子どもの潜在的な能力や感性を伸ばすことができる「リトミック」は、今では多くの保護者から人気の教育として知られています。
とくに昔と比べて現在は、自分自身の個性や感性を活かしたクリティブな仕事や考え方が将来的に重要となるでしょう。
そこで今回は、リトミックとはどのようなものなのか?という部分からリトミックを行うことで子どもに与える大きな効果を解説します。
また、記事の後半では実際に行われているリトミック教室の具体例と実際にリトミックを教員として習得する方法までご紹介しますので、ぜひ最後までじっくりとご覧ください。
目次
1.リトミックとは?
リトミックはスイスの音楽教育家でもあったエミール・ジャック=ダルクローズという人物が考えた教育法で、音楽を主体とする教育法です。
音楽教育とも呼ばれているリトミックでは、音楽に合わせてリズムを感じたり身体を動かしたりして音楽を動きで表現することで、子どもが持っている潜在的な能力を伸ばすことができます。
とくに子どもが成長する中で身につけることのできる「感性」は、自分自身を表現するためにとても大切なことです。
このような音楽的感覚は、単に実践してみてもすぐに身につけることができません。
したがって、子どもが1番成長するときでもある幼少時にリトミックを行うことは、将来的にもとても良い影響を与えることができるでしょう。
2.リトミックによる3つの効果
リトミックを行うことで得られる大きな効果は3つあります。
- ①:集中力と論理的思考力が身に付く
- ②:総合的な身体能力を養える
- ③:コミュニケーション能力が高くなる
いずれの効果も子どものときだけではなく、大人になっても重要となる効果を習得できるのがリトミックの特徴です。
また、リトミックによる教育は音楽を主体としているため、子ども自身が楽しみがら潜在的な能力を身につけることができます。
2-1.効果①:集中力と論理的思考力が身に付く
まず1つめの効果は、リトミックを行うことで集中力と論理的思考ができるということです。
リトミックのレッスンでは、実際に聴いた音楽のイメージを声に出したり踊ったりして表現することがプログラムとしてあります。
そのため、一般的な教育と比べて五感などの外的な集中力やものごとを論理的に考える内的な集中力を磨くことができるのです。
ただ、音楽という目に見えないものに対して、自分のイメージを頼りに身体という形あるもので表現するということは、とても難しく大変であることは変わりありません。
ですが、この見えないものを自分で考えて表現するという行動自体が、集中力と論理的思考力を高めていくためのきっかけとなるでしょう。
2-2.効果②:総合的な身体能力を養える
2つめの効果としては、総合的な身体能力を養うことができるという点です。
リトミックは音楽を主体としているので、感性のみを伸ばす教育と誤解されがちですが、身体的な面を育てることにも長けています。
その理由は、音楽に合わせて遊んだり体操をしたりと身体全体を使う必要があるからです。
単に音楽を聴いているだけや歌っているだけでは、総合的な身体能力を高めることはできません。
しかし、リトミックの場合は音楽のリズムに合わせて身体を動かすため、総合的な身体能力を養うことができるようになるということです。
さらにリトミックではピアノ演奏に合わせて身体を動かすので、日常生活やスポーツなどにおいてとても重要となる「リズム感」を磨くことができます。
2-3.効果③:コミュニケーション能力が高くなる
3つめの効果は、他人とのコミュニケーション能力が高くなるという点です。
ほとんどのリトミック教室では、一緒の教室にいる子どもたちが音楽に合わせて一斉に身体を動かします。
そのため、同じクラスの友達との協調性や集団で行動することの楽しさや嬉しさなどを感じることができるのです。
したがって、リトミックでは「音楽」を通じて子ども同士がコミュニケーションを取るきっかけを作ることができるでしょう。
また、リトミック教室は保育園などとは異なり、少人数制をとっているところも多くなっているので、人がたくさんいるとなかなかコミュニケーションが取れないというお子さんも他人と交流をする第一歩を踏み出しやすいです。
3.リトミックとお遊戯の違いとは?
リトミックは音楽を主体としていることから「お遊戯とそこまで変わらないのでは?」という疑問が浮かぶと思います。
しかし、リトミックとお遊戯ではやり方から目的までまったく違うのです。
3-1.リトミックにおける表現は自由
リトミックでは、音楽に合わせて子ども自身が自由に表現をして身体を動かします。
一方で、お遊戯の場合は決められた振り付けや曲を繰り返し練習し、子ども全員が同じ動きをすることが大きな特徴となっていますよね。
とくに音楽という抽象的なものから何かを感じ取って自由に表現するリトミックは、同じ動作や振り付けを覚えるお遊戯よりも子ども自身が持っている感性高めることが可能です。
このようにリトミックは、音楽に合わせて子どもがイメージした表現方法で身体を動かすため、お遊戯よりも頭を使いながら身体能力も鍛えることができるという点がお遊戯と大きく違う部分と言えるでしょう。
3-2.体操とも少し違う
「身体を動かして身体的な能力も高められる」という部分においては、少し体操と似たイメージになりがちですがリトミックと体操も少し違う点があります。
たとえば、体操の場合は身体を動かすためだけの動作しか行いません。
しかし、リトミックの場合は身体を動かすことが最終的な目的ではなく、五感で感じたものを子どもが頭の中で自分なりに解釈をしてから身体全体で表現をします。
つまり、体操では単に身体をほぐしたりするだけですが、リトミックでは身体を動かすという動作だけでなく、身体を動かすまでに「頭で考える」ということが大きな違いになるのです。
そのため、身体的な能力を鍛えるだけでなく、脳や思考の発達にも良い影響を与えることが期待できます。
4.リトミックの具体的な事例を4つ紹介
子どもが秘めているさまざまな能力を高めることができるリトミックですが、今では目的に合わせてたくさんの種類があります。
主なリトミックは以下の4種類です。
- ベビーリトミック
- 幼児リトミック
- ステップアップリトミック
- 英語リトミック
それぞれのリトミックで身につけられることや対象となる年齢なども異なるので、目的に合わせて利用する教室を選ぶといいでしょう。
4-1.ベビーリトミック
リトミックの中でも0歳〜1歳までの子どもたちが通うリトミックを「ベビーリトミック」と言います。
ベビーリトミックでは、主に保護者と赤ちゃんが音楽を通して楽しくコミュニケーションを取ることが目的です。
とくに0歳〜1歳までの赤ちゃんは、視覚や聴覚といった感覚が大きく成長し始める時期でもあります。
そのため、赤ちゃんの頃から音楽やリズムに合わせて身体を動かしたり、楽器で音を鳴らしてみたりすることで「感性」を高めるきっかけを与えることにつながるのです。
また、このベビーリトミックは子どもの感性などを伸ばすだけでなく、一緒に参加している保護者の方にもいい影響が出てきます。
なぜなら、一般的な子育てとして子どもと触れあうよりも音楽やリズムにあわせて楽しくコミュニケーションを取ることで「子育てって楽しい!」と感じてもらえるからです。
4-2.幼児リトミック
ベビーリトミックは0歳〜1歳までの子どもたちが通うリトミックですが、2歳〜3歳の子どもたちが通うリトミックのことを「幼児リトミック」と呼ばれています。
内容はベビーリトミックと少し似ていますが、0歳〜1歳の子どもよりも自分で歩いたり歌ったりできるようになっているので、よりさまざまな感性を高めることができるでしょう。
また、2歳〜3歳になると今までよりも「言葉」や「記憶力」、「思考力」などの発達がとても速くなります。
そのため、自分で基礎のリズムを覚えたり歌いながら手遊びをしたりとこれまで以上に高度な動作や表現ができるようになっていくのです。
ちなみにさまざまな言葉を覚える時期でもあるので、幼児リトミックのように音楽に触れておくと音階などの要素も同時に学ぶことができるようになるでしょう。
4-3.ステップアップリトミック
ステップアップリトミックは、幼児リトミックを卒業した子どもが通うためのリトミックです。
大きな特徴は、実際にピアノに触れたり楽譜を読む練習をしたりなど、幼児リトミックよりもさらに高度なことに挑戦していきます。
そのため現在では、ステップアップリトミックに通わせて音楽やピアノに慣れさせてから本格的にピアノ教室へ通うというステップを踏むご家庭が多くなっているのです。
また、ステップアップリトミックは他のリトミックとは異なり、「保護者同伴ではない教室が多い」というのも特徴でしょう。
これまでにベビーリトミックや幼児リトミックに通っていた保護者にとっては、子どもだけで通わせるということはとても不安になるかもしれません。
ですが、これまで以上に高度な自己表現や感性を身につけるためには「子どもが主体的に通う」ということも非常に重要です。
そのためのステップアップだと理解して通わせてあげましょう。
4-4.英語リトミック
英語リトミックでは、名前のとおり通常のリトミック内容をすべて英語でレッスンが行われます。
とくに「子どもが小さい頃から英語に触れさせておきたい」と考えている方は、この英語リトミックはとてもおすすめです。
内容は一般的なリトミックとそこまで変わりませんが、英語と音楽を同時に触れることができるため習得できる基礎能力はとても高いものになるでしょう。
5.リトミックを指導員として習得する2つの方法
最後にリトミックを指導員として習得する方法をご紹介します。
最近では、保育士がリトミックの教育法を身につけるというケースも増えてきているので、ぜひ幼児教育に携わっている方には身につけてほしい内容です。
ちなみにリトミックを指導員として習得するには、以下の方法で身につけることができます。
- ①教員養成校に通う
- ②月齢研修会に参加する
5-1.教員養成校に通う
まず1つめの教員養成校に通う方法の場合、2年間でディプロマA(リトミック指導員資格)を取得することができます。
【教員養成校の特徴】
開講場所 | 東京校または名古屋校 |
---|---|
習得期間 | 2年間< |
授業日 | 平日(週2回) |
入学金 | ¥55,000(税込) |
年間の授業料 | ¥333,000〜¥385,000(税込) |
教材費 | ¥56,650(税込) |
取得可能資格 | ディプロマA |
参考:特定非営利活動法人「リトミック研究センター」|教員養成校で学ぶ|指導法を学びたい方へ|リトミック研究センター
また、教員養成校では実際に子どもたちのレッスンを見学する「見学実習」などをはじめ、リズム・ソルフェージュ・リトミック理論・モンテッソーリ教育・ピアノ演奏法などさまざまなことを身につけることが可能です。
ちなみに教員養成校へ通われる主な方は、幼稚園・保育園の先生や大学・短大生、ピアノの先生などいろんな方が在校生として学んでいます。
5-2.月例研修会に参加する
2つめの月例研修会に参加して資格を習得する場合は、4年間でディプロマB資格を取得することができます。
【月例研修会の特徴】
開講場所 | 全国各地にある研修会場 |
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習得期間 | 4年間 |
授業日 | 休日(月1回) |
入学金 | ¥11,000(税込) |
年間の授業料 | ¥30,800(税込) |
教材費 | ¥12,430(税込) |
取得可能資格 | ディプロマB |
参考:特定非営利活動法人「リトミック研究センター」|月例研修会で学ぶ|指導法を学びたい方へ|リトミック研究センター
教員養成校での資格取得には、平日週2回通う必要があるので人によっては通えないという場合もあると思います。
ですが、月例研修会による資格取得では毎月1回3時間の研修が休日に実施されるので、平日に仕事が忙しくてなかなか通えないという方にはとてもおすすめです。
ただし、教員養成校と違って月1回での研修になるので、習得期間が4年間と長期間に渡るという点だけ注意してください。
6.まとめ:リトミックによる教育は子どもの人格教育にも役立つ
今回はリトミックとはどんな教育法なのかという点から実際に指導員としてリトミックの指導資格を取得する方法まで解説をしました。
本文中にも述べましたが、リトミックは身体的な能力だけでなく論理的に考える思考力や集中力、感性などさまざまなことを学ぶことができます。
さらにリトミックでは、音楽を主体として楽しく自由に自己表現をできるようになるので、子どもの人格教育にも非常に大きな影響を与えるでしょう。
幼少期から自由に自分がイメージしたことを表現できる場というのは、教育をする側が常に意識すべきことでもあります。
ぜひ教育に携わる幼稚園や保育園の先生には、このリトミック教育を身につけていただきたいですね。