保育園の職員研修は、無料の研修動画から、法人向けの有料サービス、処遇改善等加算の要件となる指定キャリアアップ研修、受講を管理するシステムまで、選択肢が大きく広がりました。一方で2026年は、12月25日のこども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)の施行や、7月に始まった安全計画の減算など、研修に関わる制度の動きも重なっています。
この記事では、まず研修サービスの全体像と主なサービスの違いを整理し、そのうえで制度への対応と、園内で研修を回すための手順・記録の残し方を解説します。サービスの情報は、2026年10月22日時点で各提供元の公式情報から確認できた範囲で掲載しています。
この記事では、主に認可保育所の運用を扱います。認定こども園、幼稚園、地域型保育事業などでは扱いが異なる部分があるため、施設の類型に応じて各出典を確認してください。
この記事で分かること
- 保育所等の数の動きと、職員研修サービスの5つの種類
- 一般研修・動画サービスの料金、証明書、受講記録・管理機能の違い
- 指定キャリアアップ研修の比較(対象地域・形式・受講料・募集状況)
- 研修管理システム、人材育成クラウド、講師派遣・コンサルティングの役割
- 日本版DBS・安全計画・処遇改善等加算で確認すること
- 園内研修を回す手順、記録の残し方、チェックリスト
目次
保育園向け職員研修の市場とサービスの全体像
数字で見る保育所等の現状
| 項目 | 2026年4月1日時点 | 前年からの変化 |
|---|---|---|
| 保育所等の数 | 40,046か所 | 71か所増(+0.2%) |
| 利用児童数 | 2,646,756人 | 31,661人減(▲1.2%) |
| 定員充足率 | 87.7% | 0.7ポイント低下 |
| 待機児童数 | 2,435人 | 181人増 |
出典:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」(暫定値。保育所等には、保育所のほか認定こども園、地域型保育事業などを含む)
施設の数はほぼ横ばいで、利用する子どもは減り、定員には余裕が出始めています。一方で、待機児童は全国では増えました。大阪府は、待機児童が増えた自治体の要因の一つに、保育士を確保できず受け入れる子どもの数を減らさざるを得なかった施設があったことを挙げています(大阪府 報道発表 2026年8月25日)。園を増やすことよりも、いまいる職員が力を発揮し、働き続けられることが、園の運営に直結する局面です。
研修の手段としてのeラーニングも広がっています。国内のeラーニング市場は2025年度見込みで3,923億5,000万円、そのうち法人向けは1,293億5,000万円で、前年度から4.7%伸びています(矢野経済研究所 2026年4月22日)。これは全業種の数字で、保育分野に限った市場規模を示す公的な統計は見当たりません。
職員研修のサービスは大きく5種類
保育園が使える研修のサービスは、目的によって次の5つに分けられます。費用を負担する人も、得られる記録も違うため、まず自園が何を求めているかを整理すると選びやすくなります。
| 種類 | 主な提供元の例 | 費用 | 得られる記録 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 国の無料教材 | こども家庭庁(日本版DBSの研修教材) | 無料 | 記録の様式を提供。記録は園が残す | DBS研修 |
| 一般研修・動画サービス | コドモンカレッジ、ほいくis、保育のデザイン研究所など | 無料から有料(定額・単品)まで | サービスによって異なる(証明書の有無、管理機能) | 園内研修、職員の学び直し |
| 指定キャリアアップ研修 | 都道府県、知事が指定した研修実施機関 | 無料から1分野1万円台まで | 修了証 | 処遇改善等加算(区分3)の研修修了要件 |
| 研修管理・人材育成システム | 汎用の研修管理システム(LMS)、保育施設向けの人材育成クラウドなど | 有料 | 受講履歴、テスト結果、面談記録など | 受講状況の管理、職員育成の一元管理 |
| 講師派遣・コンサルティング | 市区町村・幼児教育センター、民間の研修会社 | 無料の例から個別見積もりまで | 提供元によって異なる | 園内研修の設計・進行の支援 |
一般研修・動画サービスの比較
園内研修や職員の学び直しに使う一般の研修サービスです。指定キャリアアップ研修とは別のもので、受講しても処遇改善等加算の研修修了要件にはそのまま使えるとは限りません。料金や内容は変わることがあるため、導入を検討する際は各社の最新情報を確認してください。掲載は紹介であり、特定のサービスを勧めるものではありません。
| サービス(提供元) | 料金 | 教材・形式 | 証明書 | 受講記録・管理機能 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|---|---|---|
| コドモンカレッジ(株式会社コドモン) | 研修は無料(協賛企業の支援による)。アカウントは施設単位 | Zoomでのライブ研修(毎月2回以上)と、過去のライブ研修の動画。階層別・分野別に分類。全国20,000施設以上が利用(2026年10月時点) | ライブ研修に参加し、終了時の振り返りチェックに回答した人に受講証明書を発行 | 2026年1月に研修管理機能を公開。年間の研修計画、職員ごとの受講状況の一覧、受講状況のExcel出力、「その他研修」(コドモンカレッジ以外の研修)の受講状況の管理 | 研修管理機能の利用条件(無料で使えるか、有料契約が必要か)は公式ページに明記なし。導入前に問い合わせを |
| ほいくis/ほいくis+(株式会社e-CHANNEL) | ほいくisの研修動画は無料会員向け。法人向けの「ほいくis+」は月額制で、料金は問い合わせ | ほいくis+は2026年10月20日開始。研修動画600本以上、園長・経営者向けセミナー、おたより・月案などを作るAIの業務支援、求人掲載の割引 | 公式発表では確認できず | ほいくis+に研修報告書の発行機能 | 2026年11月2日から、一部の研修動画が「ほいくis+」の利用者限定になる。無料で見られる範囲は申込時に確認を |
| オンデマンド研修(株式会社保育のデザイン研究所) | 園単位の定額(税込)。児童定員19人以下:月4,900円/年45,000円、20人以上:月9,800円/年90,000円。動画1本ごとの購入も可 | 約360〜370講座の研修動画。園内研修をリモートで進行する仕組みも案内 | 修了証・受講証明は発行しないと明記 | 会則で、受講履歴を閲覧・入力・修正できる管理システムの提供を規定。個人別の受講履歴は有料オプション | 個人別の受講履歴オプションは、公式ページ間で料金の表記が異なるため、申込時に確認を |
| e-ほいく | 初期登録30,000円(税別、法人で複数施設でも同額)。ベーシック月8,500円(税別)ほか | 定額で視聴できる保育研修の動画 | 料金ページでは確認できず | 料金ページでは確認できず | 料金ページに「2021年3月改定」「準備中」の表記が残る。最新の契約条件は問い合わせを |
| みらい保育スクール(ルクミー) | 公式ページに1名20,000円(税込)、同じ園から2名30,000円と表示。ルクミーの契約園は割引あり | オンライン集合研修4回と動画研修の組み合わせ。学びと実践を繰り返す「往還型」で、同じ人が全4回に出席。保育中の写真撮影などの宿題あり | 全ての研修と課題を終えた人に修了証 | — | 現在の募集は2027年度の先行エントリー(日程は2027年3月に確定予定)。割引条件の年度表記が混在しているため、料金は申込時に確認を |
出典:各社の公式サイト・公式発表(コドモンカレッジ 研修管理機能、同 受講証明書、ほいくis 有料サービス限定動画の告知、保育のデザイン研究所 会則など)
一般研修のサービスを選ぶときに確かめること
表のとおり、証明書を出すかどうか、職員ごとの記録をどこまで残せるかは、サービスによって違います。動画の本数よりも、次の点を確認すると、自園に合うかと導入後の運用が想像しやすくなります。
内容について
- 自園が扱いたいテーマがあるか
- 対象の職員(新人、中堅、主任、パート職員など)に合っているか
- 講師はどんな専門性・現場経験を持っているか
- 受講後の質問に、誰がどこまで対応するか
- 動画を見るだけか、演習や実践の振り返りまで含むか
証明書と記録について
- 修了証・受講証明書は出るか。出る場合、どの受講方法で、どんな条件を満たしたときに発行されるか
- 職員ごとの受講履歴が残るか。そのための追加料金はあるか
- 園・法人の単位で、未受講者を一覧できるか
- 自治体研修やキャリアアップ研修など、サービス外で受けた研修の記録も登録できるか。登録できる場合、受講状況だけか、修了証の添付や研修時間まで残せるか
- データを書き出せるか。解約したときに記録を持ち出せるか
指定キャリアアップ研修の比較
保育所の場合、処遇改善等加算(区分3)の研修修了要件となるのは、都道府県または知事が指定した機関が実施する「保育士等キャリアアップ研修」です(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン(東京都掲載))。1分野15時間で、乳児保育、幼児教育、マネジメントなどの分野ごとに受講します。
表の「対象地域・指定」は各団体の説明に基づくもので、この記事で全都道府県の指定状況を確認したものではありません。修了した研修が自園の加算の要件として認められるかは、園の所在地の都道府県の取扱要領で確認してください。募集状況は2026年10月22日時点です。
| 実施団体 | 対象地域・指定(団体の説明) | 形式 | 受講料(税込、1分野) | 募集状況(10月22日時点) | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般社団法人保育ICT推進協会(教材提供:コドモンカレッジ) | 東京都・神奈川県の指定団体 | eラーニング約12時間+Zoomでのオンライン集合研修約3時間 | 15,300円。コドモン会員9,800円。東京都の受講料免除対象者は無料(定員20名) | 2026年度の申込は9月3日で終了 | 次の募集は公式ページで確認を |
| CareRaku(一般社団法人保育ICT advance) | 大阪府の指定を受けて実施。全国向けで、40都道府県の指定研修機関と説明(都道府県名の記載なし) | eラーニング約15時間+Zoomでの集合研修3時間。両方の受講で修了証(PDF) | 電子版テキスト付き16,720円、製本版テキスト付き16,940円(送料込み) | 令和8年度の申込を受付中。締切は分野・集合研修の日程ごと。受講期限は2027年3月24日 | 申込後のキャンセル(返金)は不可 |
| 一般社団法人 ベネッセ 保育・子育て支援ラボ | 研修実施機関の指定を受け、全国から受講可能と説明 | eラーニング12時間+オンラインのライブ講義3時間 | 11,000円 | 分野・回ごとに申込期間あり(例:乳児保育「乳1」は2026年10月1日〜2027年1月15日) | 障害児保育は別途テキストの購入を予定 |
| 一般社団法人日本ウェルフェアサービス協会(JWSA) | 全国向けで、修了証は全国で有効と説明(指定を受けた自治体名の記載なし) | オンデマンド動画15時間のみ(Zoom・対面なし) | 8,000円 | 随時受付。受講期間は申込月を含まず3か月(分野を追加するごとに1か月延長) | 東京都向けには別コースがあり、東京都の受講料免除対象者は0円と案内 |
| 都道府県が実施・委託する研修(例:神奈川県) | その都道府県内の施設の職員 | 集合研修、eラーニングなど都道府県による | 受講料無料の例がある(通信費は自己負担など) | 都道府県ごとに募集時期が決まっている | 申込方法・対象者は都道府県の案内で確認を |
形式や受講料の条件は、都道府県によっても変わります。たとえば東京都では、eラーニングで実施する場合も、15時間のうち3時間以上を集合またはライブ形式の演習・グループ討議とすることを条件にしており(東京都)、受講料の免除制度もあります。同じ団体でも、全国向けと都道府県向けでコースや料金が分かれている場合があります。
保育所でも、要件を満たす園内研修が、キャリアアップ研修の一部の受講免除につながる場合があります。たとえば京都府では、府の確認を受けた園内研修の修了者について、対応する研修分野で1分野最大4時間の受講を免除できるとしています(京都府「園内研修の要件について」)。事前の確認・申請など、所在地の都道府県の取扱いを確認してください。
研修管理と運用を支えるサービス
研修を受けることと、園として受講状況を管理し、職員の育成につなげることは別の仕事です。そこを支えるサービスには、次のような種類があります。
汎用の研修管理システム(LMS)
園が用意した教材を配信し、受講状況を管理するシステムです。保育向けの教材は含まれないため、教材は園や法人が用意します。
| サービス(提供元) | 料金(税込) | 主な機能 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|---|
| learningBOX(learningBOX株式会社) | スタンダード:100アカウントで年99,000円/月11,000円。スタンダードPlus:年148,500円/月16,500円 | 動画・PDF・テストなどの教材の配信、受講者・成績の管理、修了証 | スタンダードは1教材のアップロード上限が500MB。退職者のアカウントの扱い、サービス外の研修記録の登録方法は導入前に確認を |
こども家庭庁のDBS研修動画は、LMSで受講を管理する場合などに、申請すればmp4ファイルで提供を受けられます(公共データ利用規約の遵守が条件。こども家庭庁)。
保育施設向けの人材育成クラウド
研修だけでなく、面談や評価、職員の育成状況を一つにまとめて管理するサービスもあります。たとえばKatagrMa(カタグルマ)は、保育・教育・療育施設向けの「組織・人材育成クラウド」で、人財育成、人事評価、エンゲージの3つの製品を展開しています。職員の面談や自己評価を行い、園と本部で情報を共有する仕組みが紹介されています(2022年の発表)。料金は、今回確認できた公開資料には掲載がありませんでした。
前の章で紹介したコドモンカレッジの研修管理機能も、研修の計画と職員ごとの受講状況を管理する役割を持っています。研修の管理だけで足りるのか、面談や評価まで一緒に管理したいのかで、選ぶサービスが変わります。
講師派遣・コンサルティング
園内研修の設計や進行を、外部の人に支えてもらう方法です。
- 自治体のアドバイザー派遣:園内研修に講師やアドバイザーを無料で派遣している自治体の実施例があります(京都府の令和6年度の案内、堺市、静岡市など)。園長経験者などが園を訪れ、園内研修の進め方を助言したり、講師を務めたりします。現在の実施の有無は、園の所在地を管轄する自治体の保育担当課や幼児教育センターに確認してください。
- 民間の研修コンサルティング:たとえば保育のデザイン研究所は、法人・自治体・団体ごとに、集合研修、ライブ研修、オンデマンド研修を組み合わせた研修計画の立案・導入を支援するとしています。料金は掲載がなく、個別の相談で決める形式です。
Excelで管理するか、システムを使うか
園の数や職員数だけでなく、「記録の集計にどれだけ時間がかかっているか」「異動や入退職の多さ」「外部研修の多さ」で判断します。すでに使っているサービスに管理機能があれば、まずそれを使いこなせるかを確かめるのも一つの方法です。
| Excelで足りやすい園 | システムを検討したい園 |
|---|---|
| 1つの園を運営していて、職員の入れ替わりが少ない | 複数の園を運営していて、園ごとの状況を本部で把握したい |
| 研修の種類が限られていて、外部研修の受講も多くない | 異動や入退職が多く、受講状況の引き継ぎに手間がかかる |
| 年に数回の集計に、大きな手間がかかっていない | 加算の申請前や監査の前に、毎回まとまった集計の時間がかかっている |
どちらの場合も、台帳に残す項目、台帳を更新する人とタイミング、修了証などの書類の保管場所、退職した職員の記録の扱いは、あらかじめ決めておきます。
制度への対応で確認すること
どのサービスを使う場合も、制度ごとに研修の対象者・時期・残すものは違います。まず一つの表に並べて、自園で抜けている部分がないかを確かめます。
制度ごとの研修の早見表
| 制度 | 研修の位置づけ | 対象 | 時期 | 残しておきたいもの | 確認先 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本版DBS(こども性暴力防止法) | 法律上の義務(認可保育所など義務の対象となる事業者) | 子どもに接する対象業務に従事する職員 | 原則、対象業務に従事する前。施行時に従事している職員は、原則として施行前 | 研修の実施計画、職員ごとの受講記録 | こども家庭庁の資料、園の所在地を管轄する自治体 |
| 安全計画 | 法令に基づく安全計画の策定・実施と、定期的な研修・訓練(行っていない場合は減算の対象) | 計画で定めた職員 | 計画で定めた時期。研修・訓練、保護者への周知、計画の見直しは項目ごとに判定される | 研修・訓練、周知、見直しそれぞれの実施日と内容 | 園の所在地を管轄する自治体 |
| 処遇改善等加算(区分3) | 加算を受けるための研修修了要件 | 加算の対象となる職位の職員 | 令和8年度から完全適用 | 修了証、職員ごとの修了状況 | 都道府県の取扱要領 |
※2025年10月から、保育所等の職員による虐待について通報義務などの仕組みが設けられました(大阪市の解説資料)。研修を義務づける制度ではありませんが、園内研修のテーマとして扱う場合は、他の研修と同じように記録しておくと確認しやすくなります。
日本版DBSの研修|「対象業務に従事する前」が原則
こども性暴力防止法は2026年12月25日に施行されます。認可保育所、認定こども園、幼稚園などを運営する事業者は義務の対象で、子どもに接する業務に従事する職員に研修を受けさせる必要があります(こども家庭庁 通知 令和8年4月21日)。制度全体(犯罪事実の確認や情報管理)は、こども家庭庁の特設ページを確認してください。
施行時に対象業務に従事している職員は、施行前に
施行の時点で子どもに接する業務に従事している職員には、原則として施行前(12月25日の施行より前)に研修を受けさせます。ただし、施行日の前日までに業務に就くことが決まっていて、実際に業務に就くのが施行日より後になる人は、業務に就くまでに受講させればよい、とされています(2026年9月のガイドライン改訂で明確化。こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドラインの改訂について」)。
新しく対象業務に就く職員は、従事する前に
施行後に採用が決まった職員も、原則として業務に従事する前に受講させます。基準は「雇用を始める前」ではなく、「子どもに接する業務に就く前」です。採用のたびに受講が発生するので、入職手続きの流れの中に「業務に就く前の研修」を組み込んでおくと、受け忘れを防ぎやすくなります。
ガイドラインでは、研修を一回で終わらせず、定期的な受講や日常的な取り組みにつなげることの大切さも示されています(こども性暴力防止法施行ガイドライン 121〜122ページ)。
国が無料で提供しているDBS研修の教材
こども家庭庁「こども性暴力防止法に基づく従事者向け研修教材」のページでは、次のものが公開されています(2026年10月時点)。DBS研修は、まずこれを使うことが費用を抑える選択肢になります。
| 教材 | 内容 |
|---|---|
| 標準動画 | 従事者が理解しておくことが望ましい標準的な内容を網羅した動画。原則としてこれを受講する。英語字幕版あり |
| 要点動画 | 最低限必要な事項をまとめた動画。不定期・短期間で従事する人など、標準の研修をすぐに受けることが難しい人向け |
| 研修資料 | 標準動画の内容を解説・補足するPDF |
| 演習資料 | 演習で使える題材と解説(PowerPoint) |
| 確認テスト | 研修後に理解の定着を確かめるExcelファイル |
| 研修の手引き | 研修を企画・運営する担当者向け。実施方法、体制、記録管理、評価・見直しを解説 |
| 研修実施計画書・研修受講記録 | 計画と受講状況を記録する様式(Excel) |
要点動画で研修を行った場合も、その後、可能な範囲で標準動画による研修を受けることが望ましいとされています(ガイドライン 121〜122ページ)。国の標準動画のほかに、ガイドラインの研修事項を満たし、座学と演習を行う事業者独自の研修でもよいとされています。民間の研修サービスでDBS研修を行う場合も、ガイドラインの該当部分と照らして内容を確認してください。
安全計画|研修・訓練、周知、見直しは別々に判定される
保育所は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(第6条の3)に基づき、職員の研修・訓練などを定めた安全計画を策定し、研修・訓練を定期的に実施し、保護者に周知し、定期的に計画を見直す必要があります。2026年7月からは、これらを行っていない場合の減算が始まりました(こども家庭庁 資料)。
保育所などでは、次の3つが項目ごとに判定されます。
- 研修・訓練
- 保護者への周知
- 計画の見直し
そのため、研修を1回行っても、保護者への周知や計画の見直しをしていなければ、その項目は未実施のままです。研修動画の受講を記録しただけでは、訓練や周知、見直しを行ったことにはなりません。未実施の状況が1年続くと、その翌月から減算の対象になります。減算は、未実施の状況が解消した月まで適用されます。再び実施した月も減算の期間に含まれます。減算の額や算定方法は、園の所在地を管轄する自治体の案内で確認してください。
処遇改善等加算(区分3)|令和8年度から完全適用
処遇改善等加算の研修修了要件は、現在「区分3」(旧・加算Ⅱ)として運用されています。令和5年度から段階的に適用され、令和8年度からは完全適用です(北海道)。職位ごとに必要な研修は、都道府県の取扱要領で確認します。受講先の選び方は、前の「指定キャリアアップ研修の比較」の章を参照してください。
園内研修を回す手順と役割分担
どのサービスを選んでも、研修は受講した時点で終わりではありません。計画、勤務時間の確保、受講と演習、記録、現場での振り返りまでを一続きの流れとして決め、手順ごとに担当者を置くと回りやすくなります。
手順1 年間の研修計画を立てる
年度の初めに、その年に行う研修を一覧にします。制度上必要な研修(DBS研修、安全計画の研修・訓練、キャリアアップ研修など)と、園が独自に行う研修を分けて並べ、それぞれの時期、対象者、使うサービスを決めます。DBS研修については、こども家庭庁の研修実施計画書の様式がそのまま使えます。
手順2 勤務時間の中で受講時間を確保する
DBS研修の手引きでは、研修は事業者が必ず受講させるものなので、受講時間は労働時間に含まれると整理されています(こども家庭庁「研修の手引き(事業者向け)」 4.3)。事業者が受講させる研修は、勤務時間として扱うのが前提です。自宅での受講を認める場合も、無給の自己学習として扱わず、勤務時間として把握します。
受講の時間帯の候補には、職員会議の一部や、シフトが重なる時間帯などがあります。午睡の時間を使う場合は、子どもの安全確認、配置基準、職員の休憩を確保できるときに限ります。
手順3 受講と演習|動画だけで終わらせない
動画を見たあとに、自園の場面に置き換えて話し合う時間をとると、内容が現場の判断につながりやすくなります。DBS研修であれば、国の演習資料の題材を使いつつ、「自園の日常のこの場面では、どう対応するか」を少人数で話し合う方法があります。安全計画の研修・訓練であれば、計画に書いた手順を実際の動きで確かめます。
手順4 記録する
誰が、いつ、どの研修を、どの方法で受けたかを残します。DBS研修については、こども家庭庁の研修の手引きに受講管理表の例があり、次の項目が挙げられています。
- 研修名、研修の区分、受講形式(標準・要点・独自など)
- 職員番号、氏名、職位・職種
- 従事開始日、受講方法(集合・オンラインなど)、受講完了日
手順5 現場で振り返る
研修のあと、翌月の職員会議などで「研修を受けて変えたこと」「やってみて難しかったこと」を確かめます。これは制度上の義務ではなく、研修の内容を現場に定着させるための運用の工夫です。
誰が何を担うか|3つの役割
| 役割 | 担うこと |
|---|---|
| 園長・法人本部 | 研修の方針、使うサービスの決定、受講時間を勤務時間として確保すること、体制づくり |
| 主任・研修担当 | 研修内容の選定、演習の進行、現場での実践の確認 |
| ICT・事務担当 | アカウントの発行、研修の割り当て、進捗の集計、データの書き出し |
小さな園では、同じ人が複数の役割を兼ねることもあります。兼任してもかまいませんが、「何を誰が判断するか」は分けておくと、担当者が替わったときにも引き継ぎやすくなります。
記録の残し方|修了証・受講証明書・受講履歴
修了証や受講証明書は、研修の提供元が、自ら定めた条件を満たした人に発行する書類です。何を証明するか(参加したのか、視聴を終えたのか、テストやレポートまで終えたのか)は、書類の名称と発行条件によって違います。受講履歴は、「誰が、いつ、何を受けたか」の記録で、研修の提供元やシステムが記録するものと、園が自ら残すものがあります。
| 種類 | 誰が出す・記録するか | 発行・記録の条件の例 | 主に使う場面 |
|---|---|---|---|
| 修了証 | 研修の提供元(都道府県、指定機関、民間など) | 全課程の受講、レポートの提出など、提供元が定めた条件 | 加算の要件の確認、職員本人の経歴 |
| 受講証明書 | 研修の提供元 | 研修への参加、振り返りへの回答など、提供元が定めた条件 | 研修に参加したことの確認 |
| 受講履歴(提供元・システムの記録) | 研修サービスやLMS | 視聴の記録、テストの結果など | 個人ごとの進捗の確認 |
| 受講履歴(園の記録) | 園・法人 | 園が決めた項目(受講管理表など) | 園全体の研修の把握、監査や加算申請の前の確認 |
「参加」「受講」「修了」は同じ意味ではありません。書類を受け取ったら、名称と発行条件を確かめてから保管します。
散らばった記録を、園の台帳にまとめる
複数のサービスや研修を使うほど、記録は紙の修了証、自治体からの通知、各サービスの管理画面、園のExcelなどに分かれます。すべてを一つのシステムに移す必要はありませんが、園としての台帳を一つ決めておくと、確認が速くなります。台帳には、「誰が、いつ、どの研修を、どの方法で受け、どの書類がどこに保管されているか」をまとめておく方法があります。サービスの管理機能でサービス外の研修も登録できる場合は、その画面を台帳として使うこともできます。
記録は「実施した証拠」で、「実施の代わり」ではない
記録を整えても、実施していない研修や訓練が実施済みになるわけではありません。記録は、実施したことを後から確認できるようにするためのものです。
犯罪事実確認で得た情報は、研修の台帳に転記しない
日本版DBSでは、研修とは別に、職員の性犯罪歴の有無を確認する「犯罪事実確認」の仕組みがあります。犯罪事実確認で得た情報を、一般の研修台帳に安易に転記しないでください。国は、取り扱う人を必要最小限にすること、犯罪事実確認書の内容の記録・保存を極力避けること、やむを得ず記録・保存する場合はリスクに応じた情報管理措置を行うことを求めています(こども家庭庁「性犯罪歴に関する情報の適正な管理について」)。取り扱いは、国の資料と事業者の情報管理規程に従ってください。
自園の研修運用チェックリスト
自園の状況を確かめるためのチェックリストです。【制度】は制度上必要な対応に関わる項目、【提案】は制度上の義務ではなく、編集部が勧める運用の工夫です。印刷して、園内の確認に使ってください。
計画とサービス選び
- 【制度】施行時に対象業務に従事している職員全員が、施行前にDBS研修を受ける予定になっている
- 【制度】新しく対象業務に就く職員に、従事する前にDBS研修を受けさせる流れが決まっている
- 【制度】安全計画に定めた研修・訓練を、定期的に実施する予定が年間の計画に入っている
- 【制度】処遇改善等加算(区分3)の対象職員について、必要な研修の修了状況を把握し、受講先が自園の都道府県で要件として認められるか確認している
- 【提案】制度上必要な研修と、園独自の研修を分けて一覧にし、それぞれ使うサービスを決めている
- 【提案】利用中のサービスの証明書と管理機能(受講履歴、Excel出力、サービス外の研修の登録など)を確認している
勤務時間
- 【制度】事業者が受講させる研修の時間を、勤務時間として扱っている
- 【提案】受講の時間帯(職員会議の一部、シフトが重なる時間帯など)をあらかじめ決めている
受講・演習
- 【提案】動画の視聴だけで終わらせず、自園の場面に置き換えて話し合う時間をとっている
- 【制度】DBS研修を独自に行う場合、ガイドラインの研修事項を満たし、座学と演習を行っている
記録
- 【制度】安全計画の研修・訓練、保護者への周知、計画の見直しの、それぞれの最終実施日を把握している
- 【提案】職員ごとの受講記録を、園として一つの台帳にまとめている
- 【提案】修了証・受講証明書の名称と発行条件を確認して保管している
- 【制度】犯罪事実確認で得た情報について、国が求める情報管理措置を確認している
振り返り
- 【提案】研修のあと、職員会議などで「変えたこと」「難しかったこと」を確かめている
- 【提案】園長・主任・事務担当の役割分担を決め、担当者が替わっても引き継げるようにしている
よくある質問
- Q.無料の研修サービスだけで足りますか?
- A.目的によります。DBS研修は国の無料教材で行えますし、一般の園内研修にも無料のサービスがあります。一方、処遇改善等加算(区分3)の研修修了要件には、指定キャリアアップ研修の修了が必要です(保育所の場合)。また、証明書の有無や受講記録の機能はサービスによって違うため、自園が残したい記録を残せるかも確認してください。
- Q.民間の研修動画は、処遇改善等加算の研修に使えますか?
- A.そのまま使えるとは限りません。保育所の場合、要件となるのは都道府県または知事が指定した機関が実施するキャリアアップ研修です。該当するかは、提供元と都道府県の両方に確認してください。
- Q.パートや短時間で働く職員も、DBS研修の対象ですか?
- A.研修の対象は、雇用形態ではなく、子どもに接する対象業務に従事するかどうかで決まります。対象となる職員の範囲は、事業者が検討して確定させる必要があります。不定期・短期間で従事する人など、標準の研修をすぐに受けることが難しい人のために、国は要点をまとめた動画も用意しています。要点動画で研修を行った場合も、その後、可能な範囲で標準動画による研修を受けることが望ましいとされています。対象の範囲は、こども家庭庁のガイドラインと、園の所在地を管轄する自治体の案内で確認してください。
- Q.研修を自宅で受けてもらってもよいですか?
- A.自宅での受講を認めること自体は考えられますが、事業者が受講させる研修の時間は労働時間に含まれます。自宅で受講した時間も無給の自己学習として扱わず、勤務時間として把握してください。
- Q.研修の記録は、どれくらいの期間保存すればよいですか?
- A.研修の種類や、加算の申請・監査など記録を使う目的によって、確認すべき規定が異なります。そのため、この記事では一律の年数は示しません。研修ごとに、根拠となる制度の資料と、園の所在地を管轄する自治体の案内を確認してください。
まとめ
- 職員研修のサービスは、国の無料教材、一般研修・動画サービス、指定キャリアアップ研修、研修管理・人材育成システム、講師派遣・コンサルティングの5種類に分けると選びやすくなります。
- 一般研修のサービスは、料金だけでなく、証明書の発行条件と、受講記録・管理機能の範囲を比べましょう。指定キャリアアップ研修は、自園の都道府県で要件として認められるか、募集中かを確認します。
- どのサービスを使う場合も、制度ごとに「対象・時期・残すもの」を整理し、受講時間を勤務時間として確保し、受講のあとに現場で振り返ることを決めておくと、研修が日々の保育につながりやすくなります。
主な出典
確認日:2026年10月22日(サービスの情報は各提供元の公式情報をもとにしています)
- こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」
- 大阪府「府内の保育所等利用待機児童数等の状況(令和8年4月1日時点)」
- 矢野経済研究所「eラーニング市場に関する調査を実施(2026年)」
- コドモンカレッジ、研修管理機能のお知らせ、受講証明書の発行について
- 株式会社e-CHANNEL「ほいくis+」提供開始のお知らせ、ほいくis 有料サービス限定動画の告知
- 保育のデザイン研究所「オンデマンド研修」、会則、コンサルティング
- e-ほいく 料金
- ルクミー みらい保育スクール
- 保育ICT推進協会 2026年度キャリアアップ研修
- CareRaku 令和8年度 全国向け保育士等キャリアアップ研修
- ベネッセ 保育・子育て支援ラボ 2026年度キャリアアップ研修
- 日本ウェルフェアサービス協会 全国向け保育士等キャリアアップ研修
- 山形県 保育士等キャリアアップ研修 オンライン研修
- learningBOX 料金
- 株式会社カタグルマ 発表(2026年7月16日)、KatagrMa 累計契約数の発表(2022年)
- こども家庭庁「こども性暴力防止法」特設ページ
- こども家庭庁 研修教材等の周知依頼(令和8年4月21日、名古屋市掲載)
- こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」
- こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドラインの改訂について」
- こども家庭庁「こども性暴力防止法に基づく従事者向け研修教材」
- こども家庭庁「研修の手引き(事業者向け)」
- こども家庭庁「性犯罪歴に関する情報の適正な管理について」
- こども家庭庁 安全計画の策定等をしていない場合の減算(令和8年度)
- 北海道「処遇改善等加算(区分3)に係る研修修了要件」
- 京都府「園内研修の要件について」
- 保育士等キャリアアップ研修ガイドライン(令和8年3月6日一部改正、東京都掲載)
- 東京都「eラーニングで実施する場合の要件」
- 大阪市「保育所等の職員による虐待に関する通告義務等について」
※制度やサービスの内容は変わることがあります。最新の内容は、各出典と園の所在地を管轄する自治体で確認してください。
