保育では、自然と触れ合う時間が重視されることも多く、自然遊びを取り入れたいと考えている保育士の方も多いのではないでしょうか。
自然遊びを充実した時間にするためには、ねらいや目的を設定し、遊びの計画を立てることが大切です。
そこで今回は、保育で自然遊びを導入するねらいやメリットについて解説します。
また、おすすめの保育アイデアも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
保育に自然遊びを取り入れるねらい
保育に自然遊びを取り入れる際は、ねらいや目標を定める必要があります。
自然遊びに関する知識を深め、子どもの姿に合ったねらいを設定しましょう。
自然遊びのメリット
自然遊びは学びの多い活動のひとつです。自然遊びを通して、以下のような効果・メリットを期待できます。
- 好奇心や探求心が強くなる
- 生命の尊さを知る
- 動植物や環境を大切にしようとする心が育つ
- 情緒が安定し生活リズムが整う
- 運動能力が向上する
- コミュニケーション力が養われる
自然に触れ合うことで、普段の生活の中だけでは気付けないことや学びを深められるのが主なメリットです。
特に生命の尊さを知り、大切にしようとする心が育つのは自然遊びならではの効果といえます。
自然遊びを保育に導入するねらい
自然の中で遊ぶことで、心身が大きく発達するといわれています。
自然遊びによるメリットや効果を十分に活かせるよう、遊びを導入するねらい・目標を明確にしましょう。ねらいの一例は以下の通りです。
- 身近な環境に親しみを感じながら、生き物や自然環境に対する興味関心を深める
- 自然に触れ合う中で、発見や探求することの楽さを知る
- 見る、聞く、触れる、嗅ぐといった感覚の働きを豊かにする
- 動植物に触れ、生命の尊さを知る
- 生活環境や季節の移り変わり、季節の行事に興味を持つ
- 自然遊びを通して、友達とのかかわりを楽しむ
- 自発的に動き考える中で、積極性や主体性を育む
- 土や砂の上で遊ぶ中で、体の動かし方を知り肉体を強化する
こういったねらいを、自身のクラスの子どもの様子に合わせて設定します。1~2つ程度目標を決め、目標に見合った遊びを展開することが大切です。
自然の中でできる!おすすめ遊び5選
自然の中でできる、自然遊びの保育アイデアをご紹介します。公園や河原など自然が豊かな場所で遊ぶ際に取り入れてみてください。
虫の観察
虫を探して観察しましょう。時間をかけてじっくりと観察することで、虫の生体に興味関心が沸き、「どうなっているのだろう」「詳しく知りたい」といったように好奇心・探求心が強くなります。
また、おやまじゃくしやカブトムシの幼虫などを育てるのも方法のひとつです。子どもから大人に成長していく姿を見届ける中で、命の尊さや大切さにも気付けるようになります。
季節見つけ
季節見つけは、園庭や公園などで比較的気軽に取り入れられる自然遊びです。保育者がテーマを設定し、テーマに見合った自然のものを探します。
「夏の虫を一番早く見つけた人の勝ち」「一番大きい葉っぱを見つけた人が優勝」といったように、競争しても楽しめるでしょう。
また、スケッチブックと鉛筆を持って、見つけたものを記録していくのもおすすめです。ただ見つけるだけでなく、細かい部分までしっかりと観察するようになります。
泥団子作り
土と少量の水があれば、どこでも取り入れられる自然遊びです。土や砂と水を混ぜ、泥を握りながら団子を形成しましょう。
泥団子をきれいに作る際は、握るときの力加減をコントロールすることが大切です。力を入れすぎても、弱すぎても、崩れやすくなります。手や腕の力の使い方を学習できるでしょう。
また、室内遊びで触れる「紙」や「プラスチック製品」と、泥や砂とでは触った感覚が異なるため、感覚遊びにも適しています。
くっつき虫付け競争
秋になると、くっつき虫(ひっつき虫)が出てきます。くっつき虫を取ってお互いに投げながら、どれだけ付けられるか競争してみましょう。
くっつき虫と呼ばれている植物は、「センダングサ」「ヤブハギ」「ウマノミツバ」などです。複数の種類があるので、種類ごとに分けて付きやすさや形状などを比べてみても楽しめます。
葉っぱで引っ張り相撲
根元の長い葉っぱを利用して、引っ張り相撲を行うのもおすすめです。根元(茎)の部分をクロスさせて輪を作り、「せーの」の合図で互いに自分の葉っぱを引っ張りましょう。
先に根元が切れた方の負け、最後まできれいに形が残った方の勝ちです。葉っぱの大きさや厚さの違いを観察しながら試していくと、新しい発見に出会えます。
また、一種類の葉っぱだけでなく色々な種類の葉っぱを活用する、木の枝で試すなど、アレンジ方法はさまざまあります。子どもの様子に合わせて遊びを展開しましょう。
自然のものを用いて遊べる保育アイデア7選
自然のものを用いて遊べる保育アイデアを紹介します。保育室でもできる遊びです。
園庭や公園で見つけた自然のものを持ち帰り、上手に活用しながら遊びましょう。
色水遊び
お花や葉っぱを利用してできる色水遊びです。お花を絞るだけできれいな色の水がでてきます。
色水は観察するだけでなく、色水を使って絵を描いても楽しめます。なお、お花は咲いているものを取るのではなく、できるだけ落ちているものを活用しましょう。
【用意するもの】
- お花や葉っぱ
- ジップロック
- プラスチックのコップ
- 麺棒
【遊び方】
- お花を色ごとに分けてジップロックに入れる※空気が入らないようにする
- ジップロックの上から麵棒でお花をすりつぶす
- 出てきた水をコップに入れる
- 色の違いを比較したり色水を使って絵を描いたりする
葉っぱのフロッタージュ
フロッタージュとは、葉っぱの上に紙をおき、葉っぱの上から色鉛筆で擦ることで形を写し取る製作技法です。擦り出しとも呼ばれています。
自然の中で見つけたものを用いてフロッタージュをすれば、いつものお絵描きとは違った楽しさに出会えます。
【用意するもの】
- 落ち葉(お花や砂などでも可)
- 紙(コピー用紙のような薄手のもの)
- 色鉛筆
【遊び方】
- 葉っぱなどをテーブルに置き、その上に紙を乗せる
- 色鉛筆を用いて擦り出しをする
- 余白の部分に好きな絵を描く
どんぐりケーキ
どんぐりや木の実、石、葉っぱなど自然の中で見つけたものを使用してケーキを作りましょう。
見つけられたものが少なければ、紙粘土を使用したカップケーキにするのもおすすめです。
作ったケーキを活用してお店屋さんごっこをしても盛り上がります。
【用意するもの】
- どんぐりや木の実、石、葉っぱなど自然の中で見つけたもの
- 厚紙や段ボール
- ボンド
- 紙粘土
- はさみ
【遊び方】
- 段ボールや厚紙をケーキの形に切る
- ボンドを乗せてその上に自然のものをトッピングする
- 上に段ボールや厚紙を重ねて2段目を作る
- 同じようにボンドとどんぐりや木の実などを乗せていく
- 生クリームに見立てた紙粘土を作り、ボンドでつける
- 作ったケーキの展覧会をしたりお店屋さんごっこをしたりする
スタンプ遊び
野菜や葉っぱ、木の枝、石などでスタンプをして遊びましょう。洗ったり切ったりするところも子どもたちと一緒に進めることで、より興味関心が強くなります。
なお、野菜スタンプは食育の一環としても使用される保育アイデアです。野菜に触れ関心が強まることで、「食べてみたい」「残すのはもったいない」といった気持ちが芽生えると言われています。
【用意するもの】
- 野菜や葉っぱ、木の枝、石など自然の中で見つけたもの
- まな板
- 包丁
- 画用紙
- 絵の具
- お皿
- 水
- マーカーやクレヨン
【遊び方】
- 野菜や葉っぱの泥を落とす
- 必要に応じて切る
- お皿に絵の具を出し、少量の水を加えて混ぜる
- 画用紙を用意する
- 画用紙にスタンプを押していく
- スタンプを乾かす
- 余白に絵を描く
松ぼっくりけん玉
松ぼっくりを使用したけん玉です。作るだけでなく遊んでも楽しめます。危険な工程がなく、子どもだけで作れるのも嬉しいポイントです。
【用意するもの】
- 松ぼっくり
- マーカー
- 紙コップ
- 毛糸
- はさみ
- ホチキス
- ビニールテープ
【遊び方】
- 松ぼっくりに毛糸を巻きつけ、好きな長さで切る
- マーカーで紙コップに好きな柄を描く
- 毛糸の端をコップの内側に入れ、ホチキスで留める
- 紙コップから出たホチキスに、ビニールテープをかぶせてカバーする
- 松ぼっくりを紙コップの中に入れて遊ぶ
どんぐりマラカス
簡単に作って遊べる製作アイデアです。1〜2歳ごろの乳児期の子でも楽しめます。
作ったマラカスを使用して、合奏ごっこをしても盛り上がるでしょう。石のマラカスや木の実のマラカスなど、いくつかマラカスを作って音色の違いを聞き分けて遊ぶのもおすすめです。
【用意するもの】
- どんぐり
- 紙コップ
- マスキングテープ
【遊び方】
- どんぐりを紙コップの中に入れる
- 紙コップをもう1つ用意し、口を合わせるようにして被せる
- 口の部分にマスキングテープを巻いて固定する
- マラカスを振って音を楽しむ
松ぼっくりの首飾り
松ぼっくりをネックレスにして、おしゃれを楽しみましょう。
ネックレスに似合う服やアクセサリーを廃材で製作して、ファッションショーを開催するのもおすすめです。子どもたちの個性や表現力も伸ばせます。
【用意するもの】
- 松ぼっくり
- 毛糸
- はさみ
- ビーズ
- ストロー
【遊び方】
- 毛糸を適度な長さに切る
- 毛糸の真ん中で松ぼっくりを結びつける
- ストローを1~2cmの長さに切る
- ストローやビーズを毛糸に通す
- 毛糸の端を結ぶ
- 自分の作品を首にかけてファッションショーをする
自然遊びを保育に導入する際の注意点
自然遊びを行う際は、注意したいポイントがあります。注意点を事前に確認し、子どもたちの活動環境をしっかりと整えましょう。
危険のないよう配慮にする
自然遊びを行う際は、危険のないように配慮する必要があります。
例えば、公園や河原に行く際は事前に下見を行い、道路の歩き方を想定したり、現地で遊ぶ範囲の設定をしたりしながら準備を進めましょう。
また、保育園で自然のものを用いた製作遊びをする際は、「危ない工程は保育者が行う」「植物のトゲに気を付けること、動物や昆虫に噛まれないようにすることなどを子どもたちに話をしておく」といったサポートも重要です。
予防的に対策を施し、トラブルが起こるリスクを削減しましょう。
事前にルールを決め説明しておく
自然遊びを行う直前にルールを説明しても、なかなか子どもたちの耳には届きません。
「早く遊びたい」という気持ちや好奇心が勝るため、集中できる状況を作れないのが現状です。
自然遊びを導入する際は、1週間前~前日までに、詳しいルールを説明しておきましょう。
「どこで、何をするのか」「どのようなことはOKで、何がNGなのか」はっきりと伝えることが大切です。節度を守って遊ぶことで、自然遊びの時間を充実したものにできます。
子どもたちの興味関心を引き付ける
自然遊びが好きな子もいれば、苦手な子もいます。できるだけ全員が楽しく、自発的に活動できるよう準備を進めましょう。
自発的な遊びを促すためには、興味関心を引き付ける必要があります。
自然に関する絵本を読んだり、歌を歌ったり、面白い話をしたりしながら、少しずつ生活の中に取り入れていきましょう。
言われるからやるのではなく、子どもが自ら主体的に遊ぶことによって学びが深まります。
まとめ
自然遊びを保育に導入する際は、ねらいを定め目的に即した指導計画を立てることが大切です。
自然遊びでは、「生き物や自然環境に対する興味関心を深める」「発見や探求することの楽しさを知る」「生活環境や季節の移り変わり、季節の行事に興味を持つ」といったねらいが想定できます。
自然に触れられる保育アイデアを12個ご紹介した今回の記事もぜひ参考にしてみてください。