伝承遊びは、日本で古くから子どもたちに親しまれてきた伝統的な遊びです。保育で伝承遊びを取り入れているところも多いのではないでしょうか。今回は、幼稚園や保育園での保育におすすめの伝承遊びをご紹介します。

乳児クラスで導入しやすいものと、幼児クラスでできる遊びに分けてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

伝承遊びとはどんな遊び?

伝承とは、古くからのしきたりを受け継いでいくことです。つまり伝承遊びは、昔から親しまれている伝統的な遊びを指します。まず、伝承遊びの種類や伝承遊びから学べる事など、伝承遊びの基礎知識について確認しましょう。

伝承遊びの種類

伝承遊びは昔から受け継がれてきた遊びです。しかし、ここ数十年の間にテレビゲームやインターネットなど子どもの遊びが変化したため、20代や30代の保育士の方の中には、伝承遊びがはっきりとイメージできない方もいるのではないでしょうか。伝承遊びには、以下のようなものがあります。

  • 体を使った遊び:おにごっこ、だるまさんがころんだ、ハンカチ落とし など
  • 道具を使った遊び:あやとり、けん玉、おはじき、竹馬 など

集団遊びや室内遊びなど種類の分け方はいろいろありますが、大きく分けると「体を使う遊び」と「道具を使う遊び」の2種類です。一度は遊んだことがある伝承遊びも多いのではないでしょうか。

伝承遊びで学べること

伝承遊びは昔から代々受け継がれてきた遊びです。それほどの魅力のある遊びともいえます。伝承遊びの良さや、伝承遊びから学べることを確認し、保育に活かせるようにしましょう。伝承遊びで学べることの一例は、以下の通りです。

  • コミュニケーション能力を育む

伝承遊びの多くは、友達と協力する必要があったり大人数でなければ楽しめなかったりする遊びが多くなっています。伝承遊びを通して友達と積極的に関わることで、コミュニケーション能力が育まれるでしょう。コミュニケーション能力は、生きていくうえで必要不可欠なものです。遊びの中で自然と身に着けられるのは、大きなメリットとなります。

  • 日本の良さに気付ける

昔の日本人が代々伝えてきた伝統的な遊びが伝承遊びです。古き良き日本の文化や伝統を感じることができます。欧米文化が流入し昔の日本を知らない現代の子どもたちにも、先人たちの知恵や心が伝えられるので、古き良き日本を感じる良い機会となるでしょう。

  • 考える力が身につく

伝承遊びは難しいものが多く、何度も遊んでルールを理解したりどうしたらできるようになるのかを自分なりに考察したりする必要があります。「どうすればよいか」「どうしてこうなるのだろう」などと考えることで、思考力や判断力が身につきます。また、けん玉や駒回しなどは簡単に攻略できなため、何日もかけて練習することも珍しくありません。忍耐力や継続する力も育まれるでしょう。

日本を感じる遊びがオススメ!乳児クラスの保育アイデア5選

乳児クラスでは、まだ複雑なルールのない遊びが適しています。また、体を動かす伝承遊びでは、保育者や友達とコミュニケーションを取れる遊びがオススメです。

お手玉

手のひらサイズの布に小豆を詰めたものがお手玉です。柔らかくて軽いので、乳児でも安心して使用できます。お手玉は、あんたがたどこさの曲に合わせて遊ぶと楽しめるでしょう。ルールと歌詞は以下のようになります。

【ルール】

  • 全員で円を作って座る
  • 歌に合わせて、(「さ」が付くときに)隣の人にお手玉を回す
  • 最後の歌詞に合わせて、自分の頭の上にお手玉を乗せる

【歌詞】
あんあたがたどこさ ひごさ ひごどこさ
ひごどこさ くまもとさ くまもとどこさ さんばさ
せんばやまにはたぬきがおってさ それをりょうしがてっぽうでうってさ
にてさ やいてさ くってさ
それをこのはで ちょいとかぶせ

折り紙

折り紙は海外でも知られる、日本の有名な伝統文化です。指先を使うことで脳が活性化するため、知育にも適していると言われています。2~3歳でも、チューリップやキツネなど簡単なものであれば作成可能です。チューリップの折り方は以下のようになります。

【折り方】

  • 折り紙を三角形に折る
  • さらに半分に折り、線を付けたら一度開き大きな三角形に戻す
  • つけた折り目を目印に、三角形の両端を真ん中に向けて少しだけ折る

かごめかごめ

かごめかごめは数人~大人数で遊べる集団遊びです。ルールが簡単なので、乳児クラスでも楽しめます。ルールと歌詞は以下の通りです。

【ルール】

  • おに役を1人決める
  • おには目をつぶりしゃがむ
  • 他の子は全員手をつなぎ、おにの周りを歌いながら周回する
  • 歌が終わった瞬間に、おには背後の子が誰かを当てる
  • 当たれば、おにの勝ち

【歌詞】
かーごめ かごめ かーごのなーかのとーりーは いーついーつでーあう
よーあーけーのばんに つーると かーめが すーべった うしろのしょうめん だーれ

おしくらまんじゅう

乳児でもできる簡単な伝承遊びです。クラスみんなでコミュニケーションを楽しめるので、保育園や幼稚園でも子どもたちから親しまれています。ルールと掛け声は以下の通りです。

【ルール】

  • 全員が入る位の大きさの円を描く
  • 輪の中に入り、背中合わせで腕を組む
  • 掛け声をかけながらお尻で押し合う
  • 円の外に押し出された人の負け

【掛け声】
おしくらまんじゅう おされてなくな

いっぽんばしこちょこちょ

古くから歌い継がれてきた伝承童謡と呼ばれる遊び歌です。いっぽんばしこちょこちょの歌に合わせて手遊びをします。2人1組や、保育者と子どものペアで遊びましょう。いっぽんばしこちょこちょの歌の歌詞と手遊びのやり方は、以下の通りです。

【歌詞と遊び方】
いっぽんばーし こーちょこちょ(相手の手のひらをくすぐる)
すべって たたいて つねって(腕に指をすべらせる・優しくたたいてつねる)
かいだんのぼって(人差し指と中指を使って腕を下から上に駆け上がる)
こーちょこちょ(相手をくすぐる)

伝承遊びを楽しもう!幼児クラスの保育アイデア10選

幼児クラスでは、思い切り体を動かして遊べるものやルールが難しいもの、練習が必要なもの、道具を自分で作って遊べるものなど、さまざまな伝承遊びを楽しめます。ここでは、幼児クラスにオススメの伝承遊びを10個ご紹介します。

かるた

かるたは、現在でも多くの方に親しまれている遊びです。かるたには絵札と読み札があり、読んだ言葉(文字)に合う絵札を取り、より多くの絵札を取れた人が勝利するといったルールになっています。

年長クラスは難しいルールも分かるようになるので、かるたの代わりに百人一首を導入しても楽しめるでしょう。また、坊主めくりであれば読み手がいなくても、子どもたちだけでも十分に遊べます。

駒回し

駒回しで使用できる駒の種類はたくさんありますが、幼児クラスでは糸を使って回転させる本格的な駒回しやビュンビュン駒などが楽しめるでしょう。

どちらも1回や2回では上手くできません。何度も練習し、1週間~2週間程度かけて少しずつ上達していきます。できるまでに時間がかかりますが、できたときの達成感が大きい遊びです。子どもたちもできるようになるまで、真剣に練習します。忍耐力や集中力を養いたいときにも適しているでしょう。

竹馬

竹馬も伝承遊びの一つです。竹に足をのせる部分を付け、その上に乗っかって歩くのが竹馬の基本ルールとなっています。竹馬はバランスを取るのが難しく、体が発達し筋力がなければ上手に乗りこなせません。竹馬に乗ることで、自然と体幹や平衡感覚を鍛えられるのがメリットです。

幼児でも1人で乗れる子はいますが、慣れないうちはできるだけ保育者がサポートするようにしましょう。何度も挑戦することで、次第に乗りこなせるようになります。

福笑い

福笑いはお正月の遊びとしても有名な伝承遊びです。顔の輪郭と髪が描かれた紙の上に、眉毛・目・鼻・口・耳などの顔のパーツを目隠しした状態で置いていきます。

福笑いをやるうえで、上手にできるかどうかはあまり重要ではありません。面白い顔になって、みんなで笑いあうのも福笑いの良さの一つです。友達に、「もっと右だよ」「そっちじゃないよ」などとアドバイスをもらい、協力しながら進めましょう。クラスを何チームかに分けて、チーム対抗にしても楽しめます。

めんこ

めんこは手先と体を使う遊びです。意外と難しいので、子どもたちも夢中になって遊びます。めんこの遊び方は何通りかありますが、ここではその中から一つをピックアップしてご紹介します。

【ルール】

  • めんこを1人3枚手に持つ
  • そのうち1枚を床に並べる
  • じゃんけんで勝った人から順番に、床に置いてあるめんこに自分の手持ちのめんこを投げつける
  • 友達のめんこをひっくり返すことができたらそのめんこをもらうことができる
  • 手持ちのめんこがなくなった人の負け

凧あげ

凧あげは日本らしい伝承遊びです。凧を自分で作って、凧あげをして、2度楽しめます。風が出やすい冬の時期が凧あげに適しているでしょう。保育中に実践できる、凧あげ用の凧の作り方をご紹介します。

【用意するもの】

  • 画用紙
  • 毛糸
  • 紙テープ
  • マーカーやクレヨン
  • きり
  • セロハンテープ

【凧のつくり方】

  • 画用紙を縦に置き好きな絵を描く
  • 半分に山折りする
  • 紙テープを画用紙の下のほうに2本付ける
  • 画用紙の上から10cmくらいの折り目の所に小さな穴をあける
  • 穴に毛糸を通しセロハンテープで固定する
  • 毛糸の端に持ち手を作る

竹とんぼ

竹とんぼは、奈良時代から日本人に親しまれてきたと言われる伝承遊びです。竹とんぼの持ち手をくるくるとひねると、空に向かって飛んでいきます。誰が一番遠くへ飛んだか、誰の竹とんぼが高く飛ぶかなどを競い合いながら、何度でも試したくなる遊びです。

竹とんぼは市販のものもありますが、保育中に自分で作ることもできます。竹を使用するのは難しいので、ストローと画用紙で代用しましょう。作り方は以下の通りです。

【必要なもの】

  • ストロー
  • 画用紙
  • ホチキス
  • クレヨンやマーカー

【作り方】

  • 画用紙を細長く切る
  • 画用紙に絵を描く
  • 画用紙を半分に折る
  • 折り目とストローをホチキスでとめる
  • 画用紙の両端を外に向かって開く

けん玉

けん玉は有名な伝承遊びです。遊んだことがある方も多いのではないでしょうか。玉を各ブロックに置いたり入れたりするのは簡単ではないので、体が発達し集中力が高まる幼児期にふさわしい遊びといえます。

また、けん玉は既存のものを使わずに、自分で作って遊ぶことも可能です。保育中に制作できるけん玉の作り方は、以下を参考にしてみてください。

【用意するもの】

  • 紙コップ2つ
  • タコ糸か毛糸
  • 新聞紙
  • はさみ
  • マーカー
  • テープ

【作り方】

  • 新聞紙を手の握りこぶしの大きさに丸める
  • 丸めた新聞紙をテープでぐるぐる巻きにする
  • 紙コップ1の底に、糸を付ける
  • 紙コップ1と紙コップ2の底を合わせてテープでとめる
  • 糸の先に丸めた新聞紙を付ける

はないちもんめ

大人数で楽しめる伝承遊びです。はないちもんめの掛け声に合わせて動きながら、お友達を奪い合うゲームとなっています。はないちもんめは比較的ルールが簡単なので、子どもたちだけでも遊べます。ルールと歌詞は以下の通りです。

【ルール】

  • 2チーム作成する
  • チーム同士で手をつなぎ、向かいあう
  • じゃんけんで勝ったチームから歌い始める
  • 歌詞を、組ごと交互に歌いながら前後に歩く※歌のうたい終わりに片足を振り上げる
  • 歌い終わったら各組ごとに相手チームの欲しいメンバーを相談で決める
  • 「〇〇ちゃんが欲しい」「✕✕ちゃんが欲しい」と各チーム欲しい子を披露する
  • 代表者がじゃんけんをして、勝った方に負けチームの子がもらわれていく
  • 同じ組の子がいなくなったら負け

【歌詞】
かってうれしいはないちもんめ
まけてくやしいはないちもんめ
あのこがほしい
あのこじゃわからん
そうだんしましょ
そうしましょ

あぶくたった

あぶくたったの歌詞に合わせてフリを付けて遊び、そのまま鬼ごっこへと発展する伝承遊びです。物語のような歌詞なので、ごっこ遊びをしている感覚で楽しめます。ルールと歌詞は以下の通りです。

【ルール】

  • おにを1人決める
  • おには目をつぶりしゃがむ
  • 他の子はおにの周りに立ち、手をつないで円を描く
  • あーぶくたったの歌のフリに合わせて動く
  • あぶくたったで全員が寝た後、おにだけが起きて「トントントン」と輪の外から声をかける
  • 他の子は「何の音?」と聞く
  • おには「風の音」「時計の音」などと何度か誤魔化す
  • おにが「おばけの音」か「おにがきた音」と言ったら全員逃げる
  • おににタッチされた人と、おにが交代する

【歌詞】
あーぶくたった にえたった にえたかどうだか たべてみよう(おにの周りを回る)
むしゃむしゃむしゃ(おにを食べたふりをする)
まだにえない(顔の前で手を左右に振る・顔を左右に振る)

あーぶくたった にえたった にえたかどうだか たべてみよう(おにの周りを回る)
むしゃむしゃむしゃ(おにを食べたふりをする)
もうにえた(うなずく)

ごはんをたべて はをみがいて おふろにはいって でんきをけして(歌詞に合う動作をする)

おやすみなさーい(全員しゃがんで寝たふりをする)

まとめ

伝承遊びは、日本で古くから子どもたちに親しまれてきた伝統的な遊びです。たくさん種類があるので飽きる心配がありません。また、伝承遊びには「コミュニケーション能力を育む」「考える力が身につく」といったうれしいメリットもあります。

幼稚園や保育園でも、保育中にも伝承遊びを積極的に取り入れていることろは多いのではないでしょうか。これから伝承遊びをしてみようと考えている保育者の方は、今回の記事もぜひ参考にしてみてくださいね。

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