イヤイヤ期は、2歳前後に多くみられる「自我の芽生え」によって起こります。「お着替えしたくない!」「帰りたくない!」「あれもこれもイヤ!」といってイヤイヤする子どもに、どう対応したらいいか困っている保育士も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、イヤイヤ期の原因や子どもの気持ちを解説します。また、保育士の接し方や保護者との連携についても解説しますので、参考にしてみてください。

1 イヤイヤ期とは?

イヤイヤ期は「魔の2歳児」ともいわれており、自我の発達によって自己主張が激しくなる時期のことです。保育士も保護者も、突然やってくるイヤイヤ期に手を焼くことが多いのですが、実は成長に必要不可欠な過程なんです。

2歳前後の子どもは、自我が芽生えることで「自分でやってみたい」「自分で決めたい」と気持ちを表現し、自立への第一歩を踏み出しているのです。

ここからは、イヤイヤ期の時期や原因について詳しく解説します。

1‐1 イヤイヤ期はいつからいつまで?

イヤイヤ期には個人差がありますが、主に1歳半~2歳頃に始まります。ママやパパ、保育士などとは違う「自分の存在」を認識する時期にあたります。

3歳を過ぎれば、自己主張を言葉で伝えられるようになるため、イヤイヤが少し落ち着くように感じるかもしれません。

しかし、3歳以降はイヤイヤ期から反抗期に移行し、より対応が難しくなる子どもも多いようです。そのため、まずはイヤイヤ期の対応に慣れておく必要があります。

1‐2 イヤイヤ期の原因は?

イヤイヤ期の原因は、自我が芽生えたことによる自己主張が原因です。自分でできることが増え、自分の思いを通したいと考えることから始まります。

しかし、2歳前後の子どもは言葉の発達が不十分で、うまく自分の気持ちを伝えられません。本当は「眠たい」「もっと〇〇したかった」などの思いがあるのですが、気持ちを伝えられる言葉を知らないため「イヤイヤ」「ちがう」と表現してしまうのです。

2 イヤイヤ期の子どもが見せる姿

イヤイヤ期の子どもは、さまざまな理由で自己主張を始めます。「イヤ」「ちがう」という言葉だけで表現するため一見ただのワガママのように見えますが、そこには子どもなりの主張が隠れているのです。

ここからは、イヤイヤ期の子どもが見せる具体的な姿をご紹介します。

2-1 なんでも自分でやりたがる

2歳前後になると、子どもが自分でできることが増えていきます。しかし、保育士や保護者は子どものことを心配して、つい今まで通りお手伝いしてしまうことがあります。あきらかに難しいことに挑戦していたり、子どもに任せて待つ余裕がなかったりして、口を出してしまうこともあるでしょう。

すると、自分でやりたかったことを先回りして手伝われるが原因となり、子どもの怒りが奮闘してしまうのです。とはいえ、お手伝いしなければ難しくて「できない!」と怒るかもしれません。

どこまで手伝えばいいのかは、子どもの性格やその日の気分によってバラバラなのが難しい問題です。

2-2 できることを全部手伝ってもらおうとする

イヤイヤ期には、なんでも自分でやりたいという気持ちとは反対に「できるけど手伝ってもらいたい」ということもあるでしょう。

「自分でできるでしょ」「やってみて」といわれることが増えると、甘えたい気持ちになるようです。

2‐3 思ってもいないことを言ってしまう

イヤイヤ期には、思ってもいないことを言ってしまうことがあります。しかしそれは、本当の思いを言葉にして伝えられないことが原因です。

「手伝ってほしくない」「自分でやりたい」という気持ちを表現するために「ママあっちいって」と言ったり、「パパ、イヤイヤ」と言ったりします。

2‐4 強いこだわりを見せる

イヤイヤ期を迎える子どもは「秩序の敏感期」にあります。秩序の敏感期とは、自分が経験してきた秩序や順番に敏感になる時期のことです。

たくさんのことを吸収している乳幼児期には、自分なりの順番や決まり事を大切にして「いつもと同じ空間」を大切にする傾向があります。そのため、いつもと同じルーティンを崩されたときに異様に怒ることがあるのです。

3 イヤイヤ期の子どもへの保育士の接し方

イヤイヤ期の子どもの対応は、本当に大変です。ときには決まっていたスケジュールが予定通りに進まなかったり、泣き止まずに途方に暮れることもあるでしょう。

イヤイヤ期の対応に答えはなく、それぞれの子どもに合わせて対応を模索する必要があります。そこでここからは、保育士ができるイヤイヤ期の接し方をご紹介します。子どもの意見を尊重できるよう、しっかり向き合ってあげましょう。

3-1 気持ちを否定せず受け止める

イヤイヤ期の子どもは「自分でしたい」「今はしたくない」といった自分の意思を主張することが多くなります。その気持ちを否定することはおすすめできません。「気持ちを分かってくれない」「うまく伝えられない」という葛藤から、イヤイヤが長引く可能性があります。

まずは、子どもの気持ちをしっかりと受け止めてあげましょう。危険なことでなければチャレンジさせてあげたり「〇〇したかったんだね、わかるよ」と寄り添ったりして、気持ちを満たしてあげることが大切です。

3-2 脅したり交換条件をだしたりしない

急いでいると、子どもに指示通りに動いてほしいと感じるときがあるでしょう。しかし、そんなときに「早くやめないとオニがくるよ」「おやつをあげるから急いで」といった交換条件を提示する方法は避けましょう。

保育士が出す指示の本当の目的が伝わらないだけでなく、交換条件が出されないと動かない子どもになってしまいかねません。

3‐3 落ち着くまで待ってみる

言葉をかければかけるほど、イヤイヤがヒートアップすることもあります。そんなときは、落ち着くまで待ってみる対応がおすすめです。そのうち子どもは「なんで怒っていたんだろう?」と、冷静になるかもしれません。

また、落ち着いてから別のものに気持ちを逸らしても良いでしょう。興味がうつることで、子どもの気持ちがリセットされます。

3‐4 保育士自身が約束やルールを破らない

子どものイヤイヤの理由のなかには、急な予定変更に対応できないといったものもあります。

保育士自身が「〇〇してもいいよ」と言っていた遊びを「やっぱりダメ」とルールを変更すると、子どもは混乱してイヤイヤを発症するかもしれません。約束やルールはなるべく破らないよう、予定の変更に注意しましょう。

3‐5 保護者との連携を大切にする

イヤイヤ期の対応には、保護者との連携が必要不可欠です。子どもが見せるこだわりや、いつも怒るポイントなどを共有しておけば、先手を打ちうまく対応できるかもしれません。

また、寝不足や体調不良、心が不安定になるような出来事を共有できれば、いつも以上に子どもに寄り添うことができるでしょう。

4 イヤイヤ期のおもしろエピソードを保護者と共有して楽しもう!

保護者がお迎えにきたとき「今日もイヤイヤして大変でした」なんて、困っている気持ちをそのまま伝えてはいませんか?イヤイヤ期に疲弊しているのは保育士だけではありません。自我が出しやすいお家のほうが、もっと長い時間イヤイヤ期と戦っているということもあるでしょう。

保護者のなかには、対応に困り悩んでいる人も少なくありません。そのため、保育士から「毎日イヤイヤして困っている」なんて報告をすると、保護者を追い詰めてしまうことになりかねません。

せっかくなら、保護者とイヤイヤ期のおもしろエピソードを共有して「次はどんな面白いことが起きるかな?」と、楽しんでみてはいかがでしょうか?そこでここからは、実際にあった思わず笑ってしまうイヤイヤ期のおもしろエピソードをご紹介します。

4-1 つい流れでなんでもイヤイヤ言っちゃった…

自分でなんでも決めたい2歳のA君。その時期は「〇〇する?」「〇〇してね」という声掛けには、すべて「イヤイヤ」で返事をしていました。おやつが大好きなA君は、その日もとにかくイヤイヤ炸裂…。

「手を洗おうね」「イヤイヤ」
「泡で洗おうね」「イヤイヤ」
「タオルで手を拭こう」「イスに座ろう」「イヤイヤイヤ~!」

保育士が口を開くとすぐに「イヤイヤ」と反応していたので、ついうっかり「おやつ食べようか」の声掛けにも「イヤイヤ!」と言ってしまったのです。おやつ大好きなA君の発言に保育士はビックリ!

「え?おやついらないの?」「イヤいるいや!」
「え?おやつ食べるよね?」「イ…イルヤ!」

間違えておやつがイヤと言ってしまったA君は、怒るの忘れて恥ずかしそうに笑っていました。お迎えのときにママに報告して、一緒にクスクス笑ったエピソードです。

4-2 どうしてもこれがいいって言うんです…

朝、保護者に連れられて登園してきたBちゃんを見ると、あきらかに肌着のままでした。「あれ?お洋服忘れちゃったの?」そう聞くと、Bちゃんは恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべていました。

「実は、この肌着のキャラクターをどうしても先生に見せたいといって聞かなくて…」保護者は朝の忙しい時間に起きたイヤイヤの一部始終をお話してくれました。

翌日お迎えの前にBちゃんは「イヤ!これじゃイヤなの!」と、さっきまで着ていたTシャツを脱ぎ捨て、またお気に入りの肌着に…。「でもちょっと寒いかもしれないよ?」と聞くと、Tシャツを着てから肌着を着るという「逆重ね着」に落ち着きました。

お迎えにきた保護者に「どうしてもこれがいいって言うんです…オシャレさんですね!」と伝えて、一緒に大笑いしました。「まあいいか…」と諦めて楽しむことも大切です。

5 まとめ

誰もが避けては通れないイヤイヤ期ですが、子どもの本当の気持ちを想像すると、その理由が見えてくるかもしれません。保育士は、それぞれの子どものイヤな気持ちと向き合い、適切な接し方を模索することが大切です。

また、イヤイヤ期に疲弊している保護者の対応も保育士の重要な仕事です。イヤイヤ期に起きたエピソードを面白おかしく共有しながら、乗り越えていきましょう。

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