自立心を育てることは、子どもが正しく成長するためにとても必要なことです。
しかし、子ども自ら自立心を高めていくことは基本的にはできません。
そこで大事になるのが、子どもたちの教育者である保育士が自立心を自然と高められるような環境を意識的に作り出すことが重要です。
そこで今回は、子どもの自立心を育てるためのメリットから十分に育っていない場合の危険性まで詳しく解説していきます。
さらに記事の後半では、保育士として子どもたちへどのようにサポートするべきかの方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.子どもの自立心とは?
自立心は子どもたちが正しく成長し、社会へ出ていくためにとても重要な要素です。
とくに子どもの自立心は以下の5つの要素で構成されています。
- 自己主張:自分自身の意見や考えを主張すること
- 主体性:自分の意志や判断に責任を持って行動すること
- 自発性:自ら進んで行動を起こすこと
- 判断力:ものごとの善悪を考えて、判断できる能力
- 独立性:決められたことを自分の意志で守れる能力
さらに厚生労働省による子どもの自立心は以下のように説明されているのです。
「身近な環境に主体的に関わりさまざまな活動を楽しむ中で、しなければならないことを近くし、自分の理からで行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信をもって行動するようになる。」
引用:厚生労働省|保育所保育指針解説
このように自立心はこれから成長して大人になっていく子どもたちにとっては、絶対に身につけるべきことであると言えるでしょう。
同時に自立心を高めるために必要なそれぞれの要素は、子ども自ら高めていくことは非常に困難です。
したがって、自立心を自然と身につけられるような環境を指導者である保育士が作っていくことが重要になります。
子どもが自分で、ものごとについて「考え・判断し・行動する」ことができるような環境をづくりをすることが子どもたちの自立心を高めるきっかけとなるのです。
2.自立心を育てるメリット3つ
子どもたちが自立心を身につけることのメリットは大きく3つあります。
- 自分で考えて行動ができるようになる
- 目標や信念を持てるようになる
- 客観的にものごとを判断できるようになる
上記のメリットは子どものうちから自立心を育てておくことで、身に付く代表的な要素です。
幼児期に教育として自立心を育てておくことでより良い人格教育をすることができます。
それでは、それぞれのメリットについてもう少し深く解説していきます。
2-1.自分で考えて行動ができるようになる
自立心が高まることで、ものごとに対して自分の意見や主張を入れながれ行動できるようになります。
たとえば、自立心が十分に育っていない人の場合は、自分の意見を持つということ自体に慣れていないため、何か決めるときに「他人の意見に流される」ことが多いです。
一方、自立心が育っていると自分の意見や主張をしっかりと持つことができるので、安易に他人の意見に流れるようなことは少なくなります。
ただし、ここで注意していただきたいのが「他人の意見に流されない=我を通す」ということではないということです。
本当の自立心を身につけている人は、安易には他人の意見に流されませんが必要な場面であれば適切に他人を頼ることもできると言えるでしょう。
2-2.目標や信念を持てるようになる
目標や信念と聞くと自立心とは関係ないように思えますが、自立心を構成する要素の中に「独立性」と「自主性」というものがあります。
これらの要素は、子どもが自分の決めた目標に向かってどのように努力していけばいいのかを考えられるようになるために必要な要素です。
たとえば、子どもが成長すると高校をはじめ大学や就職など「人生における大きな選択」というのは誰にでもありますよね。
このような状況で自立心が十分に育っていない場合は、すべての進路や選択を他人の意見に任せたりインターネット上の情報に流れたりしてしまうのです。
ですが、自立心がしっかりと身についていれば、自分の目標や信念に向かって正しい判断をすることができるようになります。
2-3.客観的にものごとを判断できるようになる
自立心を身につけることにおいて1番重要になるのが、客観的にものごとが見れるようになるという点です。
先ほどから述べているように自立心が高くなると自分で判断し、行動できるようになります。
つまり、ものごとに対して自分の責任感や目標など総合的に判断できるようになるということです。
これは、子どもに限らず大人になってもとても重要な考え方の基礎となりますよね。
自分の意見や見解だけを述べるような主観的な判断だけでなく、他人の意見・主張を受け止めたうえで判断できるようになるというのも自立心を育てる大きなメリットとなるのです。
3.自立心が育たないと起こる4つの危険性
自立心を育てることで直接的ではなくても、子どもが成長したときにとても大きな影響を与えるということがわかったと思います。
では、自立心が育っていない子どもはいったいどうのように成長してしまうのでしょう。
ここでは自立心が育っていないと起こる危険性を4つに分けてご紹介します。
3-1.責任感がなくなる
まず1つめの危険性は、責任感がなくなってしまうことです。
自立心があまり育っていないと、自分の意見・主張を持って行動することができなくなります。
その結果、他人から指示をもらわないと動けないような人間になってしまうのです。
たとえば、先述した進学先や就職先などを決めるときに自分では判断できないため、親や他人に決めてもらうというのが代表的でしょう。
一般的には「自分で決める」という責任感を十分に意識することで目標に向かってかんばりますが、責任感がないと自分で決めるということができなくなってしまうのです。
3-2.他人の意見に流される
2つめの危険性は、何事も他人の意見に流されやすくなるという点です。
自立心が育っていない子どもは、はっきりとした自分の意見・主張を持つことができません。
そのため、他人から「〇〇のほうがいいよ」のように別の意見を言われるとすぐに他人の意見へ乗ってしまうという傾向があります。
たとえば、自分で何をするか考えるときに保育園の先生から「〇〇をしてみたらどう?」と言われるとその言われたことしかやらないという子が当てはまるでしょう。
このように先生から提案されたことしかできなくなると、やがて今何をすべきなのか自分で考えずに答えを求めてくる性格になってしまうのです。
3-3.自分の非を認めず他人のせいにする
3つめの危険性は、自分の非を認めず他人のせいにしてしまうことです。
自立心が十分に育っていないと先ほどの述べたとおり、責任感というものを感じにくくなります。
その結果、「自分の行動=他人からの意見」という考えとなってしまい、もし自分が失敗してもすべて他人のせいにしてしまうのです。
たとえば、一緒に遊んでいたお友達と自分の行動が原因で喧嘩になったとしても、どうにか自分が悪くないということを優先に考えるようになります。
つまり、もし自分の行動が原因で喧嘩になってしまっても素直に謝れず他人のせいにしてしまうということです。
3-4.自分で決断できない
最後の危険性は、自分でものごとを決断できないという点です。
これは先ほどから述べているように、自立心が育っていない子どもは「責任感がない」、「他人の意見に流されやすい」、「悪いことは他人のせいにする」という傾向が非常に強くなります。
上記の要素をすべて合わせると結果的にものごとを自分で決断できなくなってしまうのです。
自分で何かを決断するには、自分自身への責任感や自分の意見というものが必要になってきます。
しかし、自立心が十分に育っていないと責任感も自分の意見も持つことができなくなってしまいすべてが他人任せということことになりかねません。
したがって、自立心を子どもの頃から育てておかないと将来的にとても苦労してしまうということになります。
4.子どもの自立心を養う具体的なサポート方法とは?
それでは最後に子どもたちの自立心を養うために保育士が行うべきサポート方法をご紹介します。
単に子どもの自立心を育てることが大事という点が知っていてもあまり意味はありません。
子ども一人ひとりに対して適切な方法で自立心を高めていくことが重要になるでしょう。
4-1.家庭と連携して子どもの自立心を高める
保育園にはたくさんの子どもたちがいますよね。
そのため、保育士だけで子ども一人ひとりの自立心を高めていけるようにがんばるのは、正直限界があると思います。
そこで重要になるのが、家庭との連携です。
具体的には、お迎えのときなどちょっとした時間を活用して保護者に子どもの状況を伝えるだけもいいでしょう。
保育園での様子を保護者と共有することで、保育園と家庭という2つの場所でより効果的に自立心を育てることができるようになります。
ここでとくに覚えていただきたいことが「自立心を育てるには保護者の協力が不可欠」という点です。
保育園と家庭という2つの環境をうまく連携させて自立心を育てていきましょう。
4-2.自信を持って行動ができるようにサポートする
自立心が育たない大きな原因の1つとして、子どもが自分の意見や行動に自信が持てないという点があります。
つまり、保育士としてはその子が自信を持って行動できるようにより良い環境づくりをする必要があるということです。
たとえば、園児が何かに挑戦して成功したときは大げさくらいに褒めてあげたり、結果だけでなく頑張っている途中でも褒めてあげるなどが効果的でしょう。
子どもにとって大人から褒められるというのは、自立心だけでなく「褒めてもらえた」という自己肯定感の向上につながります。
4-3.相手の「いいところ」を探させる
自立心を育てるためにはどうしても自分以外の他人を意識させる必要があります。
この「他人を意識させる」という点でおすすめなのが、相手のいいところを探させることです。
相手のいいところを意識的に探させることで、他人を認識するというきっかけを作ることができます。
ただし、いきなり「いいところを探してみよう」と言ってもなかなか自分の意見を言えないという子もいるので、できれば保育士がきっかけを作れるといいでしょう。
具体的には、「〇〇くんはいつも元気にあいさつできるよね」のように見本となる言葉を与えてあげます。
すると、子どもは真似をしながら相手のいいところを言えるようになるでしょう。
このように意識的に自分以外を認識して考えさせることで、自立心を養うだけでなく子ども同士のコミュニケーション能力を向上させることもできます。
5.まとめ:自立心を育てるには「過保護」はNG!
今回は子どもの自立心を高めることのメリットから保育士ができる具体的なサポート方法まで解説をしました。
とくに自立心が幼児期に身についていないと、今の時点では問題がなくても5年後、10年後に大きな影響を与えてしまいます。
そのため、子どもたちの人格教育をするとても重要な施設でもある保育園に通っているときから少しずつ自立心を高められるようにサポートしてあげましょう。
ただし、本文でも述べましたが決して「保育士だけで」子どもの自立心を高めようとしないことが重要です。
しっかりと保護者とも連携を取りながら、その子にとって1番良い環境で自立心を育ててあげてください。
また、まだ子どもだからと言って過保護になってしまうことはNGです。
保育士はサポートすることも大事ですが、同時に「見守る」ということも重要になります。
注意深く見守りながらも成功したら思いっきり褒めてあげるようにしましょう!