日本には子どもの遊びとして、昔から伝わる伝承遊びがたくさんあります。

今回はその中から、歌とジェスチャー、さらに鬼ごっこの要素が組み合わさった遊びである「あぶくたった」について詳しくご紹介します。

また、「あぶくたった」の3つのねらいや年齢に合わせた楽しむための工夫についてもご紹介していますので、子どもの発達段階に合わせて難易度を上げていってみてはいかがでしょうか。

「あぶくたった」とはどんな遊び?

小さい頃は「♪あぶくたった煮え立った 煮え立った〜」の歌い出しから始まる「あぶくたった」で遊んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。

「あぶくたった」は、鬼を囲んで手をつないだ子どもたちが歌いながら周囲を回るという「かごめかごめ」に似た動きからスタートします。

二度、三度と遊びが展開していくので飽きずに何度でも楽しめますよ。その他の特徴もみていきましょう。

道具いらずで繰り返し遊ぶことができる

「あぶくたった」は道具が一切いらず、いつでも始めることができる遊びです。

複数の子ども達と広い場所さえあれば、いつでもどこでも何度でも楽しむことができます。

2〜3人といった少人数だと鬼を囲んで回るという動作が難しいかもしれませんが、5人以上いると連帯感が伴って楽しく盛り上がることができるでしょう。

ストーリー性が楽しめる

「あぶくたった」には歌詞が付いており、何かを煮込んでいるシーンから始まります。

煮物が煮えたら戸棚にしまう、歯磨きをして眠る準備を始めるなど、ストーリー性をもった内容になっています。

その後、物音に何度か目覚めて・・・とドキドキの展開が待っているのです。

歌が進むにつれて、子ども達の期待感が膨らんでいくという作りになっているのも「あぶくたった」の特徴の一つです。

歌に合わせたジェスチャー+鬼ごっこ

「あぶくたった」には歌詞に合わせてそれを表す動作が伴います。

最初はみんなで手をつないで歌いながら鬼を囲んで歩き、次に、子ども達も毎日の習慣として行っている歯磨きやお風呂、眠るといったジェスチャーを行います。

歌に合わせてみんなが同じような動きで表現するので、おゆうぎに近い印象もあります。

最後は、鬼の一言をきっかけに子ども達がそれぞれ思い思いの方向に逃げて行き、鬼がそれを追いかける「鬼ごっこ」が始まります。

このように、穏やかな歌遊びから走り回る鬼ごっこへと展開していく「あぶくたった」は、子ども達が楽しくなる要素がたくさん詰まっている遊びだといえますね。

「あぶくたった」の3つのねらいとは?

「あぶくたった」をして遊ぶことで期待できる子どもの姿にはどのようなものがあるのでしょうか。

子ども達に身につけて欲しいことをイメージしながら「ねらい」について考えてみましょう。

ルールを覚え、それを守りながら友達と一緒に楽しむ

「あぶくたった」には流れがあるため、それぞれがやりたいように歌ったり動いたりということができません。

ルールに則り、それをみんなが守ることでお互いに楽しく遊ぶことができます。

「何の音?」に対する答えを決めておいたり、逃げる範囲はどのくらいにするのか話し合ったりと自主的に参加しようとすることで、より楽しさを共有できるでしょう。

歌詞から昔の人の生活に興味を持つ

「あぶくたった」の歌を何となく耳で覚えたという方も多いかもしれませんが、歌詞をよく読んでみるといろんなことに気づくかもしれません。

「あぶくって何?」「戸棚ってカギがあるの?」といった疑問など、さまざまな気づきから共感することもあるでしょう。

「そもそも何を煮込んでいるんだろう?」と疑問が残る部分もあり、「豆かなぁ?」「カレーかも!」といった会話を楽しんでみるのもいいですね。

昔の人の生活を想像することで、おじいちゃんおばあちゃんが子どものころはどのような暮らしだったかと興味が湧くと同時に、親近感を持つキッカケにもなるでしょう。

協調性を養う

手をつないで回るにしても、歌うスピードにしても、みんなと声を合わせたり動きを合わせたりしなければいけません。

そのため、お互いに「せーの」と掛け声をかけたり、表情や動きを読み取って合わせたりする必要が出てきます。

鬼ごっこをする際にも足が遅い子ばかりを狙うのではなく、まだ捕まっていない子を追いかけたりハンディをつけたりすることで相手に対する思いやりの心が育ちます。

みんなで楽しく遊ぶためには、自分のことだけを考えず、みんなが楽しめるようにするにはどうしたら良いかを考えて行動するという経験を重ねることで協調性が養われていくでしょう。

「あぶくたった」の遊び方

まずは鬼役の子どもを決めるところからスタートします。

じゃんけんで決めることが多いのですが、人数が多い場合には小グループ分けしてじゃんけんをし、最後にそれぞれのグループから負けた子を集めて、再度じゃんけんで決めるといった方法もあります。

年齢が上がるにつれて鬼ごっこで走り回る範囲が広くなるため、室内よりは戸外で行う方がよりのびのびと遊ぶことができるでしょう。

「あぶくたった」の歌詞

「おぶくたった」の歌詞は、地域によって多少異なる部分もあるようですが、一般的に知られている歌詞をご紹介します。

(鬼以外の子ども達が歌う)
あぶくたった 煮え立った
煮えたかどうだか食べてみよう
ムシャムシャムシャ まだ煮えない (最初からここまでを数回くりかえす)あぶくたった 煮え立った
煮えたかどうだか食べてみよう
ムシャムシャムシャ もう煮えた

戸棚に入れて 鍵かけて ガチャガチャガチャ
お風呂に入って ゴシゴシゴシ
お布団敷いて さあ寝ましょ
(鬼)トントントン
(子ども達)何の音?
(鬼)時計の音(自由に答える)
(子ども達)あ~良かった(鬼)トントントン
(子ども達)何の音?
(鬼)隙間風が吹いた音
(子ども達)あ~良かった     (このようなやり取りを数回くりかえす)

(鬼)トントントン
(子ども達)何の音?
(鬼)おばけの音〜!

子ども達は逃げて、鬼ごっこが始まる
鬼にタッチされた子が次の鬼になる

もちろん、自分たちで「鬼が来た音」や「なまはげが来た音」のように、逃げたくなるようなワードに変更して遊んでも楽しめるでしょう。

「あぶくたった」の遊び方

次に、「あぶくたった」の遊び方について説明していきます。
歌の部分にジェスチャーが加わります。

①鬼を決める
②鬼は手で顔を覆い、しゃがむ。その他の子どもは鬼を囲みながら立ったまま円になり、手をつなぐ
③鬼以外の子どもは「あぶくたった」の歌を歌いながら鬼の周りを歩く
④「ムシャムシャムシャ まだ煮えない」の部分で立ち止まり、食べる仕草、首や手を振って「まだ」のジェスチャーをする(③~④を数回くりかえす)
⑤「もう煮えた」でつないでいた手を離す
⑥「さぁ寝ましょ」までをジェスチャーし、眠るポーズをとる
⑦鬼は立ち上がる
A 鬼:「トントントン」
B 他の子ども:「何の音?」(耳に手を添えて音を聞くポーズ)
C 鬼:「風の音」
D 他の子ども:「あーよかった」(また眠るポーズに戻る)
A~Dの会話を数回くりかえす
(「時計の音」「ママがトイレに行った音」など自由に答える)

⑧鬼が「おばけの音!」と言って立ち上がったら、他の子も立ち上がって一斉に逃げる。鬼につかまった人が次の鬼となる。

①~⑧をくりかえす

「あぶくたった」を楽しむための年齢に合わせた工夫とは?

基本的なルールを覚え、何度も繰り返していると飽きてくる場合があります。

年齢に応じて遊びを工夫することで、難易度を上げたり新鮮な気持ちで遊んだりすることができるでしょう。

年齢や人数に合わせて逃げる距離や鬼の人数を変える

年齢が上がるにつれ、走るスピードが早くなってきます。

その場合は、逃げる範囲を広げたり、人数が多ければ鬼を2人に増やしたりとルールを変更するのも良いでしょう。

あまりに広範囲で行うとバテてしまうので、子どもの体力に見合った範囲を考慮することも大切です。無理のない範囲で行いましょう。

歌詞を変える

「あぶくたった」の歌詞を現代風に変えてみるのも面白いですね。

煮物を戸棚に入れた後は、お風呂に入ったりお布団に入ったりする歌詞が続きます。

この部分を「歯を磨きましょ シャカシャカシャカ」や「目覚ましかけましょ クルクルクル」といった感じです。

「お布団敷いて さあ寝ましょ」の部分も「ベッドに入って さあ寝ましょ」、「お人形と一緒に さあ寝ましょ」といったように変えても面白いですよ。

コツは文字数が同程度となるような言葉に置き換えてみることです。

逃げる時の動きに制限を設ける

鬼に追いかけられた子どもは必死になって走り回ります。しかし、中には走るのが苦手という子どももいるかもしれません。

いつも足の遅い子がターゲットになってしまわないように、円を描いておき、その中に入れば鬼は見えなくなる(タッチできない)といったように逃げ場を作っておくのも良いですね。

また、「高オニ」のように地面より高い場所は鬼が触れないというルールにしても良いかもしれません。

この場合、安全な円の周りでしか動かない(鬼が近づくと円に入ってしまう)、円に入った子どもがずっと中から出ないというのを防ぐために、「安全地帯にいられるのは5秒まで」「1人につき2回まで」といったルールを決めておくと良いでしょう。

ジェスチャーに触れ合いを加える

「煮えたかどうだか食べてみよう ムシャムシャムシャ」の部分は、食べる真似をするところですが、この部分に触れ合いを加えてみるのも面白いですよ。

鬼は顔を隠しながらひたすらジッとしているだけですので、なかなか退屈です。

そこで、「ムシャムシャムシャ」の部分では周りの子どもたちが鬼の髪の毛をクシャクシャにしてみたり、体をくすぐってみても楽しいかもしれません。

この場合、胸元やお尻などのデリケート部分には触れてはいけないことが条件です。

また、眼鏡をかけている子やケガをしている場合など、配慮が必要な子がいれば保育者は必要な対策について考えておくことも忘れないように注意しましょう。

まとめ

日本に昔から伝わる伝承遊びの中から「あぶくたった」をご紹介しました。

子どもの頃によく遊んだな〜と記憶している方もいるかもしれませんが、大人になって保育の視点から見てみると、なかなか複雑でよくできた遊びだと気づくことも多いのではないでしょうか。

「あぶくたった」の歌詞や遊び方の他、3つのねらいや年齢に合わせた遊び方の工夫についてもご紹介しましたので、これから保育に取り入れる際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

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