現在の保育業界は、深刻な保育士不足に陥っている保育園が数多くあります。一方で、長く保育園を運営し続けるには、十分な保育士の確保が必要でしょう。そこで、ポイントとなるのが「保育士の中途採用」です。
以下は厚生労働省が発表している保育士の登録者数と実際に保育園などの施設に従事している保育士の数をグラフに表したものになります。
上記のグラフからもわかるように、年々保育士資格は持っているにも関わらず、保育園などの施設に就職しない人が増えてきているのです。つまり、深刻な保育士不足は、保育士資格を持っていながら保育園で働いていない潜在保育士を中途採用することがポイントになるでしょう。
この記事では、保育士を中途採用するための具体的な手法から注意点まで詳しく解説していきます。
1.保育士が就職したくてもしにくい状況にある
前述したように保育士資格を持っている方は、登録者だけでも令和元年度時点で160万人ほどいます。しかし、実際は60万人ほどの保育士しか保育園等で勤務していません。
このような状況になっている主な原因は、以下のとおりです。
上記のグラフは、「保育士として就業を希望しない理由」として厚生労働省が調査したもので、再就職しない理由として最も多かったのが「就業時間が希望と合わない」でした。
とくにもともと保育園に勤務していた保育士が退職した場合、結婚や出産など生活が大きく変わることが多いです。そのため、従来と同じような働き方はできなくなり、結果的に保育園側が提示した勤務時間に対応できず、別の業種へ就職する形になっています。
つまり、潜在保育士も含めると保育士自体の人数はまだまだいますが、雇う側も保育士が求めている希望などを組み込んだ求人を出す必要があるでしょう。
1-1.中途採用するには保育士のニーズを汲み取る必要がある
先ほども述べたようにもともと保育士だった人を保育園に再就職させるには、希望に合った条件を提示しなければなりません。また、保育士として勤務していた人が保育園に再就職するときに希望する上位の条件は、以下の3つです。
- 通勤時間
- 勤務日数
- 勤務時間
このように中途採用を希望する保育士は、必ずしも高い給与であることよりも通勤時間や勤務日数など「働き方」を重視する傾向があります。したがって、中途採用するにあたってどのような保育士を積極的に採用したいのかをあらかじめ決めておくと良いでしょう。その上で、保育士が求めている条件を汲み取ってあげることが重要です。
参考:保育を取り巻く状況について|厚生労働省
2.保育士を中途採用するための具体的な手法3選
ここからは保育士を中途採用するための具体的な方法を3つ紹介します。いずれの方法も特徴が異なるため、闇雲にすべての手法を試すのではなく、どのような保育士を採用したいかという点もあらかじめ考えておく必要があることを忘れないでください。
2-1.保育士専門の求人サイトを利用する
1つめは、保育士専門の求人サイトを利用することです。一般的な求人サイトの場合、さまざまな職種が掲載されているため、必ずしも保育士資格を取得している保育士を採用できるとは限りません。
しかし、保育士専門の求人サイトに求人を掲載できれば、利用者がすべて保育士のため、効率よく中途採用ができるようになります。ただ、他の保育園の求人と比べられやすくなるため、掲載する求人の内容は園長や採用担当者同士で十分話し合ったうえで決めるようにしましょう。
2-2.ハローワークと連携して求人を掲載する
2つめは、ハローワークに求人を掲載する方法です。大手求人サイトなどはスマートフォンアプリで応募できるシステムが普及していますが、地元での就職を希望している場合などはハローワークを利用する方も多いです。
そのため、保育園の周辺地域にあるハローワークに求人を掲載してもらえれば、地元を中心に中途採用できるようになるでしょう。また、ハローワークは求人掲載条件をクリアできていれば、無料で求人を掲載できるため、中途採用の採用コストを最小限にしたいと考えている方にとってもおすすめの手法です。
ちなみにハローワークにおける求人の掲載条件については、「求人申込み、採用・選考に当たっての留意事項 ~ハローワークからのお願い」から確認できます。
2-3.各自治体の就職支援事業と連携を取る
3つめは、各自治体で実施されている就職支援事業と連携を取ることです。ハローワークとは別に就職または再就職の支援を各自治体ごとに行っていることがあります。これらの支援事業と連携できれば、おすすめの就職先として紹介してもらえる可能性が高まるでしょう。
例えば、東京都の場合は「東京しごとセンター」という機関が、求職者に向けてセミナーや企業説明会を開催しています。このような機関をうまく連携が取れれば、働くことに対して意欲のある保育士を中途採用できる可能性が高いです。
また、連携の仕方も問い合わせをして、会社概要やハローワークなどの求人票サンプルを持参するだけなので、そこまで難しい手続きは必要ありません。ただ、各自治体によって就職支援事業を行っている機関が異なるため、まずは問い合わせてみることをおすすめします。
2-4.保育専門学校に求人票を出す
4つめは、保育専門学校に求人票を出す方法です。先ほど紹介した、保育士専門の求人サイトに求人を掲載する方法と似ており、保育の専門学校に求人票を出すことで確実に保育士資格を取得している保育士を採用できます。
したがって、周辺地域に専門学校の有無を確認し、求人票が出せるかどうかを問い合わせてみると良いでしょう。また、専門学校と連携が取れると保育実習先の保育園としても登録できる可能性があるため、中途採用だけでなく新卒採用も視野に入れているのであれば、とてもおすすめな手法です。
3.保育士を中途採用するときの注意点
冒頭でも述べたように現在は、保育士資格を持っていながらも保育園に就職しない保育士が多いです。したがって、とくに何も戦略を練らずに求人を掲載しても効率よく採用できない可能性もあります。
そのため、これから保育士の中途採用をしたいと考えているのであれば、以下3つの注意点を意識するようにしましょう。
3-1.採用時期は「4月〜5月」が最適
新卒採用の場合は保育実習が終了する10月以降に採用活動をする保育園が多いです。しかし、中途採用の場合は、すでに保育士資格を持っているため、できるだけ早期の4月〜5月あたりに採用できると良いでしょう。
また、保育士としての経験があれば、新卒の保育士と比べて即戦力になりやすいという点からも4月〜5月での採用がおすすめです。
3-2.あらかじめ保育士のニーズを把握する
記事の冒頭でも少し述べたように保育士を一度退職してから再度保育園に就職させるには、保育士のニーズをしっかりと汲み取った求人を掲載する必要があります。とくに気をつけるべきことは、前述した「勤務時間」、「勤務日数」、「通勤時間」など働き方を重視した求人にすると保育士のニーズを汲み取りやすくなるでしょう。
したがって、経験者ということで給与を高くするだけではなく、無理なく働ける環境を提供できるという点をアピールしていくことが大事です。
3-3.研修制度を充実させる
先ほど中途採用の保育士は即戦力になりやすいと述べましたが、研修制度はしっかりと充実させておきましょう。なぜなら、経験者とはいえブランク期間や勤務する保育園の環境も全く異なるからです。
そのため、新人研修ほど細かく行う必要はありませんが、たとえブランク期間があったとしてもスムーズに勤務できるようにサポートしてあげることを忘れないようにしましょう。
4.保育士を中途採用するには適切な条件と時期が重要!
今回は保育士を中途採用するための手法とその注意点について解説をしました。保育士の中途採用は、もともと保育士資格を持っていたり、前職では保育士として勤務していたりと採用する側にとって、とても貴重な存在です。
一方、新卒の保育士以上に適切な条件と採用時期を調整しておかないと、うまく採用できないということも事実としてあります。そのため、これから保育士の中途採用を視野に入れていくのであれば、事前に保育士が求める条件や就職を希望する時期を把握しておく必要があるでしょう。
また、中途採用を効率よく行うには、採用したい保育士の人物像をあらかじめ決めておき、闇雲に求人票を掲載するのではなく、どの方法であれば効率よく採用できるかを考えておくことをおすすめします。