保育所を運営していくうえで「保育士の資質向上」は重要なテーマの一つです。
多くの若い保育士が入ってくるなかで、若手を指導するリーダー役や最近の保育問題に対して専門的な知識を持つ人材が必要となってきます。
「保育士キャリアアップ研修制度」では、保育士に研修機会をもうけることで保育士のレベルアップを図ることが可能です。
この記事では、保育士キャリアアップ研修制度がどのような制度なのかという点から、具体的な研修分野についても解説します。
保育士キャリアップ研修の概要
保育の現場では、多様な問題への対応や若手保育士を育成するためリーダーの存在が欠かせません。
このようなリーダー的職員を育成する場合に、厚生労働省は一定のガイドラインを設けることでレベルを確保し、研修の内容や研修の実施方法を策定しています。
これまで保育士のキャリアは、クラス担任などの保育士、主任保育士、園長でした。
しかし、キャリアアップ研修制度が設置されたことによって、職務分野別リーダー、専任リーダー、副主任保育という新たな役職が追加されました。
そのため、従来よりも保育士としてキャリアを積み上げる道筋がはっきりしたことが本制度の大きなポイントです。
また、実施主体や指定手続きの方法など詳しい情報については、以下のようになっています。
実施主体 | ・都道府県
・都道府県知事の指定した研修実施機関> |
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指定手続き | ・研修実施機関は、研修会場の所在地の都道府県に指定の申請を行う。
・指定を受けた研修について、翌年度も実施する場合は、届出書を提出することで引き続き効力を有する。 |
研修時間 | ・1分や15時間以上とする。 |
講師 | ・指定保育士養成施設の教員
・研修内容に関して十分な知識及び経験を有すると都道府県知事が認めるもの |
研修修了の評価 | ・研修終了の評価については、15時間以上の研修の受講を確認するとともに、研修の受講後にレポートを提出させるなど、研修内容に関する知識及び技能とそれを実践する際の基本的な考え方や心への認識を確認する。 |
研修修了の情報管理 | ・都道府県及び研修実施機関は、研修修了者に対し、証書を交付する。
・修了書は全国で有効となる。 ・都道府県及び研修実施機関は、研修修了者の情報管理を行うこととする。保育士登録番号氏名生年月日住所等を記載した研修修了者名簿を作成する。 |
保育士キャリアアップ研修制度で追加された3つの役職
前述したように保育士キャリアアップ研修制度では、多様な課題への対応と若手職員の指導体制をつくるために「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」が新たに創設されています。
以下では、それぞれの役職になるために必要な条件と処遇改善額を解説します。
副主任保育士
副主任保育士になるための要件は次の通りです。
- 経験年数概ね7年以上
- 職務分野別リーダーを経験
- マネジメント+三つ以上の分野の専門研修を修了
- 副主任保育士として発売される
副主任保育士は月額4万円の処遇改善があります。
専門リーダー
専門リーダーになるための要件は次の通りです。
- 経験年数概ね7年以上
- 職務分野別リーダーを経験
- 4つ以上の分野の専門研修を修了
- 専門リーダーとして発令される
専門リーダーは月額4万円の処遇改善があります。
職務分野別リーダー
職務分野別リーダーになるための要件は次のとおりです。
- 経験年数概ね3年以上
- 担当する職務分野(乳児保育・幼児教育・障害児教育・食育アレルギー・保健衛生/安全対策・保護者支援/子育て支援)の研修を修了
- 終了した研究分野に関わる職務分野別リーダーとして発令される
職務分野別リーダーには月額5000円の処遇改善があります。
保育士キャリアップ研修は3つの分野がある
保育士等に関するキャリアアップ・処遇改善のためには、研修による技能習得によりキャリアアップができます。
この保育士キャリアアップ研修では次の3つの分野からできています。
専門分野別研修
専門分野別研修では保育に関連する課題に対応する力を高めるために次の領域で研修が行われます。
研修分野 | 内容 |
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①乳児保育 | ・乳児保育の意義 ・乳児保育の環境 ・乳児への適切な関わり ・乳児の発達に応じた保育内容 ・乳児保育の指導計画、記録及び評価 |
②幼児教育 | ・幼児教育の意義 ・幼児教育の環境 ・幼児の発達に応じた保育内容 ・幼児教育の指導計画、記録及び評価 ・小学校との接続 |
③障害児保育 | ・障害の理解 ・障害児保育の環境 ・障害児の発達の援助 ・家庭及び関係機関との連携 ・障害児保育の指導計画、記録及び評価 |
④食育・アレルギー対応 | ・営業に関する基礎知識 ・食育計画の作成と活用 ・アレルギー疾患の理解 ・保育所における食事の提供ガイドライン ・保育所におけるアレルギー対応ガイドライン |
⑤保健衛生・安全対策 | ・保健計画の作成と活用 ・事故防止及び健康安全管理 ・保育所における感染症対策ガイドライン ・保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン ・教育保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン |
⑥保護者支援・子育て支援 | ・保護者支援・子育て支援法 ・保護者に対する相談援助 ・地域における子育て支援 ・虐待予防 ・関係機関との連携、地域資源の活用 |
研修を受ける対象者は 保育所等の保育現場で、それぞれの専門分野についてリーダー的な役割を担う保育士や役割を担うことが見込まれる保育士になります。
マネジメント研修
マネジメント研修では次の内容について理解を深めます。
- マネジメントの理解
- リーダーシップ
- 組織目標の設定
- 人材育成
- 働きやすい環境づくり
保育士等キャリアアップ研修では主任保育士の下でミドルリーダーが重要な役割を果たします。
マネジメント研修では、ミドルリーダーは求められる役割と知識を理解し、保育園の円滑な運営をするためのマネジメントスキルの向上を目指すことが目的になります。
保育実践研修
保育実践研修では次の内容についての能力を身につけます。
- 保育における環境構成
- 子どもとの関わり方
- 身体を使った遊び
- 言葉音楽を使った遊び
- 物を使った遊び
保育実践研修では、子どもに対する理解を深め、 保育者が主体的に様々な遊びと環境を通じた保育を行うための能力を身につけます。
保育士キャリアアップ研修制度を受ける3つのメリット
保育士のミドル・リーダー育成や幼児教育や食育などの専門性の向上といった点で保育士キャリアアップ研修が進められています。
さらに研修を受けることで次の3つのメリットがあるので積極的に進め、サポートすることがポイントです。
修了証が発行され転職等にも活用できる
保育士キャリアアップ研修では研修の修了書が発行されます。
研修が修了したことが、都道府県や研修実施機関で管理され正式な研修記録として保管されるのです。
したがって、転職をしたいと考えたときに保育士キャリアアップ研修を受けたという記録を元に、専門性を持っていることをアピールでき、転職活動をスムーズに進めることができるでしょう。
処遇改善のきっかけになる
保育士キャリアアップ研修を受けることで、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーといった上位の役職に上がることができます。
これらの役職になることで副主任保育士、専門リーダーは月額4万円、職務分野別リーダーでは月額5千円の処遇改善が行われるため、昇給による給与の増加がしにくかった保育士にとって大きなメリットと言えるでしょう。
保育に関する専門知識を高められる
保育士キャリアアップ研修では乳児保育・障害児保育などを考慮した専門研修やマネジメント研修、保育実践研修が整備されています。
これらの研修は指定保育士養成施設の教員を講師として研修をおこなうため、保育の実践的な課題や最新のトピックに触れた専門知識を高めることが可能です。
まとめ
昨今の保育の様々な課題に対応したり、若い保育士を指導するリーダー的な役割をしたりするための研修制度が保育士キャリアアップ研修制度です。
本研修を受けることで副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーに繋がり、給与の月額ベースで処遇改善がなされます。
また、保育士キャリアアップ研修制度は、単に処遇改善を図るだけでなく、保育園全体における保育の質を高められるメリットが大きい制度です。
保育士の資質向上のためにも保育士キャリアアップ研修制度について理解し、積極的に活用していきましょう。