加配保育士はさまざまな子どもたちを受け入れ、成長させるための保育園にとってとても重要な役割を担った保育士と言えます。

また、加配保育士の役割や求められる資格や知識をあらかじめ知っておくことで、あなた自身のキャリアにおける選択肢を増やすことができるでしょう。

そこで今回は、加配保育士の役割から国が用意している支援制度、加配保育士になるために必要な資格や知識について詳しく解説していきます。

1.加配保育士の役割とは?

加配保育士は、障害を持った子どもの保育を専門的に行う保育士のことです。この「加配(加配)」というのは、通常勤務を行う保育士に加えて配置される保育士のことを指します。

一般的には子ども2人につき1人を基準として保育士が配置されますが、特別な支援が必要な子どもを受け入れる保育園では、追加で加配保育士が配置されます。

とくに加配保育士は通常の業務を行う保育士に比べて、より子どもや保護者とのコミュニケーションを密にとったりさまざまなケアが必要になるので、それなりの専門知識が必要です。

それでは、加配保育士の具体的な役割について見ていきましょう。

1-1.園児同士のコミュニケーションをサポートする

子どもによっては障害を持っていることでなかなか他の園児と関わることができないで子どもたちもたくさんいます。

とくに子どもによっては、うまくコミュニケーションが取れないという点から園児だけでなく保育士とも打ち解けられない子も多いです。

そこで加配保育士が積極的にコミュニケーションの取り方などをサポートし、場合によっては加配保育士が園児同士の間に入って挨拶や自己紹介をさせるなど人との接し方をサポートするのが加配保育士の役割です。

もちろん最初のうちは、加配保育士が全面的にサポートすることが多くなりますが、徐々に子ども自身が「こんな感じに話せばいいのか」と理解でき、大きな成長のきっかけとなる場合もあります。

子どもの頃のコミュニケーションは、子どもたちが成長していくためにとても重要な役割です。しかし、子どもによっては自分からアクションを起こすことが苦手な子もいます。

そのような子どもたちをサポートすることも加配保育士の大事な仕事の一つです。

1-2.子どもに対する援助やケアを行う

加配保育士が担当する子どもは主に障害を持っている子たちになるため、担当する子どもそれぞれの状況や発達状況などを把握し、援助・ケアすることが必要です。

とくに子どもによっては障害が重度であったり性格が少し難しかったりする場合があります。そのため、加配保育士は自身が担当する子どもをはじめ、保育園で受け入れている障害を持った園児の状況を把握しておくことが重要になるのです。

たとえば、障害を持っている子どもであれば他の園児たちと同じスピードや理解力を持って集団行動をすることが困難な場合があります。

このような状況を加配保育士はいち早く察知して、たとえ障害を持った子供でも自分のペースで同じように楽しめるよう配慮する必要があるのです。

したがって、障害を持っているからといって”置いてけぼり”にならないよう援助またはケアをすることも加配保育士の大きな役割でしょう。

1-3.各自治体や行政機関との連絡窓口になる

加配保育士は一般的な保育士よりも子どもの障害などについて専門的な知識を見つけています。

そのため、保健所や保健センター、各自治体などの行政機関と保育園との連絡窓口になることも大きな役割です。

具体的には、障害を持っている子どもの様子を記録したり、障害児保育専門の自治体職員からの指導を他の保育士へ伝えることもします。

1-4.子どもの状況に合わせた保育計画の作成

保育園は単に子どもたちを預かるだけでなく、年間計画をはじめその日やその週、その月など細かく保育計画を作成します。

ですが、その保育計画は保育園全体または組全体の目標として作成されるので、障害を持っている子どもたちにとっては達成しにくい計画であることもあるのです。

そこで加配保育士が担当している子どもの状態や性格などを考慮して、個別に保育計画を作成することもあります。

また、先ほども述べたように加配保育士は、行政機関や療育機関とうまく連携して支援が必要な子どもたちにとって達成しやすい保育を実践していく必要があるのです。

1-5.職員や保護者と柔軟に連携する

加配保育士は障害について専門的な知識を持っているため、さまざまな役割があります。しかし、どんな状況でも加配保育士だけでは適切な対応はできません。

したがって、加配保育士は常に職員同士をはじめ保護者とも情報や状況を共有して柔軟に連携してサポートしていく必要があるのです。

例えば、保育園全体もしくは組全体で活動をするときに加配保育士だけが担当している子どもの状況を知っていて、他の職員と情報を共有していないとしましょう。

このように細かい情報が共有されていない場合、他の子どもたちと足並みを揃えて活動していくことが非常に困難になります。

なぜなら、他の職員と情報を共有していないため支援が必要な子どもを配慮した活動ができなくなるからです。

そのため、日頃から職員同士で普段担当していない園児の情報を定期的に共有しておく必要があるでしょう。

さらに情報を共有するのは職員だけでなく、保護者とも連携を取ることを忘れてはいけません。保護者とはいえ、特別な支援が自分の子どもに必要という点では「何をしてあげればいいのかわからない」と考えている方も多いです。

そのため、加配保育士は職員同士の連携はもちろん、保護者との連携も普段から行っていくことも大きな役割となっています。

2.加配保育は国も支援制度を用意している

次は加配保育における国が用意している支援制度について解説します。

あまり知られていない制度もありますが、国は障害を持った子どもを受け入れる保育園には全面的に支援を行っているのです。

これから紹介する制度は、保育園の運営者はもちろん加配保育士になろうと思っている方も知っておいたほうがいいでしょう。

2-1.障害児保育士加算

障害児保育加算は、居宅訪問型保育を行う事業所以外の特定地域型保育事業所を対象とする支援制度となっています。

制度の内容は以下のとおりです。

  • 障害児2人につき、保育士1人を配置するために必要となる経費を国や各自治体が負担
  • 負担率は国:1/2、都道府県:1/4、市町村:1/4(障害児1人あたり月額149,000円)

2-2.療育支援加算

療育支援加算は、主任保育士を業務に専念させるために代替の加配保育士を配置する加算が対象となっている制度になります。

制度の内容は以下のとおりです。

  • 主任保育士を補助する者を配置するために必要となる経費を負担
  • 負担率は国:1/2、都道府県:1/4、市町村:1/4

また、負担額については2パターンあり、特別児童扶養手当支給対象児童受入施設の場合は「月額:57,000円」。上記の受入施設ではない場合は「月額:38,000円」の負担となっています。

2-3.保育環境改善等事業

保育環境改善等事業は、障害児の受け入れを促進させるための制度です。

つまり、今までは障害を持った子どもを受け入れていなかったが施設を改修することで、新たに障害児の受け入れを行う保育園が対象となります。

補助内容は以下のとおりです。

  • 補助率は国:1/3、都道府県:1/3、市町村:1/3
  • 年額:1,029,000円を負担

2-4.保育所等訪問支援

保育所等訪問支援は、保育園に通っている障害を持った子どもが集団生活に適応するための専門的な支援を必要とする場合、訪問支援を実施する目に必要な費用を負担する制度です。

負担額については以下のとおりです。

  • 負担率:国:1/2、都道府県:1/4、市町村:1/4
  • 障害児1人が週1回利用した場合、月額36,000円

2-5.地域生活支援事業

地域生活支援事業は、巡回支援専門員整備と発達障害者支援体制整備事業の導入について必要な経費を一部補助してもらえる制度になっています。

まず巡回支援専門員整備とは、発達障害者支援に関するアセスメントや支援方法の知識と技術を持った専門員が保育園の子どもや保護者が集まる施設にへ巡回支援を実施するものです。

また、補助率は「国:1/2、都道府県:1/4、市町村:1/4」となっており、具体的な金額は厚生労働大臣が必要と認めた額で決定します。

一方、発達障害者支援体制整備事業は他の支援制度に比べると少し特殊で子どもや保育園を対象とした支援ではなく保護者を対象としたプログラムです。

先ほども述べましたが、障害を持った子どもを育てることに難しさを感じている保護者はたくさんいます。

そこで、子どもの行動や楽しく子育てに臨む自信を身につけるためのトレーニングを保育士が実施するための費用を一部負担してもらえる制度です。

ちなみに補助率は「国:1/2、都道府県:1/2」となっています。
参考:保育所等における障害のある子どもに対する国の支援施策について(平成29年度)|厚生労働省

3.加配保育士になるために必要なもの

それでは最後に加配保育士になるために必要な資格や知識について解説します。

3-1.保育士資格

加配保育士はあくまでも保育士なので、保育士資格を取得することが必須事項です。

保育士資格を取得する方法は2パターンあります。
①国が指定する保育士養成学校を卒業する
②個別に保育士試験を受験して合格する

一般的には前者の国が指定する保育士養成学校を卒業する方法で保育士免許を取得される方が多いです。ただ、独学で保育士試験を受験して合格する方も少なからずいますので、ご自身の状況に合わせて資格の取得方法を決めるといいでしょう。

3-2.子どもの障害における正しい知識

加配保育士は基本的に障害を持った子どもを担当することが役割なので、他の保育士よりも障害における正しい知識を身につけなければなりません。

先述しているように特別な支援が必要な子どもは、周りの子どもたちのペースと同じように集団行動やコミュニケーションを取れるとは限らないでしょう。

そんなときに子ども同士との間を仲介してコミュニケーションを円滑できるようサポートしたり、職員同士で情報を共有して保育園全体で支援できる体制を整えたりする必要があるのです。

したがって、加配保育士は担当している子ども一人ひとりの障害について正しい知識を身につけることも重要となります。

3-3.保護者への適切な対応と連携方法

加配保育士として必要なことは資格や知識も重要ですが、担当している保護者への対応や連携の仕方について学ぶことも大切です。

とくに障害を持った子どもを普段育てている保護者には、「子育てが難しい」と感じている方もたくさんいます。

そこで加配保育士が家庭での様子などをヒアリングし、保護者とどのように子どもと接していくべきなのかを話し合うことができるようになるでしょう。

さらに加配保育士は、家庭での様子だけでなく保育園での様子も保護者へ正確に伝え、今後どのように対応していくべきかも相談できる存在になる必要があります。

4.まとめ:加配保育士は障害を持つ子どもたちを支援するスペシャリスト

今回は加配保育士の役割から国が用意している支援制度、必要な資格や知識について解説をしました。

加配保育士は障害を持った子どもたちを担当し、保護者や職員とこまめに情報を交換しながら業務を行う必要があります。

そのため、人によっては「加配保育士ってかなり大変そう…」というイメージを持つかもしれません。

ですが、実のところ加配保育士は障害を持つ子どもたちを支援できるスペシャリストであることは間違いありません。

とくに普段から一緒に過ごしている保護者でさえ、どう子育てをすればいいのか混乱してしまうことも多いので、障害について専門的な知識と対処法を知っている加配保育士はとても貴重な存在と言えるでしょう。

したがって、今回解説した加配保育士の役割や求められる資格や知識についてしっかりと把握して、1人でも特別な支援を必要としている子どもたちを対応できるように取り組んでいくことが大切です。

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