児童福祉法では1歳未満児を乳児と定義していますが、多くの保育所では新生児期を経て、2歳頃までを乳児クラスとして扱っているところがほとんどです。
この時期は一生のうちで最も急激に成長する時期といわれており、体や脳、情緒といったあらゆる機能が急速に発達していくのが特徴的です。
この記事では、そんな乳児期に合わせて選びたいおもちゃの特徴3つと保育園で乳児用におもちゃを手作りする際に選びたい素材5つ、乳児におすすめの楽しく遊べる手作りおもちゃ10選についてご紹介します。
乳児にみられる主な成長とは
産まれてから約1か月の新生児期のほとんどは眠ってばかりの赤ちゃんです。
それが2歳にもなると走りだしたり、言葉でのやり取りも頻繁になったり、食事は幼児食へと徐々に移行し、大人とほとんど同じものを食べることができるようになります。
人生の中で急速に発達していく乳児期。そんな乳児期にみられる主な成長にはどのようなものがあるのか、1年ごとにみていきましょう。
0~1歳児にみられる成長
0〜1歳までの間には著しい成長がみられ、この1年の期間で身長は1.5倍、体重は3倍にも増加します。
おっぱいやミルクだけを飲んでいた赤ちゃんが、いつの間にか自分で座ることができるようになり、歯が生え始め、1歳を迎える頃には離乳食にもすっかり慣れていることでしょう。
そんな0〜1歳までの子どもの成長について、全身の動きや手指の動き、言葉や社会性の面に分けてみていきましょう。
◎0~5ケ月頃
全身の動き | ・首がすわる
・寝返りをうつ ・両腕で上半身を支える |
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手指の動き | ・触れたものを握る
・ハンドリガード ・目で見たものをつかむ(目と手の協応) ・つかんだものを口に持っていく、舐める |
言葉や社会性 | ・人の声のする方向を向く
・あやされると手足をばたつかせる、嬉しそうに笑う ・クーイングを経て喃語が始まる |
◎6~9か月頃
全身の動き | ・座る
・ずりばいをする ・お腹に体重を乗せ、方向転換をする ・はいはいが始まる |
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手指の動き | ・おもちゃを振る
・おもちゃを持ち替える(左右の手の協応) ・下の歯が生え始め、何でも口に入れるようになる ・親指、人差し指、中指でおもちゃをつまむ |
言葉や社会性 | ・盛んに喃語を話すようになる
・人見知りが始まる ・子ども同士で見つめあったり、笑いあったりする ・愛着のある人と離れる際に分離不安がみられる |
◎10~12か月頃
全身の動き | ・つかまり立ち
・つたい歩き ・一人で立つ ・音楽に合わせて体を揺らす |
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手指の動き | ・親指と人差し指でおもちゃをつまむ
・なぐり書きをする ・小さなおもちゃを両手に持って打ちつける ・手づかみ食べをする |
言葉や社会性 | ・初語が出てくる
・欲しいものや見つけたものを指さしして教えようとする ・「ダメ」「ちょうだい」がわかるようになる |
1~2歳児にみられる成長
1歳を過ぎると上下の歯も生え揃い、そろそろ離乳食の完了期に差し掛かる頃になります。離乳食3回に加えて、補食としておやつ2回を開始する子も出てきますね。
一人で歩き始める頃ではありますが、まだ歩けないからといって焦る必要はありません。
成長には個人差があるため、一人ひとりに合わせた援助を行っていくことが大切です。
ここでは1歳〜2歳頃までの子どもの成長について、全身の動きや手指の動き、言葉や社会性の面に分けてみていきましょう。
◎1歳~1歳3か月頃
全身の動き | ・リズムに合わせて体を動かす
・バランスを取りながら一人で歩く |
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手指の動き | ・積み木を2~3個積めるようになる
・ペンを上下左右に移動させてなぐり書きをする ・物の出し入れをする |
言葉や社会性 | ・「わんわん」「マンマ」などの一語文を話すようになる
・簡単な大人の真似をするようになる ・大人の簡単な言葉がわかるようになる |
◎1歳4か月~1歳半頃
全身の動き | ・歩行が盛んになる
・リズムに合わせて手や足を動かす ・物を持って歩く ・ボールを投げる、蹴る |
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手指の動き | ・粘土をつまむ、ねじる
・小さなものを指先でつかむ |
言葉や社会性 | ・自分でやってみたいことが増える
・自我が芽生える |
◎1歳半~2歳頃
全身の動き | ・早歩きや小走りするようになる
・しゃがんで遊ぶようになる ・動きが活発になってくる |
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手指の動き | ・グルグルと円を描く
・積み木を3個以上積むことができるようになる ・絵本のページをめくる |
言葉や社会性 | ・見立て遊びができるようになる
・お友達の名前がわかるようになる ・二語文を話すようになる ・お友達とおもちゃの取り合いなどが出てくる |
乳児の成長に合わせて選びたいおもちゃの特徴3つ
子どもの発達を追っていくことで、現在必要な援助や今後の子どもたちの姿の見通しを予測することが可能になっていきます。
保育園で乳児向けに手作りのおもちゃを作る場合には、子どもたちの発達過程と照らし合わせて興味・関心を引くもの、成長を促すものであることが望ましいですね。
乳児の成長に合わせて選びたいおもちゃの特徴は次の3つです。
特徴①シンプルであること
乳児が扱うおもちゃはシンプルであることが望ましいです。
1つのおもちゃに対してたくさんの仕掛けがあったり、何種類も音が鳴ったり、光が色違いで光ったりするおもちゃは子どもの興味を引きますが、乳児にとっては情報量が多すぎて処理することが難しいものです。
1つのおもちゃで1つの遊び方の方が落ち着いてじっくり遊ぶことができるため、乳児期の頃から養いたい集中力の持続や記憶力、神経系統の発達のためにはおすすめです。
動くものを目で追う(追視)、目で見たものを手でつかむ(目と手の協応)といった目と手、匂いや感触を感じるといった五感に働きかけるものなどで、目的がシンプルなおもちゃを用意してあげましょう。
特徴②安全であること
乳児は6か月頃から下の歯が生え始め、何でも口に入れたり舐めまわしたりして「これはなんだろう?」と確認しています。
そのため、保育所にあるおもちゃも誤飲に繋がるような大きさでないもの、消毒ができるもの、壊れたり壊れそうになっていないものといった安心・安全なものであることが前提です。
他にも、「隙間や小さな穴は子どもが指を入れてしまうことが予想できる」、「角があるためにぶつかったり投げたりしたときにケガさせてしまうことが予想される」といったものはあらかじめ取り除いておくか、定期的に確認・補修するようにしましょう。
特徴③成長を促し、興味を引くもの
乳児の成長は早いため、発達に見合ったおもちゃを作るのは難しいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、同じおもちゃでも月齢・年齢によって遊びの目的が変わってくるので繰り返し遊んでも異なる楽しみ方ができるので心配しなくても大丈夫ですよ。
最初は1つのおもちゃをじっくり触ったり、角度を変えてみたり、叩いたりとさまざまな働きかけを行うことで、脳や手をたくさん使って成長を促していきましょう。
慣れてきたら、積み木であれば、2個積む→できるだけ多く積む→縦横に並べてみる→積み木の色や柄をグループ分けしてみる→積み木を何かに見立てて遊ぶといった感じで月齢に合わせて遊び方を変えていくと遊びの幅も広がっていきます。
子どもの成長に合わせた遊び方や言葉がけを行い、子どもが主体的に遊ぶことで脳や指先の機能の成長を促すことができ、好奇心や興味を持つことがまた次の遊びの展開へと繋がっていくことでしょう。
保育園で乳児用おもちゃを手作りする際に選びたい主な素材5つ
保育園で乳児用おもちゃを手作りする場合、身近にある材料を活用したいものですね。
保育園で入手可能なものや各家庭で処理しやすいものであれば協力もお願いしやすく、比較的短期間に必要な材料を揃えることができます。
①牛乳パック
ミルクを卒業した幼児クラスがある保育所であれば、おやつの時間に牛乳を提供しているところが多いのではないでしょうか。
また、各家庭でも飲んでいる場合が多いのでお願いしやすい材料になります。
牛乳パックはそのままの形状を利用したり、カッターやハサミで簡単に切ったりと扱いやすいため、多くの保育園でおもちゃ作りに利用されています。
②フェルト・布
生地のデザインが豊富で、可愛く仕上げるためにはもちろんですが、手触りといった感触や温かみを感じることができるのはフェルトや布の良いところです。
ステンレスや空き缶を使ったおもちゃを作る際にフェルトや布で包めば、金属製の冷たさや硬さを感じることなく遊ぶことができますね。
③ペットボトル
ペットボトルも身近にあり、手に入れやすい材料の一つといえます。
サイズや形の種類もたくさんあるため、手作りおもちゃの大きさに合わせて選べるところもポイントです。
透明であるため、それを生かしたおもちゃ作りにおすすめの材料です。
④ミルク缶
ミルクやフォローアップミルクを飲んでいる乳児がいる家庭に限定されてしまいますが、乳児クラスでは集めやすい材料になります。
近年では箱入りタイプの固形ミルクも販売されていますが、どうしても割高になってしまうため、自宅用で利用されるのはミルク缶が主流です。
とはいえ、飲み干すまでに1〜2か月は掛かることを考慮し、各家庭に持ってきてもらう場合には期限も長めに設定しておくことをおすすめします。
⑤ラップの芯・テープの芯
ラップの芯やトイレットペーパーの芯、セロハンテープの芯、ガムテープの芯なども乳児の手作りおもちゃ作りによく利用される材料ですね。
筒の長さや円形を利用したおもちゃ作りに大活躍してくれます。
こちらも使い終わるまでに時間がかかるものですが、保育所でも利用する機会が多いものばかりですので、すぐに使わないとしてもあらかじめ集めておくと良いでしょう。
各家庭にもってきてもらう場合は、早めにお願いしておきましょう。
乳児におすすめ!楽しく遊べる手作りおもちゃ10選
ここまで、乳児にみられる主な成長や成長に合わせて選びたいおもちゃの特徴3つ、おもちゃを手作りする際に選びたい素材5つをご紹介しました。
乳児期には体全体を使う運動遊びの他、指先や目、五感にたくさん働きかけるようなおもちゃも脳や神経系統の発達を促してくれます。
ここでは子どもが楽しみながら成長を促してくれる手作りおもちゃを10種類ご紹介します。
①モビール
子どもの視力は生後3か月で0.01、1歳で0.2、2歳で0.5前後と言われています。
産まれたばかりの頃には黒・グレー・白の3色しか認識できなかった赤ちゃんも、生後3か月を過ぎる頃にはさまざまな色を認識できるようになります。
モビールを作る場合は、年齢に応じて色や大きさ、形を変えて作ると効果的です。
②ペットボトルガラガラ
ペットボトルで作るガラガラは、中に入れるものや量によって音が変わったり重くなったりと変化をつけることができます。
また、透明になっているため、中に入れたものがどのような動きをしているのかを見ることができるので乳児期にピッタリのおもちゃの一つです。
簡単に作ることができるという点でも、手作りおもちゃとしておすすめですよ。
③ポットン落とし
0〜1歳の子どもが夢中になって繰り返し遊ぶ、ポットン遊びも手作りすることができますよ。
タッパーなどの透明容器なら中で落ちた後にどうなっているのか、複数個落としたらどんな風になるのかも見ることができますね。
落とすものの大きさや形を変えることで月齢に合った難易度に上げていくことも可能です。
④テープ芯コロコロ
ガムテープの芯を使って手作りする乳児向けおもちゃです。手で転がし、目で追って、はいはいや歩いて追いかけるのが楽しい遊びです。
まだはいはいができない子には大人が近くでゆっくり転がしてあげるといいですね。
1歳半頃からは斜面を利用して、スピードをつけながら追いかけたり、お友達とどちらが遠くまで転がすことができるか競っても面白そうです。
⑤ビー玉落とし
ペットボトルを傾けたり、振ったりしながらビー玉を落としていく遊びです。
手首のスナップを利かせたり、両手で持ち替えたり、覗き込んだりと子どもにとっては忙しいながらも集中して遊ぶことができます。
2歳の子どもには段数を増やして、より難しくしてみるのもいいですね。
⑥めくるおもちゃ
指先を使い、フェルトをめくって何がいるのかな?と覗いてみるのが楽しいおもちゃです。
さまざまな柄のフェルトを使うことで「どこから開けようかな?」と選ぶ楽しさがありますね。
画像ではめくる方向を揃えていますが、めくる方向をランダムに配置しても指と手首の動きを連動させる練習になりますよ。
中は月齢が低ければ、ふわふわの布地や段ボールの波々の部分、スポンジやタオル地といった布切れを貼っておくだけでも感触遊びが楽しめます。
月齢・年齢が上がれば、好きな動物やキャラクター、おばけといった子どもたちが好きな人物などを取り入れてみてもいいですね。
⑦ファスナーおもちゃ
100円均一で購入することができるファスナーを使った手作りおもちゃです。
ファスナーを開くと何かが隠れているといったものや、人や動物の口の部分にファスナーをつけて食べ物を入れることができる仕掛けにしても面白いですね。
左右や上下、斜めにファスナーを取り付けて、子どもたちがどの方向に動かせばいいのかを考えるというのもおすすめです。
⑧牛乳パックの囲い
牛乳パックを大量に使ってサークルを作るだけでも子どもたちにとっては楽しいおもちゃになります。
囲いの部分を2段、3段と調整し、子どもがまたげる高さにしましょう。
お風呂屋さんごっこや車に見立てて遊ぶことも可能です。
⑨飲料パックの引き玩具
歩くことが安定してきたら作ってあげたい乳児向け手作りおもちゃです。
腕を振ると、音を鳴らしながらおもちゃにも動きが出るので子どもも大喜び!
子どもが好きな連結した新幹線や動物などにしてみてもいいですね。
⑩洗濯ばさみ
指先にしっかりと力をつける遊びができる洗濯ばさみを使った手作りおもちゃです。
髪の毛や足に見立てるので、「どこにつけたらいいのかな?」と考えながら遊ぶことができます。
遊び始めは洗濯ばさみで指をはさんでしまうこともありますので、保育者は傍で見守りながら洗濯ばさみの「開き方・閉じ方」を説明してあげましょう。
まとめ
今回は、乳児にみられる主な成長やその成長に合わせて選びたいおもちゃの特徴を3つ、保育園で乳児用におもちゃを手作りする際に選びたい主な素材を5つ、乳児におすすめな楽しく遊べる手作りおもちゃ10選についてご紹介しました。
保育園で作る手作りのおもちゃは、子どもの発達段階をよく理解した上で安心・安全なものを選びたいですよね。
園児の人数が多いと手作りするのは大変ですが、発達を促しながらも温もりや手触りの良さも出すことができるのは、毎日子どもたちと接している保育者が作る手作りおもちゃならでは。
作ったおもちゃはそこで終わり!ではなく、保育資料としてクラス職員同士で発達状況の確認や遊んでいる時の様子を伝え合っていけるといいですね。