保育園側にとって保育士を1人採用するためにもそれなりのコストがかかっています。そのため、可能な限り失敗したくないというのが採用担当者の本音でしょう。

しかし、保育業界における離職率は2015年の時点で「10.3%」と厚生労働省が発表しており、せっかく保育士を採用できてもさまざまな理由から離職されてしまうケースも多いです。一方で、潜在保育士と呼ばれる人たちはおよそ70万人以上いるとされていることから、今後はすでに保育士として勤務している方以外も採用できるような工夫が必要になるでしょう。

そこで今回は、保育士の採用を成功させるために必要な方法と実際に求人を掲載するときの具体的な注意点を解説します。とくに記事後半に解説する注意点では、採用した保育士ができるだけ長く勤務できるような工夫も紹介しますので、ぜひ最後までじっくりご覧ください。
参考:保育士等における現状|厚生労働省

1.保育士の採用を成功させる効果的な方法とは?

現在の保育士採用の現状としては、慢性的な保育士不足によってどの保育園も保育士を採用したいと力を入れているため、採用コストが以前よりも徐々に高くなっています。したがって、保育士の採用を効率よく成功させることは、保育園の経営面からも重要なことです。

そこでとくにおすすめしたい方法は、以下の4つです。

  • ①保育士専門の求人サイトに掲載する
  • ②ハローワークと連携して人材を確保する
  • ③求人検索エンジンに求人情報を掲載する
  • ④専門学校や大学と連携する

上記の中でも求人サイトへの掲載や求人検索エンジンの利用については、ある程度のコストが必要ですが、その他の方法はそこまで大きなコストがかからないため、採用コストを抑えたいと考えている方にとってもおすすめな方法です。

それでは、それぞれの方法についてもう少し詳しく解説します。

1-1.①保育士専門の求人サイトに掲載する

1つめは、保育士専門の求人サイトに求人情報を掲載する方法です。一般的な大手求人サイトの場合、利用しているユーザーの数は圧倒的ですが、採用担当者側が求めているような保育士を採用できるかというとかなり難しいでしょう。

なぜなら、大手求人サイトは保育士の仕事以外の求人も掲載されているため、必ずしも「保育士として働きたい」と考えているユーザーは多くないからです。一方、保育士専門の求人サイトは、保育士関連の仕事しか掲載されておらず、登録しているユーザーも保育士関連の仕事がしたいと考えている人ばかりになります。

つまり、求人サイトを活用して保育士の採用を図りたい場合は、さまざまな職種の求人が掲載されている大手求人サイトではなく、保育士専門の求人サイトを利用するようにしましょう。

1-2.②ハローワークと連携して人材を確保する

現在ではインターネットがかなり普及しているため、求人サイトを利用して就職および転職活動をする方が増えています。しかし、ハローワークを通じて求職している方も多いです。

さらにハローワークに求人を掲載するときの費用は、一切かかりません。そのため、採用コストを抑えたいと考えている方にとっては、非常におすすめな方法とも言えるでしょう。

ただし、ハローワークに掲載する求人には、「ハローワークからのお願い」という形でさまざまな条件があるため、実際にハローワーク経由で人材を確保する場合は注意が必要です。ちなみにハローワークでの求人掲載条件は「求人申込み、採用・選考に当たっての留意事項 ~ハローワークからのお願い」から確認できます。

また、ハローワークでは求人を掲載するだけでなく、各種助成金制度についても案内してもらえるため、利用するメリットはかなり多いでしょう。

1-3.③求人検索エンジンに求人情報を掲載する

求人検索エンジンとは、ユーザーがある特定のキーワードでインターネット検索をしたときに自動的に求人情報が掲載されるものです。例えば、「保育士 東京」のように職種+勤務地というキーワードで検索すると、求人情報が表示されます。これが求人検索エンジンです。

また、代表的な求人検索エンジンとしては以下のようなサービスがあります。

  • Indeed(インディード)
  • 求人ボックス
  • Googleしごと検索
  • Careerjet

求人検索エンジンを利用するには、利用料としてコストがかかりますが、少額で利用できるサービスも増えているため、低コストで採用したい方にとっても有効でしょう。さらに求人検索エンジンの場合、一般的な求人サイトと比べて「検索キーワードによるフィルター」があります。

そのため、保育園に就職したいと考えている求職者が入力しやすいキーワードを想定しておくことで、希望する人材の確保が期待できるでしょう。

1-4.④専門学校や大学と連携する

最後は、保育士の資格が取得できる専門学校または短期大学などをはじめとする大学と連携することです。厚生労働省による調査では、「保育士養成施設卒業者の約半数が保育所に就職している」と述べられています。

出典:保育士等における現状|厚生労働省

つまり、学校側と連携して求人情報を学校内に掲載もしくは紹介してもらうことで、多くの新卒保育士を採用できる可能性が高くなるでしょう。また、専門学校や大学との連携においても費用がかからないことが多いため、結果的に採用コストを下げられるメリットもあります。

2.保育士を採用するための求人を出すときの注意点3つ

ここまでに保育士の採用を成功させる具体的な方法について解説しましたが、求人情報を出すときには以下の3つに注意が必要です。

  • 保育士の求めているニーズを汲み取る
  • 紹介制や再雇用制度など勤務しやすい環境を整える
  • キャリアアップサポートの有無についても記載する

前述しているように保育士という職種は、離職率が高い傾向にあるため、単に保育士を働き手として採用してしまうと比較的短期間で退職する可能性もあります。そのため、保育士が働きやすい環境を整えることもこれから重要になってくるでしょう。

それぞれの注意点についてもう少し詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

2-1.保育士の求めているニーズを汲み取る

厚生労働省が発表している「保育士としての就業を希望しない理由」では、以下のような結果になっています。

出典:保育分野における人材不足の現状①|厚生労働省

上記のグラフからわかるように保育士を就業しない理由でもっとも多かった意見は、「賃金が希望と合わない」でした。このように保育士と働きたくても労働に見合った賃金を設定できないと、退職してしまう可能性が高くなります。

したがって、保育士が就業するにあたってどのような希望があり、採用する側はどこまで希望に寄り添えるかを検討し、保育士が長く安心して勤務できる環境を整えることが重要です。

2-2.紹介制や再雇用制度など勤務しやすい環境を整える

保育士の中には、産休や育休を取る過程で子育てと仕事の両立が厳しくなり、退職してしまう方も多くいます。そこで、やむを得ない理由で退職してしまった保育士を再雇用する制度を新たに設けるもかなり効果的でしょう。

また、保育士の勤務環境を整えたうえで、報酬ありの保育士紹介制度を設けられれば、保育士と保育園双方にメリットのある状況を作ることも可能なためおすすめです。

2-3.キャリアアップサポートの有無についても記載する

保育士に就職しようか悩んでいる方の多くは、キャリアアップ研修制度をはじめとするさまざまな待遇改善の制度を知らない可能性が高いです。そのため、求人情報の内容にキャリアアップサポートを行うと記載しておくと良いかもしれません。

なぜなら、待遇を改善できるキャリアアップ研修という制度があっても、普段の仕事を行いながらキャリアアップを図るのはかなり難しいからです。したがって、賃金アップも見込めるキャリアアップを保育園側もサポートする旨を記載しておくと、求人を見た保育士にとっては魅力的に感じます。

このように保育士の採用を成功させるには、単なる人材確保として保育士の募集をするのではなく、就職後の保育士のキャリアまでサポートできるような体制が取れると、採用コストを抑えながら人材確保も成功しやすくなるでしょう。

3.保育士を採用する側が積極的に魅力を発信していく時代

今回は、保育士の採用を成功させる具体的な方法とその注意点について解説をしました。昔と比べてインターネットやSNSなどのツールが普及していることで、保育士を募集する媒体はかなり多くなっています。

しかし、保育士の採用を成功させるには、求人を掲載して待っているだけでは希望する人材を確保できない可能性が高いです。そのため、これからは保育士を採用する側が積極的に保育士という職種の魅力を発信していくことが重要になるでしょう。

ぜひ、これから保育士の採用を成功させ、人材確保をしていきていきたいと考えているのであれば、今回解説した方法と注意点を参考に実施してみてください。

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