年賀状遊びは、文字の読み書きを覚える際にも、友達との交流を深めるのにも適した遊びです。また、日本ならではの文化も体験できます。「保育にお正月遊びを取り入れたい」「年賀状遊びをしたい」と考えている保育士の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、保育園で年賀状遊びをする際の進め方や製作アイデアを紹介します。お正月遊びの保育アイデアを増やし、寒い時期の室内遊びを楽しみましょう。
保育園で年賀状遊びを展開しよう
保育園で年賀状遊びをする際は、まず、年賀状の意味や役割について分かりやすく伝えましょう。活動に対する理解が深まります。
年賀状の意味や役割
年賀状とは、新年を祝う挨拶状のことです。「年賀」という言葉にも「新しい年を祝う」という意味があります。年賀状では、「あけましておめでとうございます」「謹賀新年」などといった挨拶と、年賀状を送る相手への気持ちを書き綴ります。
年賀状のはじまりは、奈良時代や平安時代と言われており、1,000年以上続く日本の伝統行事です。かつては、目上の方や親戚、お世話になった方の家まで訪問する「挨拶回り」の習慣がありました。しかし、近代に向かうにつれて挨拶回りが難しくなり、年賀状を送るようになったといわれています。
子どもに年賀状の意味を説明する方法
最近は携帯電話が普及したことで、年賀状を送る方も減少傾向にあります。年賀状を知らない子もいるかもしれません。年賀状遊びを行う際は、導入としてクラスの子どもたちに年賀状の意味や役割について解説しましょう。分かりやすい説明の仕方として、以下を参考にしてみてください。
伝え方2:「ずっと昔から続いてきた日本の伝統行事だよ。昔は、ひとり一人の家を回っていたけれど、たくさん回るのが大変だからお手紙を出すことになったんだって。今では、メールや電話でお祝いする人も増えているよ。」
保育園で年賀状ごっこをするメリット
お正月遊びはたくさんありますが、その中でも年賀状ごっこは人気の高い遊びのひとつです。年賀状遊びを取り入れるメリットは主に3つあります。
友達とのコミュニケーションになる
同じクラスや同じ保育園の「全員」と年賀状をやり取りすることはほとんどありません。特に仲の良い友達や関りの深い子、先生などを選んで年賀状を送ることになります。
「年賀状をくれてありがとう」「年賀状のイラストが可愛かった」などど、年賀状を送り合った友達と話をする中で、コミュニケーション能力が育まれます。また、人間関係が苦手な子にとっても、友達と関わる良いきっかけとなるでしょう。
文字や数字を覚えられる
年賀状の表には挨拶文を、裏には郵便番号や住所などを記載します。そのため、文字や数字に興味関心が強まる時期の保育にピッタリです。年賀状遊びをきっかけに、「自分も文字を覚えたい」「書けるようになりたい」と感じる子が増えるでしょう。
また、年長児では、すでにある程度文字を書ける子も多く、就学を控え学習に対する意欲が高まります。年賀状の役割や、友達と年賀状をやり取りする面白さも自然と実感できるでしょう。
身の回りのことに興味関心を持てる
年賀状による交流は、日本ならではの伝統行事です。しかし、通常の生活の中では、年賀状は保護者が用意することが多く、存在すら知らないという子もいるでしょう。年賀状遊びをすることで、自分の知らなかったことでも、大切な意味や役割を持つ慣習・行事もあるということに気付くきっかけとなります。
また、この体験を通して、生活の中で何気なく行われている行動や身の回りの物事にも、今まで以上に大きな好奇心を抱くようになります。
保育園で楽しむ年賀状遊びのやり方
保育園で年賀状遊びを導入する際の遊び方を紹介します。準備方法と遊び方をそれぞれ手順ごとに解説するので参考にしてみてください。
準備
まずは、年賀状遊びをはじめるための準備方法を紹介します。
1.ポストを作る
年賀状を入れるためのポストを作成します。作り方は以下の通りです。
【用意するもの】
- 段ボール
- カッター
- 定規
- 鉛筆
- 画用紙
- はさみ
- のり
- マスキングテープ
【作り方】
- 段ボールのサイズに合わせて、画用紙に線を引く
- 線に沿って、画用紙を切る
- 画用紙を段ボールに貼り付ける
- 投函口とはがきの取り出し口を作る
- 白いマスキングテープで郵便マークを付けたら完成
なお、年賀状を受け取るための郵便受けも用意すると、さらに本格的な年賀状遊びを楽しめます。
2.郵便かばんを作る
次に作るのは、郵便屋さんが年賀状を配る際に使用するかばんです。作り方は以下のようになります。
【用意するもの】
- 牛乳パックやお菓子の箱
- ヒモ
- 穴あけパンチ
- 赤いガムテープ
【作り方】
- 牛乳パックやお菓子の箱の上部を切り取る
- 側面に赤いガムテープを貼る
- 左右の面の上部に穴あけパンチで穴を開ける
- 穴にヒモを通して完成
また、ごっこ遊びをより楽しみたいときは、郵便屋さんが使用するハンコ(消印)や、はがきに貼り付ける切手なども合わせて作成しましょう。
3.年賀はがきを作る
年賀はがきは、差し出す人が相手の人数分作成します。ただし、作るのが大変なときは、最初の1枚のみ自身で作成し、2枚目以降は保育者が作ったはがきを使用すると良いでしょう。
年賀状では、お正月にちなんだイラストや干支などが記載されたはがきを使用するのが一般的です。保育で年賀状遊びを行う際も、文字だけのはがきではなく、お正月のイラストを記載したはがきを使用します。
遊び方と手順
年賀状遊びをはじめる際の手順と具体的な方法を紹介します。以下を参考にしながら、担当クラスの年齢や子どもたちの様子に合わせて内容をアレンジしてみてください。
1.クラスの郵便番号や住所を決める
年賀状は、住所や郵便番号を正確に記載しなければ届きません。そのため、まずはクラスの郵便番号や住所を決めましょう。例えば、年長児クラスのアヒル組だとすると「〒123-4567 〇〇ほいくえんけん あひるぐみし1-1」などです。特別な決まりやルールはないため、子どもたちの覚えやすいもので構いません。
また、決めた住所と郵便番号は、書き出して保育室に貼り出しましょう。子どもたちが年賀状を記載する際に確認しやすくなります。
2.年賀状を書く
年賀状を作成し、文章を書きます。「明けましておめでとうございます」「謹賀新年」「迎春」などの新年の挨拶について、種類や書き方を事前に話しておくとスムーズです。
また、新年のあいさつ以外にも、「今年もよろしくお願いします」や「また遊ぼうね」「いつもありがとう」など送り主伝えたいことも記載します。最後に、年賀状が完成したらポストに投函しましょう。
3.郵便屋さんを決める・配達する
郵便屋さんは、「毎日1人ずつ交代をする」「当番が郵便屋さんも行う」など子どもたちとの話し合いで決めます。できるだけ全員が郵便屋さんを体験できるよう配慮しましょう。郵便屋さんが決まったら、ポストを開けて年賀状を各クラスの郵便受けに配布します。
また、郵便屋さんの仕事は、年賀状の配達だけではありません。決まった時間にポストを確認し、消印スタンプを押し、住所ごとにはがきを分けて届けやすくするのも郵便屋さんの仕事です。このようなごっこ遊びをとおして、時間やルールを守ることの大切さも学習できます。職業への興味関心も強まるでしょう。
4.返事を書く
年賀状を送っていない人から年賀状が届いたら、返事を書きます。返事が遅くなると相手が心配になること、できるだけ早く返事を書くことを伝えましょう。
返事用の年賀はがきは新たに作成するか、2枚目以降のはがきは保育者の作成したものにするかも、事前に決めておくことが大切です。年賀状遊びが実際に始まってから慌てることのないよう、入念に準備を進める必要があります。
年賀状の製作アイデア・技法10選
年賀状の作成アイデアや活用できる技法を10個紹介します。既製品のはがきではなく、自分で製作したはがきを使用することで、年賀状遊びがより楽しくなります。ぜひ、参考にしてみてください。
獅子舞
獅子舞は、邪気払いの意味を持つ縁起物です。お正月の製作や年賀はがきのイラストとして使用されることもあります。
獅子舞の作り方はさまざまありますが、画用紙を獅子舞の形に切り、体部分に白い模様を描いたり顔を描いたりする方法が主流です。また、「体の部分を手形スタンプにする」「書初めにちなんで墨を使って顔を描く」といった方法も活用できます。
だるま
だるまは、家内安全や無病息災を願う縁起のよいものと言われており、お正月飾りとしても有名です。丸く可愛らしい見た目から、子どもたちも親しみをもって製作する姿が見られます。
年賀状にだるまを記載する際は、赤い画用紙をだるまの形に切り、白い小さめの丸の画用紙を上部に貼り付けます。そこに、顔を描いたり、体の部分に模様を描いたりして完成です。ちぎり絵や指スタンプの技法を使用することもあります。
羽子板
羽子板は、お正月遊びで使用する道具です。羽子板には、お正月を迎える女の子が健やかに育つようにという意味が込められています。
年賀状に羽子板を描くのもよいでしょう。画用紙に吹き絵で模様を付け、羽子板の形に切りはがきに貼り付けるだけで完成です。羽根や遊んでいる子を近くに描くと、より素敵な年賀状に仕上がります。
門松
門松は、お正月に家の前に置く正月飾りです。年神様が迷わず家に入って来られるようにするための目印であるといわれています。
実際の門松には竹を使用しているため、製作遊びで門松を作る際はトイレットペーパーの芯や段ボールなどを使用して立体的なデザインすることが多いでしょう。しかし、年賀状の場合は平面で、なおかつポストに入るサイズに収める必要があります。
年賀状に門松を使用する際は、折り紙がおすすめです。折り紙で門松を作り、年賀状に貼り付けましょう。折り方は、以下の通りです。
【折り方】
- 折り紙を2回三角形に折り線を付ける
- 開いて、上下の角を中心の点に合うように折る
- 上下の辺を真ん中の線に合わせて折り、一度開く
- 上下の角を、一番手前の折り線に合わせて折る
- 下の辺を、上から2本目の折り線に合わせて折る
- 下の辺を開き、ジャバラになるように真ん中の線に合わせて折る
- 上の辺も下と同じ形になるように折る
- 縦に向きを変え、下の方を内側に隠すように折り畳んで完成
弾き絵
弾き絵とは、クレヨンで線や模様を描き、その上から絵の具で色をつける技法です。絵の具がクレヨンを弾くことで、きれいな模様になります。
弾き絵を使用して、正月飾りの獅子舞や、未(ひつじ)などの干支を描いてみましょう。特に、未は白いクレヨンで体を描くため、見えなかった線が絵具によって浮かび上がるという不思議な感覚を楽しめます。
ちぎり絵
ちぎり絵は、折り紙や画用紙をちぎってのりで貼りながら、模様や絵を完成させる技法です。ちぎり絵は何にでも応用できます。
例えば、縁起の良い初夢で知られる「富士山」や、しましまの模様が可愛い寅(トラ)などがおすすめです。折り紙を貼る面積が多い絵柄の方が、ちぎり絵の繊細さがよく見えて、味わいのある作品に仕上がります。
デカルコマニー
デカルコマニーとは、フランス語で「転写」という意味があります。画用紙に絵の具をつけ、画用紙を折りたたむことで左右対称の色を付けるという技法です。
年賀状では、だるまや丑(うし)のイラストにデカルコマニーを使用できます。ただし、はがきを折るのは避けましょう。画用紙でデカルコマニーを行い、切り取ってはがきに貼り付けます。
にじみ絵
にじみ絵は、画用紙やはがきに少量の絵具と水を垂らし、にじませながら色をつけるという技法です。比較的簡単にできて、なおかつカラフルな可愛いデザインに仕上げられるため、年賀状に適した技法といえます。
「年賀はがき自体ににじみ絵を施す」「画用紙を使ってにじみ絵で作った作品を貼り付ける」という2つのパターンから選択できます。
タンポ
タンポは、ガーゼや布に綿を詰めて丸め、絵の具を使ってスタンプのように色を付けるという技法です。タンポの技法を使用すると、淡くて優しい色合いに仕上がります。
年賀状のデザインでは、亥(イノシシ)や午(うま)、戌(いぬ)、だるまなどに適用できます。色を付ける面積が広く、一色で仕上がるためタンポに最適です。
手形スタンプ
手形スタンプは、手のひらに絵の具を付け画用紙やはがきにスタンプをすることで、色を付ける技法です。手形スタンプも幅広い絵柄に使用できます。獅子舞や虎、牛、馬などの体を手形スタンプで表現してみましょう。
また、指スタンプや足スタンプも保育で活用される技法のひとつです。特に指スタンプの場合、細かい絵柄も描けるため年賀状遊びに適しています。巳(へび)や子(ねずみ)のしっぽ、寅(トラ)の模様なども簡単に描くことができます。
保育園で年賀状遊びをする際の注意点
保育園での年賀状遊びは、「文字や数字に興味関心を引きつけられる」「友達とのコミュニケーションのきっかけになる」といった複数のメリットがあります。ただし、以下の点には注意が必要です。
- もらえない子が出ないよう配慮する
- 乳児が口に入れないよう見守る
- 年賀状の持ち帰り方法をあらかじめ決めておく など
年賀状は複数回出せるような制度にする、あるいは、年賀状をもらったら必ず返事を書くといったルールを設けるなどして、もらえない子が発生しないよう配慮しましょう。
また、「家に持ち帰ってよいのか」「保育園で破棄するのか」「作品展などで飾るのか」といったように、遊びを終えた後のことも事前に決めておく必要があります。クラス数が多い園の場合は、「隣のクラスは持ち帰っているのにうちだけもらっていない」といったことにならないよう、全クラスで方針を統一しましょう。
なお、年賀はがきは紙でできています。乳児クラスで年賀状遊びを取り入れる際は、誤って口に入れることがないよう、しっかりと見守ることが大切です。
まとめ
年賀状遊びには、「製作遊び」「ごっこ遊び」といった複数の楽しみが詰まっています。友達とのコミュニケーションを活性化させるきっかけにもなるでしょう。保育に導入したいと考えている方は、準備方法や遊び方、年賀はがきの製作アイデアを記載した今回の記事もぜひ参考にしてみてください。