長い夏休みが終わりに近づくと、子どもの「学校行きたくない」というひとことに、朝から胸がざわつく保護者の方もいるのではないでしょうか。
「今日は休ませていいのか」「ここで休んだら、そのまま学校へ行けなくなるのでは」「無理にでも行かせた方がいいのか」。登校時間が迫るなかで、短時間に大きな判断を求められたように感じることもあります。
結論から言えば、まず優先したいのは「学校へ行かせること」ではなく、子どもの心身の状態と安全を確認することです。休ませるか、登校するかを一律の基準だけで決めるのではなく、その日の状態を見ながら学校とも状況を共有し、必要であれば相談先につなげていきます。
文部科学省は2026年7月3日、児童生徒の自殺は長期休業明け前後に増える傾向があるとして、学校、保護者、地域、関係機関が連携した見守りの強化を求めています。「学校行きたくない」という言葉のすべてを深刻な危機と結びつける必要はありませんが、夏休み明けは家庭だけで変化を抱え込まず、子どもの様子を丁寧に見ることが大切な時期です。
(参照:令和8年7月3日児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)|文部科学省)
夏休み明けに「学校へ行きたくない」と言われた当日の対応、休ませる判断の考え方、避けたい声かけ、学校への連絡方法、相談先までを具体的に整理します。
目次
夏休み明けに「学校行きたくない」と言われたら、まず何をすればいい?
朝いちばんに理由を聞き出す必要はありません。まずは普段との違いを見ながら、子どもが今どの程度つらい状態なのかを確認します。
夏休み明けの朝は、親にも時間がありません。「あと30分で家を出なければ」「自分も仕事に行かなくては」と焦るなかで、「何が嫌なの?」「昨日まで元気だったでしょう」と原因を急いで聞きたくなることもあるでしょう。
しかし、その時点で優先したいのは原因を完全に突き止めることではありません。まずは子どもの状態と安全を確認し、そのうえで今日の対応を考えます。
当日の朝、やるべきこと・避けたいこと
最初に確認したいのは、「学校が嫌な理由」よりもいつもの朝と何が違うのかです。
- 昨夜は眠れていたか
- 朝食や水分をとれているか
- 頭痛、腹痛、吐き気などの身体症状がないか
- 泣く、震える、動けないなど強い反応がないか
- 強い不安や恐怖を訴えていないか
- 「学校で怖いことがある」などの発言がないか
- 自分を傷つける行為や「消えたい」「いなくなりたい」といった発言がないか
厚生労働省も、子どものこころのSOSは気持ちだけでなく、体調や行動の変化として現れることがあり、不登校や自傷、自殺をほのめかす言動などの背景に、こころの問題が隠れている場合があると案内しています。
(参照:子どものSOSサイン|厚生労働省)
もちろん、「学校へ行きたくない=こころの病気」という意味ではありません。言葉だけで決めつけず、普段との違いを見ることが重要です。
一方で、朝から何度も「なんで?」「理由を言って」と問い続けることは避けたいところです。子ども自身にも、友達なのか、勉強なのか、先生なのか、生活リズムなのか、何がつらいのか整理できていない場合があります。
「友達のこと?」「授業?」「先生?」「体がしんどい?」「自分でもよく分からない感じ?」と選択肢を置くと答えやすい子もいます。それでも分からなければ、その朝に答えを出さなくても構いません。
これは「甘え」ではないという前提を共有する
正確には、その朝の段階で「甘え」と決めつけないことが大切です。
長期休業明けには、生活リズムの変化、学習への不安、友人関係、クラスへの緊張、単純な疲れなど、さまざまな要素が重なることがあります。一方で、原因を最初から「夏休み明けだから」と決めつけることも避ける必要があります。
「学校へ行きたくない」と言ったときに、「甘えているだけ」「みんな行っている」と結論づけるより、まず現在の状態を見る。そのうえで、登校するのか、休むのか、別の方法を学校と相談するのかを考える方が、次の行動につながりやすくなります。
編集長コメント
親にとって難しいのは、「学校へ行かせた方がよい」という考えも、「今日は休ませた方がよい」という考えも、どちらも子どもを心配しているからこそ生まれることです。
だからこそ、その朝を「登校できた=成功」「休んだ=失敗」と採点しない方がよいと考えています。一度の判断ですべてを解決しようとせず、「今日は何が起きているのか」「次につながる情報を一つ得られたか」と考える。親にも、正解を一度で出さなくてよい余白が必要です。
休ませる・様子を見る・相談する、どう見分ける?【状態別判断表】
「何日続いたら相談する」といった一律の日数基準はありません。心身の状態、安全面、本人との対話、学校との情報共有から、その日の対応を考えます。
「休ませる目安」を知りたいとき、明確な日数や回数があった方が安心に感じるかもしれません。しかし、「1日なら家庭で様子を見る」「1週間なら専門機関へ」と機械的に分けられるものではありません。
強い身体症状や恐怖、安全への懸念があれば初日でも相談が必要な場合があります。一方で、比較的落ち着いて話せる場合には、本人と話しながら学校側とも選択肢を考えることができます。
| 子どもの状態 | まずすること | 避けたいこと | 学校への対応 | 次の行動 |
|---|---|---|---|---|
| 比較的落ち着いて話せる | 体調と本人の気持ちを確認する | その場ですぐ結論を迫る | 必要に応じて状況を共有する | 登校方法を含め学校と相談する |
| 心身のつらさが強い | 安全と休息を優先する | 無理に準備や登校を続けさせる | 欠席・遅刻等と現在の状態を伝える | 症状や状態に応じて学校・医療等へ相談する |
| 自傷や「消えたい」など安全上の懸念がある | 安全確保を優先する | 登校の問題だけとして扱う、家庭だけで抱える | 必要な範囲で状況を共有する | 医療機関や専門的な相談先につなぐ |
この表は、不登校や病気を診断するためのものではありません。「今朝は何を優先するか」を整理するための目安として使ってください。
文部科学省は、不登校児童生徒への支援について、「学校に登校する」という結果だけを目標にするのではなく、本人が主体的に進路を捉え、社会的に自立することを目指す必要があるとしています。また、学校、家庭、教育支援センター、必要に応じて医療や福祉などが連携する重要性も示しています。
(参照:不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)|文部科学省)
文部科学省は「COCOLOプラン」においても、校内教育支援センターの整備やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等による支援、教育支援センターなど多様な学びの場の確保を進めています。2026年7月には取組事例集も追加されています。
(参照:不登校対策(COCOLOプラン等)について|文部科学省)
初めの72時間を考えるなら、次のように整理できます。
- その朝:心身の状態と安全を確認する
- 当日:必要なら学校へ現状を共有し、休息と観察を優先する
- その日の夜:本人が話せそうなら、朝に何がつらかったかを少しずつ確認する
- 翌朝:もう一度状態を確認し、続いている場合は学校へ経過を共有する
- 48〜72時間:状態が続く、親だけでは判断しにくい場合は、学校内外の相談先へつなげる
これは「72時間以内に解決する」という意味ではありません。最初の数日間に、家庭だけで抱え込まず、必要な人とつながることを目的とした考え方です。
学校にはどう連絡すればいい?【欠席連絡テンプレート付き】
原因が分からなくても、「今朝、登校への抵抗がある」という事実をそのまま伝えて構いません。原因を家庭で完全に突き止めてから学校へ連絡する必要はありません。
学校への連絡は、保護者にとって意外に負担の大きい作業です。「きちんと説明しなければ」「サボりだと思われたくない」と考えるほど、文章が難しくなります。
しかし、最初の連絡で必要なのは完成した原因分析ではなく、家庭で今起きている事実を共有することです。
担任への連絡文テンプレート
理由がまだ分からない場合は、たとえば次のように伝えられます。
今朝、本人から「学校へ行きたくない」という訴えがあり、登校への抵抗が強いため、本日は家庭で様子を見ます。現時点では、本人も理由をうまく説明できていません。学校で最近気になる様子などがありましたら、教えていただけますでしょうか。
友人関係について気になる話が出ている場合は、確認できていないことを断定せず、次のように共有できます。
今朝、登校を嫌がっており、本人から友人関係について少し気になる話がありました。まだ詳しく話せる状態ではないため、学校で最近いつもと違う様子や、友人関係で気になることがなかったか確認いただけると助かります。
一日休んでも翌日の登校に強い不安が続いている場合には、経過を伝えたうえで、担任だけでなく養護教諭やスクールカウンセラー等への相談が可能か確認してみてもよいでしょう。
連絡時に伝えなくてよいこと・伝えたほうがよいこと
家庭内の事情をすべて詳しく説明する必要はありません。ただし、子どもの状態や学校での配慮に関係する事情がある場合は、必要な範囲で共有すると支援につながりやすくなります。
特に共有しておきたいのは、次のような情報です。
- 今朝どのような様子だったか
- 頭痛、腹痛、吐き気など学校側にも知っておいてほしい身体症状があるか
- 本人が学校や友人について何か話しているか
- 登校への抵抗が前日以前から続いているか
- 学校側で最近気になる変化がなかったか確認したいこと
初回ですべてを説明する必要はありません。現時点で分かっていることを伝え、状況が見えてきたら情報を追加していけば十分です。
相談先はどこにある?学校内・学校外の窓口一覧
相談先は担任だけではありません。「相談するほどか分からない」という段階でも、学校内外の窓口へ状況を相談できます。
「まだ不登校というほど休んでいないから」と、相談を先延ばしにする必要はありません。保護者自身が対応に迷っていることも、相談する理由の一つです。
学校内の相談先(担任・スクールカウンセラー・校内教育支援センター)
学校内では、次のような人や場所が相談先になります。
- 担任・学年主任:日頃の学校での様子を把握しやすく、家庭との情報共有の起点になります。
- 養護教諭:体調や保健室での様子など、教室とは違う角度から相談できる場合があります。
- スクールカウンセラー:心理に関する専門的な視点から、子どもや保護者の相談に対応します。
- スクールソーシャルワーカー:家庭、学校、福祉などをつなぐ支援を行います。
- 校内教育支援センター:教室に入りづらい児童生徒が校内の別の場所で学習や相談を続けられる仕組みです。
配置状況や名称、利用方法は学校や自治体によって異なります。「担任には話しづらいけれど、養護教諭なら話せる」という場合もあるため、誰に相談するかを一つに限定する必要はありません。
(参照:不登校対策(COCOLOプラン等)について|文部科学省)
学校外の相談先(24時間子供SOSダイヤル、チャイルドライン等)
学校を通さずに相談できる窓口もあります。
- 24時間子供SOSダイヤル:いじめだけでなく、学校へ行くことや友人関係など、子どものSOS全般について、子ども本人や保護者等が24時間相談できます。
全国統一番号は0120-0-78310です。 - 教育委員会・教育支援センター:不登校や登校しぶりについて地域の相談窓口を設けている自治体があります。
- 親子のための相談LINE:子育てや親子関係について、18歳未満の子どもとその保護者等が相談できます。匿名でも利用できます。受付時間は自治体によって異なります。
- チャイルドライン:18歳までの子ども本人が利用できる相談窓口です。受付方法や時間は公式情報で最新の内容を確認してください。
24時間子供SOSダイヤルは、夜間・休日を含めて24時間対応し、原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。
(参照:24時間子供SOSダイヤルについて|文部科学省)
親子関係そのものに悩んでいる場合は、こども家庭庁の「親子のための相談LINE」も選択肢です。
(参照:「親子のための相談LINE」について|こども家庭庁)
心身の不調が強い場合の緊急時の注記
自傷行為がある、「死にたい」「消えたい」「いなくなりたい」といった発言があるなど、安全への懸念がある場合は、通常の登校しぶりとは切り分けて考えてください。
この場合に優先するのは、学校へ行かせるかどうかではなく、子どもの安全です。家庭だけで抱え込まず、医療機関や公的な相談窓口など、専門的な支援につなげることを検討してください。生命の危険が迫っているなど緊急性が高い場合は、救急要請など緊急の対応を優先してください。
また、頭痛、腹痛、吐き気などの身体症状が強い、繰り返す、長引く場合は、「学校へ行きたくない気持ちの問題」と決めつけず、必要に応じて医療機関へ相談してください。
厚生労働省は、自傷や自殺をほのめかす言動などの背景にこころの問題が隠れている場合があると案内しています。
(参照:子どものSOSサイン|厚生労働省)
よくある質問(FAQ)
夏休み明けの登校しぶりについて、保護者が迷いやすい疑問を簡潔に整理します。
- Q1. 休ませたら「甘え」を助長しませんか?
- 一日の欠席だけで「甘えを助長する」と判断することはできません。まず、その日の心身の状態を確認してください。登校しぶりが続く場合は、休ませ方だけを問題にするのではなく、本人が何に負担を感じているかを学校とも一緒に整理していくことが大切です。
- Q2. 何日休んだら「不登校」と呼ばれますか?
- 文部科学省の統計調査では、病気や経済的理由などを除き、何らかの心理的・情緒的・身体的・社会的要因や背景によって登校しない、または登校したくてもできないため、年間30日以上欠席した児童生徒を「不登校」として集計しています。ただし、30日になるまで相談や支援を待つ必要はありません。
- Q3. 学校にはどう連絡すればいいですか?
- 「今朝、登校への抵抗が強く、今日は家庭で様子を見ます。現時点では本人も理由をうまく説明できていません」など、現在分かっている事実を簡潔に共有すれば構いません。
- Q4. 担任以外に相談できる窓口はありますか?
- あります。養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、校内教育支援センターのほか、教育委員会や教育支援センター、24時間子供SOSダイヤルなどがあります。配置や利用方法は学校・自治体によって異なります。
- Q5. 「行きたくない理由」を無理に聞き出すべきですか?
- その場で無理に聞き出す必要はありません。「友達?」「授業?」「先生?」「体がつらい?」など答えやすい選択肢を示し、それでも分からなければ時間を置きます。
- Q6. 朝は腹痛や頭痛を訴えるのに、昼には元気です。仮病ですか?
- 昼に元気になったという事実だけで、朝の症状が嘘だったとは判断できません。一方で、すべてを心理的な問題と決めつけることも避け、身体症状が強い、繰り返す、長引く場合は医療機関への相談を検討してください。
- Q7. 何日続いたらスクールカウンセラーへ相談すべきですか?
- 「何日」という一律の基準はありません。保護者だけでは判断しづらい、登校への強い抵抗が続く、本人の様子が大きく変わったと感じる段階でも相談して構いません。
- Q8. 「消えたい」と言った場合はどうすればいいですか?
- 単なる登校しぶりとして扱わず、安全の確保を優先してください。本人を一人で抱え込ませず、医療機関や公的相談窓口など専門的な支援につなげることを検討します。生命の危険が迫っている場合は、緊急の対応を優先してください。
「休ませる」という判断を、親が責めなくていい理由
登校しぶりへの対応で難しいのは、親がどちらを選んでも迷いが残ることです。
休ませれば「甘やかしているのでは」と自分を責め、行かせれば「無理をさせたのでは」と気に病む。その朝の数十分で、子どもの将来まで左右するような決断を迫られている感覚になることもあるでしょう。
ただ、その日に休ませたという判断だけで、対応を「失敗」と考える必要はありません。
文部科学省も、不登校支援の目的を単純な学校復帰だけには置いていません。一方で、「学校へ行かなくてもよい」と一方向に結論づけているわけでもありません。本人の状況や背景を把握しながら、社会的自立や学校復帰に向けて、その子に合った支援や働きかけを行うという考え方です。
(参照:不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)|文部科学省)
編集長コメント
私は、「学校へ行かせることだけが正解」という考えにも、「無理なら行かなくていい」と簡単に結論を出すことにも、少し違和感があります。
学校は、学習だけでなく友人関係や社会との接点を持つ重要な場所です。一方で、今まさにつらい状態にある子どもに、登校という結果だけを求め続けても、問題の背景が見えなくなることがあります。
大切なのは、その朝の勝ち負けを決めることではなく、「今、この子に何が起きているのか」を見失わないことだと思います。家庭だけで抱えず、学校や周囲の人と情報をつなぎながら、明日も選べる状態を残していく。休むことも、登校することも、相談することも、そのための選択肢の一つです。
夏休み明けに「学校行きたくない」と言われたら、その朝だけですべてを解決しようとしなくて大丈夫です。
子どもの状態を見る。安全を確認する。必要なら学校へ伝える。そして、家庭だけでは難しいと感じたら相談する。
この順番を一つずつ進めていくことが、最初の72時間にできる現実的な対応です。
