モンテッソーリ教育とは、子ども自身が自分を育てる「自己教育力」を大切にする教育法です。100年以上前に提唱された教育法ですが、今でも多くの保育園や幼稚園に支持されています。

そのため、モンテッソーリ教育を行っている保育園で働いたことがある、もしくは働いてみたいと考える保育士も多いのではないでしょうか?そこで今回は、モンテッソーリ教育の基本や、導入している保育園で働くための知識について詳しく解説します。

1 モンテッソーリ教育とはどんな教育?

モンテッソーリ教育とは、子どもの自主性を大切にする教育法のひとつです。ここでは、モンテッソーリ教育が誕生した背景や、基本の考え方について解説します。

1-1 モンテッソーリ教育の概要

モンテッソーリ教育は、イタリアの医師でもあり、教育家でもあるマリア・モンテッソーリが考案した教育法です。モンテッソーリ教育は、障がいのある子どもたちへ行っていた「感覚教育法」から開発されました。

マリア・モンテッソーリは、障がいのある子どもだけでなく、たくさんの子ども達を観察して「子どもには自分で自分を育てる力がある」といった考えを呈しました。現在では、世界各地で支持される教育法となっています。

1-2 モンテッソーリ教育の考え方

モンテッソーリ教育の基本的な考えは「自己教育力」を前提としています。例えば子どもは、産まれてから大人に教えられなくても歩けるようになり、言葉を話せるようになります。モンテッソーリ教育は、そのような自己教育力を大切にします。

つまり、大人の教育法に当てはめることなく、子どもの自発性を尊重し、発達段階によって環境を整え、子どもが自ら成長できるよう促す教育法です。

2 モンテッソーリ教育とは具体的にどんな内容?

100年以上前に確立されたモンテッソーリ教育は、1960年代から日本に導入され始めました。ここでは、モンテッソーリ教育の考え方に基づいた、具体的な教育方法を解説します。

2-1 自主性を大切にする教育

モンテッソーリ教育では、子どもの自主性を重要視しています。大人の基準で子どもを育てるのではなく、あくまで「子ども主体で動けるように環境を整える存在」を徹底します。

そのため、設定保育などの決められた活動はありません。モンテッソーリ教育では「お仕事」と呼ばれる時間があり、独特な教具を用いて活動します。このお仕事は自ら選択して行うため、教育者はあくまでも自主性を大切にするために見守るだけの存在です。

2-2 敏感期の思いを尊重する教育

モンテッソーリ教育では、子どもが「自分でやってみたい」と意欲を示す時期のことを敏感期と呼んでいます。この敏感期の子どもの思いを大切にすることで、脳や体の発達を促すことができるとされています。敏感期は、以下のように子どもの発達段階によって求められる行動が異なります。

  • 五感をため込み整理する「感覚の敏感期」
  • 単語から二語文や文章を話せるようになる「言語の敏感期」
  • 物事の順番へこだわりを見せる「秩序の敏感期」
  • 新しい動作・運動にチャレンジする「運動の敏感期」
  • 年齢や数に対して興味関心を持つ「数の敏感期」

以上のように、子どもの発達段階によって敏感になる項目は異なります。子どもがやりたいと思う活動は日々変化しており、教育者は子どもをよく観察して、その思いを尊重しなければなりません。

2-3 環境を整えた教育

モンテッソーリ教育には、整えられた環境が必要であると提唱されています。環境構成は、子どもの自主性を尊重するうえでも重要なポイントになります。

たとえば、子どもが自分で活動を選択できるよう、教材や教具を準備し、作業場所を「整理整頓」しておきます。すると、子ども達は、自ら気になる活動を選択し、集中できる環境の元で取り組めます。同じく、発達段階に合った環境を整えることも大切です。

3 モンテッソーリ教育のメリット・デメリット

モンテッソーリ教育の教育志向は、たくさんの保育園で導入されています。ここでは、モンテッソーリ教育を導入するメリットとデメリットをご紹介します。

3-1 モンテッソーリ教育のメリット

モンテッソーリ教育には、自主性を尊重することで、以下のようなさまざまなメリットが得られます。

  • 子どもの特徴に合った保育を行うことで個性が伸ばせる
  • 自ら選択する機会を多く持つことで自主性が身につく
  • 興味のあることに没頭できる環境が整っているため集中力が身につく
  • 教具の使用で手先が器用になり脳の発達を促す

以上のほかにも、自分の気持ちを認めてもらう機会が多いことから、情緒が安定するといったメリットもあります。子ども達にとって「自分でできた」は、大きな成長につながります。

3-2 モンテッソーリ教育のデメリット

メリットの多いモンテッソーリ教育ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 個性を大切にする環境であることから協調性に欠ける
  • 室内での活動が多く、運動面での成長が劣る
  • 手先を使った活動が多いことから、元気に動き回りたい子には難しい

以上のようなデメリットがありますが、1日中室内でお仕事や自由遊びをして、外遊びを行っていないわけではありません。また、異年齢保育を取り入れていることから、年齢の違う子ども同士での関りを体験しているため、協調性に関しても過度な心配は不要といえるでしょう。

4 モンテッソーリ教育の保育園で働く前に知っておくべきこと

モンテッソーリ教育を取り入れる保育園には、さまざまな特徴があります。モンテッソーリ教育は「自主性」を重視しているため、保育士の援助方法も通常の保育園とは異なります。ここでは、モンテッソーリ教育を導入している保育園で働くため知っておくべき特徴をご紹介します。

4-1 異年齢保育を導入している

モンテッソーリ教育では、異年齢保育を導入していることが多いようです。乳児クラスは月齢による個人差が大きいため、通常通り年齢別にクラス分けを行いますが、幼児は縦割りクラスで編成されます。

子ども達がお互いの姿から学びを得ることで、社会性や協調性を身に付けることができます。年長児は年少児のお手本になったり、優しくお世話することを学びます。年少児は年長児の姿を模倣し、チャレンジ精神を育みます。

4-2 日常生活を大切にしている

モンテッソーリ教育では、日常生活を大切にしています。体や指先を使って実生活に基づいた「日常の練習」と行います。例えば衣服の着脱なら、脱いだり着たりすることはもちろん、ボタンの付け外しや服をたたむ工程があります。保育士は「自分のことは自分でできるよう」見守ります。

また、日常生活を重視するモンテッソーリ教育では、行事が少ない傾向があります。行事の練習や準備のために日常生活が疎かにならないよう、年間行事は少なめに調整されています。

4-3 教具を使った「お仕事」の時間がある

モンテッソーリ教育の大きな特徴は「お仕事の時間」があることです。独特な体系のおもちゃを使って活動する時間です。このとき使われるおもちゃを「教具」と呼び、子ども達の自己形成のために使用されます。

実際に教具を使用することで、五感を刺激し、言語教育や算数教育などが可能になります。教具は子ども達の発達段階に合わせたものを準備し、「おもちゃ遊び」の時間と区別するため「お仕事」と位置づけています。

4-4 環境を整える必要がある

モンテッソーリ教育には、子ども達の自主性を育てる環境構成が必要です。保育士が積極的に指導するのではなく、興味関心を抱くような環境を整えて見守る姿勢で関わります。

お仕事のスペース確保や、自ら興味を持った教具を選択できる環境、本物や美しい物と触れ合える時間など、子どもの発達段階に合わせた環境を整備します。

5【Q&A】モンテッソーリ教育に関するよくある質問

モンテッソーリ教育を導入している保育園も多く、興味を持っている人も多いでしょう。ここでは、モンテッソーリ教育に関するよくある質問をご紹介します。

5-1 Q:モンテッソーリ教育には資格が必要ですか?

A:保育士としてモンテッソーリ教育を導入する保育園に勤務するなら不要

モンテッソーリ教育を導入している保育園で保育士として勤務する場合は、保育士資格の取得だけで問題ないでしょう。しかし、モンテッソーリ園で「モンテッソーリ教員」として勤務する場合は、国際モンテッソーリ協会が認定する国際免状、または日本モンテッソーリ協会などの団体が認定する日本独自の免状が必要になります。

5-2 Q:どのような保育士がモンテッソーリ教育に向いていますか?

モンテッソーリ教育を導入する保育園での保育士の役割は、「自主性を尊重する」ために見守ることです。自由保育が多く、子どもが自ら成長する姿を楽しめる保育士が向いています。反対に、行事や設定保育に力を入れたいと考える保育士には物足りなさを感じるでしょう。

6 まとめ

モンテッソーリ教育では、子ども達が自ら成長する過程をサポートする教育法です。保育士の考えを子どもに押し付けることなく、見守るスタンスを貫きます。

独自の教具や環境構成には、子どもの自主性を高める効果があり、モンテッソーリ教育の重要性には注目が集まっています。また、子育てに、モンテッソーリ教育思想を取り入れたり、教具を使用したりする家庭も増えているようです。

保育園によって、さまざまな教育法が取り入れられていますが、モンテッソーリ教育に興味がある人は見学に行ってみてはいかがでしょうか。

Share.

子育て・教育・介護・医療・健康・LGBT・教養・法律など福祉を中心にしたテーマを発信する専門家集団です。各分野の専門家の意見や取材、キュレーションを通じて、幅広い視点で子育て世帯・介護世代に情報価値を提供します。日本の福祉の未来をつなぐ架け橋として活動を行っています。

Exit mobile version