生意識を育てられます。遊びの延長として取り組むことで、歯磨き=楽しい習慣として定着しやすくなるでしょう。
年齢別の取り組み方とサポート
歯磨き練習工作は、年齢に応じて目的やサポートの方法を変えることで、子どもの発達段階に合った学びが得られます。
2〜3歳では「歯磨き=楽しいこと」という印象づけを重視し、4〜5歳では自立を意識した習慣づくりへと発展させましょう。どの年齢でも、保護者が優しく声をかけ、成功体験を積み重ねることが大切です。
ここでは、年齢別の取り組み方と、家庭でできるサポートの工夫を紹介します。
2〜3歳:まねっこ遊びで楽しく導入
- この時期の子どもは、大人の動きをまねることで生活習慣を身につけます。歯磨きも“まねっこ遊び”を取り入れると効果的です。
- 工作で作った口の模型を「おくちさん」と呼び、保護者が磨くまねを見せながら「きれいになあれ」と声をかけてみましょう。子どもは視覚的な動きに興味を持ちやすく、自分もやってみたい気持ちが自然に生まれます。
- スポンジ製の歯ブラシを使えば安全で、指先の力加減も学べます。時間は1分程度を目安に短く切り上げ、飽きる前に「できたね!」と褒めて終えるのがポイントです。
- 楽しい印象を残すことで、日常の歯磨きへの抵抗感が減り、次のステップへの意欲につながります。
4〜5歳:鏡合わせとタイマーで自立を促進
- 4〜5歳になると、手先の器用さや集中力が高まり、自分で磨く練習に最適な時期です。鏡を使って「自分の歯を見ながら磨く」ことを意識させると、動作と感覚の一致が進みます。
- 工作の模型を使って順序を確認しながら、「上の歯→下の歯→奥」といった流れを口に出して練習するのも効果的です。タイマーを使って「30秒ずつ磨こう」と時間を区切ると、遊び感覚で集中が続きやすくなります。
- 保護者は、磨けている部分を具体的にほめることがポイントです。「奥まで届いたね」「前歯ピカピカだよ」と声をかけることで、自信と達成感が育ち、毎日の歯磨きが“自分の習慣”へと変わっていきます。
保護者の関わり方と声かけ(仕上げ磨きのコツ)
- 仕上げ磨きは、子どもの歯を守るうえで欠かせない工程です。嫌がらずに受け入れてもらうためには、リラックスできる雰囲気づくりと優しい声かけが大切です。
- たとえば「くすぐったいね」「あとちょっとでピカピカだよ」と、楽しい言葉を使いながら進めましょう。照明を明るくして姿勢を安定させ、子どもの頭を膝の上に乗せると磨きやすく安全です。
- 特に奥歯や裏側は見落としやすいため、仕上げ磨きでしっかり確認します。歯磨き練習工作を使って「ここがバイキンの隠れ場所だよ」と教えると、子ども自身も意識しやすくなります。保護者が“守ってくれている”という安心感が、歯磨きを前向きな習慣に変えていくでしょう。
安全管理と注意事項
歯磨き練習工作は、身近な素材で安全に楽しめる活動ですが、小さな部品や刃物を扱う工程があるため、制作時と遊ぶときの両方で安全面に配慮することが大切です。特に、子どもの年齢に合わせた道具の選び方や、遊び方のルールづくりが事故防止の鍵となります。保護者や保育者が常に見守りながら、子どもが安心して挑戦できる環境を整えましょう。
ここでは、制作中・遊び中・保管時の3つの場面に分けて、安全管理のポイントを解説します。
工作時の安全(刃物・接着剤・小パーツ)
- 制作の際は、カッターやはさみなどの刃物を使う場面があります。カット作業は必ず保護者や保育者が行い、子どもが刃物に手を触れないよう距離をとりましょう。
- のりや接着剤も安全性を確認し、低刺激タイプや水性の木工用ボンドを選ぶと安心です。グルーガンを使う場合は、火傷防止のために耐熱シートを敷き、子どもが触れないよう十分注意します。
- 小さなビーズやフェルトパーツを扱うときは、トレーに入れて管理することで紛失や誤飲のリスクを減らせます。作業台の上を整理整頓し、片付けまでを一連の活動として習慣化することも、安全教育の一環として大切です。
遊び中の事故防止(振り回し・走り回りNG)
- 完成した歯磨き工作を使って遊ぶ際には、思わぬ事故を防ぐためのルールを事前に決めておくことが必要です。特に歯ブラシ部分を手に持ったまま振り回したり、走りながら動かしたりすると、周囲の子どもに当たってけがをする恐れがあります。
- 遊ぶときは必ず机の上またはマットの上など、限られたスペースで行うようにしましょう。また、複数人で遊ぶ場合は「順番を守る」「道具を共有する」といったルールも教えておくとトラブルを防げます。
- 壊れた部品や取れたパーツはすぐに交換し、テープやのりで応急処置をして再利用する場合も保護者が確認してから渡すようにしましょう。
誤飲・誤嚥を防ぐ素材選びと保管
- 使用する素材は、子どもの年齢や発達に合った安全なものを選ぶことが重要です。3歳未満の子どもが遊ぶ場合は、ビーズ・ストロー・モールなどの小さな部品は避け、丸めた紙やフェルトなど柔らかく大きい素材を使うと安心です。
- 接着剤の乾きが不十分なまま遊ぶと、パーツが外れて誤飲の原因になるため、完成後はしっかり乾かしてから渡しましょう。保管時は密閉袋や専用ボックスにまとめ、子どもの手が届かない場所に置いておくと安全です。
- 特に複数の子どもがいる家庭や園では、作品ごとに名前を記入して区別することが事故防止につながります。遊び終わったあとの点検と管理を徹底することで、安心して楽しく歯磨き練習を続けられるでしょう。
まとめ
歯磨き練習工作は、子どもが楽しみながら歯の大切さを学べる、実践的で教育効果の高い活動です。身近な素材を使って“自分だけの歯磨きセット”を作ることで、創造力や手先の器用さが育まれるだけでなく、「歯をきれいにしたい」という意識を自然と身につけられます。工作という遊びの中に、健康教育の要素が無理なく組み込まれている点が、この取り組みの大きな魅力です。
制作の際は、保護者や保育者が安全を確保しながら、子どもが主体的に参加できるようサポートしましょう。完成した模型を使って歯磨きの順序や力加減を学んだり、鏡を見ながら実際の動きを練習したりすることで、遊びから“習慣”へとつなげることができます。6月の「虫歯予防デー」などの行事に合わせて取り入れれば、家庭や園での健康教育にも発展可能です。