SNSで話題を集めている「ナルトダンス」は、独特の振り付けで注目を浴びているトレンドダンスです。特徴的なポーズやリズミカルな動きが人気を呼び、TikTokなどを中心に世界中で投稿が相次いでいます。
しかし実は、このダンスは『NARUTO -ナルト-』のアニメから生まれたものではありません。実体は中国発のダンスミーム「科目三(Ke Mu San)」であり、アニメ『NARUTO』のコスプレと組み合わさって拡散したため、日本では”ナルトダンス”として広く知られるようになったのです。
この記事では、ナルトダンスの真の起源から世界的拡散の経緯、バズった理由までをわかりやすく解説します。
目次
ナルトダンスの正体は中国発の「科目三」
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このダンスに『NARUTO』のコスプレを組み合わせた動画が海外で拡散したことで、日本や世界では”ナルトダンス”という呼び名が定着しました。
つまり、「ナルトダンス=ナルト風コスプレで踊る科目三」という理解が正確な表現になります。
科目三(Ke Mu San)の起源と名前の由来
広西チワン族自治区の結婚式から誕生
膝を左右に揺らし、手首を素早く返すユニークな動きが特徴的で、見た人々の間で話題となりました。
「科目三(Ke Mu San)」という名前の意味
なぜ「科目三(Ke Mu San)」と呼ばれるのか?それには広西チワン族自治区の文化的背景があります。
広西チワン族自治区では、人生で三つの「試験」に合格しなければならないという冗談めいた言い方があります。
- 科目一:山歌(民謡)を歌うこと
- 科目二:米粉(ビーフン)を食べること
- 科目三:ダンスを踊ること
このため、結婚式のダンスが「科目三(三番目の試験=ダンス)」と呼ばれるようになったのです。
なお、中国の運転免許試験の「科目三(路上試験)」に合格した直後にこのダンスを投稿した動画が話題になったという説もあります。
使用楽曲:「一笑江湖」が生み出す中毒性
曲の意味と特徴
「一笑江湖」は直訳すると「苦労の多い人生を笑って受け流す」という意味を持つ、人生を歌った深い歌詞の楽曲です。
原曲はしっとりとしたバラードですが、DJ版ではコミカルで軽快なダンスチューンに変貌します。
この軽快なビートに合わせて、膝のスイングや手首の返しをはめ込むと”クセになる”映像が完成し、視聴者の模倣を促しました。
楽曲の統一感がミームの識別子として機能し、世界各地で同型の動画が生まれる土台となったのです。
Apple MusicやSpotifyでも公式配信されており、歌詞付き動画や解説コンテンツも多数公開されています。
世界的バズへの道のり
科目三が世界的なトレンドになるまでには、いくつかの段階がありました。時系列に沿って整理します。
第1段階:中国版 TikTok 抖音(ドウイン/Douyin)での初期拡散(2023年前半〜中盤)
中国の短動画プラットフォーム・Douyin(抖音:TikTokの中国版)で、科目三の動画が次々と投稿され始めました。異なるバージョンの音楽(当初は「想某人」など)が使われていましたが、2023年中盤以降に「一笑江湖」のDJリミックスが主流となり、現在知られる形が完成しました。
第2段階:海底撈での爆発的流行(2023年11月〜12月)
2023年11月、火鍋チェーン「海底撈(Haidilao / ハイディーラオ)」の店員が科目三を踊る動画がバズし、社会現象化しました。
海底撈は「肉麻式サービス(過剰なまでの手厚いサービス)」で知られる火鍋チェーンです。顧客が「科目三が見たい」と頼むと、店員が店内でダンスを披露するサービスが一部店舗で始まり、SNSで大きな話題となりました。
「一顿要吃八碗饭」「关你西红柿」といったインフルエンサーが海底撈で踊った動画は、抖音で243万以上の「いいね」を獲得。その後1週間以内に複数のプラットフォームでトレンド入りし、累計再生数は10億回を超えました。
福州、鄭州、無錫、北京、広州、大連など中国各地の海底撈店舗でパフォーマンスが行われ、シンガポールやアメリカの店舗でも同様の取り組みが報じられました。
第3段階:文化現象としての認知(2023年12月)
2023年12月、科目三は単なるネットミームを超えた文化現象となりました。
- 12月9日:上海で開催された「2023 WDSFグランドスラムファイナル」で、ラテンダンスの世界チャンピオン・クリスティーナさんが科目三を披露
- 12月15日:ロシアのボリショイ・バレエ団が瀋陽での「白鳥の湖」公演のカーテンコールで科目三を踊り、観客を沸かせる
- 12月31日:瀋陽市の太原街で大人数が科目三を踊るギネス世界記録挑戦イベントが開催される
この時点で、Douyinでの「科目三」関連動画の累計再生回数は460億回を超え、「国民的ダンス」と呼ばれるまでになりました。
第4段階:国際拡散と「ナルトダンス」の誕生(2024年〜2025年)
海外のTikTokへ波及する過程で、科目三は様々なアレンジと融合していきます。
@konako1017 木の葉が舞うところ 火も絶えない #fz粉子 #narutodance #ナルトダンス ♬ 原声 – Fz粉子
海外の視聴者、特にアニメファンにとっては、この動画が”ナルトのキャラクターが踊っている”ように見えたため、「#NarutoDance」「#ナルトダンス」というハッシュタグで拡散されるようになりました。
日本では2024年から2025年にかけて高校生を中心に一般層に浸透し、「ナルトダンス」「忍者ダンス」として投稿が急増。TikTokのハッシュタグ検索でも多数の動画が確認できます。
こうして「広西発→Douyin流行→海底撈で加速→音源を軸に国際拡散→日本で『ナルトダンス』として定着」という流れが完成したのです。
なぜ「ナルトダンス」は世界でバズったのか?
科目三が世界的トレンドになった理由を分析します。
1. 真似しやすい振り付け
基本の動きは膝を左右に揺らし、手首を返すというシンプルなもの。ダンス初心者でも挑戦しやすく、それでいて独特の雰囲気が出る絶妙なバランスが、模倣拡散を促しました。
2. 中毒性のある音楽
「一笑江湖」のDJリミックスは、軽快でリズミカル、そして耳に残りやすいメロディーが特徴です。音楽とダンスの一体感が、視聴者を引き込む大きな要素となりました。
3. 体験型エンターテイメント化
海底撈での店員パフォーマンスにより、「見る」だけでなく「体験できる」コンテンツとなったことが大きな転換点でした。
実店舗での体験がSNSでさらに拡散されるという好循環が生まれました。
4. コスプレとの親和性
アニメコスプレという視覚的インパクトと組み合わせることで、ダンスそのものの面白さに加えて「キャラクターが踊っている」という付加価値が生まれました。
特に『NARUTO』は世界的に人気のあるアニメのため、認知度の高さが拡散を後押ししました。
5. 国境を超えた共感
言語や文化の壁を越えて楽しめるダンスという普遍性と、インターネットミームならではのユニークさが融合し、グローバルなカルチャートレンドへと成長しました。
まとめ
「ナルトダンス」の正体は、中国・広西チワン族自治区発のダンスミーム「科目三」です。
結婚式の伝統的なダンスがDouyinで拡散し、火鍋チェーン「海底撈」での店員パフォーマンスをきっかけに社会現象へと成長。さらにBGM「一笑江湖」のDJリミックスとともに世界中のTikTokに広がりました。
海外では『NARUTO』のコスプレと組み合わされたバージョンが特に人気を集め、日本では「ナルトダンス」という呼び名で定着。2024年から2025年にかけて高校生や一般ユーザーの間で模倣投稿が急増しました。
つまり「ナルトダンス」とは、”ナルトの動き”そのものではなく、“ナルト風コスプレで踊られた科目三”が文化的に変容した結果生まれた呼称なのです。
もっとみたい方は、検索する際は「科目三」「一笑江湖」「Ke Mu San」「Subject 3 dance」などのキーワードも併用すると、より多くの関連動画を見つけることができます。
今後もSNSの波に乗って、アニメ文化とダンスミームが交わる新たな流行として進化していくでしょう。