足腰がしっかりして活発になる3歳児には、さまざまな運動遊びを取り入れ、運動の楽しさを教えます。まだ集団遊びは難しい年齢ですが、保育士の説明を聞いて「簡単なルールのある遊び」にチャレンジできる時期でもあります。

しかし、幼児になったとはいえまだ3歳です。「どんな遊びを設定しようか」「どれくらい難しいことができるのか」と、悩む保育士も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、3歳児にピッタリの運動遊びのアイディアをご紹介します。また、運動遊びの指導案を書くときのポイントも解説しますので、参考にしてみてください。

1 3歳児の発達に合った運動遊びとは?

3歳児にもなれば自分でできることも増え、自我が芽生え始めます。1~2歳のころは、おぼつかなかった足取りもしっかりしてくる時期です。体を思い通りに動かせる喜びから、さまざまな遊びにチャレンジしたがるでしょう。

ここでは、3歳の発達段階に応じた運動遊びについて解説します。

1-1 集団遊び

3歳になれば、語彙力の発達により言葉でのやりとりができるようになります。そのため、お友達と一緒に遊ぶ時間を増やしていく必要があります。とはいえ、まだまだ平行遊びが多く、子ども同士がお互いに関わりを持ちながら同じ遊びをすることは少ないといわれています。

そこで、3歳児からは保育士のお手本や介入によって「お友達と一緒に運動する楽しさ」を教えていきます。

集団遊びにはルールがあり「話を聞く」「待つ」といった姿勢が育めます。また、集団遊びのなかで協力したり、互いに相談したりする機会を経て、友達との信頼関係を築いていきます。

ここで築いた信頼関係で「相手を思いやる力」を身につけ、やがてコミュニケーション能力につながるのです。

1-2 体をコントロールする遊び

3歳児になると、運動能力もグンとUPします。見本があれば、簡単なマット運動や片足立ち、ボール遊びが可能になります。全身のバランス感覚が養われ、体をイメージ通りにコントロールすることが楽しくて仕方のない時期といえるでしょう。

とはいえ、保育士の間違った環境構成によって「運動が怖い」「難しくて楽しくない」といったイメージを植え付けてしまうと、今後の運動能力に大きな影響を与えてしまいます。

3歳児には「楽しみながら体をコントロールする遊び」を設定し、体を動かす楽しさを教えましょう。

2 【室内】3歳児にピッタリの運動遊び

3歳児には、少しルールをつけて集団で楽しめる遊びを提供します。まずは、室内での活動にピッタリの運動遊びを5つご紹介します。

2-1 「リトミック」

ピアノの音楽に合わせて、体を動かしたり、表現を楽しむ活動です。曲を流して取り組んでも構いません。音楽に合わせて走ったり、踊ったり、子ども達は感じたままに体を動かします。

リトミック遊びのアレンジ

  • 早い音楽やゆったりとした音楽を使い分け、走ったり歩いたりする
  • 「ぞうさん」「ちょうちょ」などの音楽に合わせて動物の真似をして楽しむ
  • 「バスごっこ」「線路は続くよどこまでも」などの音楽に合わせてなりきり遊びをする

リトミックの注意点

  • 室内で自由に走り回れるよう環境構成に留意する
  • ピアノを弾く保育士以外に見本となる保育士を配置する
  • 見本となる保育士が率先して楽しむ姿を見せる
  • 子どもの自由な発想や表現力を大切にする

2‐2 「サーキット遊び」

3歳児には、自分の体をコントロールできるよう促す遊びを設定します。そのため、さまざまな要素を組み込んだサーキット遊びがおすすめです。サーキット遊びとは、室内に円を描くようにさまざまな道具を設置し、周回しながら運動を楽しむ遊びです。

サーキット遊びのアレンジ

  • 「平均台」「段ボールトンネル」「フープくぐり」「マット」などを設置する
  • 「さんぽ」の音楽に合わせて坂道やトンネル、でこぼこ道を配置する
  • 新聞紙で島を作り、周回中は海に落ちてはいけない設定にする

サーキット遊びの注意点

  • ポイントごとに保育士を配置して安全を見守る
  • 子どもの発達段階に合わせて保育士が介助しながら進める
  • 子ども達が密集しないよう、できるだけ同じスピードで進むよう声をかける

2-3 「ハンカチ落とし」

3歳児は、少しずつ「遊びにルールがある」ことを学んでいきます。ハンカチ落としは、子ども達が向かい合うように円になり、鬼が外側を周回。背中にハンカチを落とされた子が気づかないうちに、鬼が1周してタッチすれば鬼が交代する遊びです。

ハンカチ落としのレパートリー

  • 導入としてハンカチを投げてキャッチするなどの「ハンカチ遊び」を入れる
  • 大人数のクラスの場合は、待ち時間が長くなるため複数のグループを作成する
  • 慣れてきたらフルーツバスケットにもチャレンジする

ハンカチ落としの注意点

  • ルールを覚えるまで時間がかかるため、見本を見せながら進める
  • 鬼が走るスペースは、危険がないよう環境構成に留意する

2‐4 「じゃんけん列車」

3歳児になると、少しずつじゃんけんのルールを理解できるようになります。じゃんけん列車は、流れている曲が終わったら近くの子とじゃんけんし、負けた子が勝った子の後ろに並んで列を作っていく遊びです。何度も繰り返して列をのばしていき、勝ち続けて最後に先頭になった子が優勝です。

じゃんけん列車のアレンジ

  • 流す曲は季節ごとに取り入れている、馴染みのある曲を選択する
  • 列になるのが難しいうちは「負けたらその場に座る」というルールに変更する

じゃんけん列車の注意点

  • じゃんけん列車の導入として、じゃんけん遊びを取り入れて理解を深める
  • 足並みが揃わなければ転倒してしまう可能性もあるため、クラスの人数に配慮する
  • 移動する道筋がバラバラなため、広い部屋でおこなう

2‐5 「ボールはこびリレー」

3歳になると、少しずつボールの扱いに慣れていきます。ボールはこびリレーは、ボール遊びや集団遊びの導入にピッタリです。運動会に取り入れるのも良いでしょう。

ボールはこびリレーのアレンジ

  • 慣れるまではチームに分かれて一列になり、前から後ろまでボールを手渡ししていく
  • 慣れてきたらお友達と2人でボールを持ち、コーンを回って1周する
  • タオルにボールをのせて、お友達と協力してボールを運び、徐々にリレー形式に移行する

ボールはこびリレーの注意点

  • 能力には個人差があるため、ボールを転がしたり追いかけたりする時間を十分に確保する
  • かたいボールでは「こわい」と認識する子も多いため、やわらかいボールを使用する
  • 夢中になってお友達同士で衝突しないよう、危機管理を徹底する

3 【園庭】3歳児にピッタリの運動遊び

運動遊びは室内でも取り組めますが、園庭でのびのびと運動する楽しさを伝えることも大切です。ここからは、園庭での活動にピッタリの運動遊びを5つご紹介します。

3-1 「だるまさんが転んだ」

鬼が目をつむって「だるまさんがころんだ!」と唱えている間に、他の子ども達が鬼に近づいていく遊びです。鬼が振り向いたときに、動いてしまわないよう気をつけながらタッチしにいきます。ルールのある遊びにチャレンジする3歳児にピッタリの運動遊びです。

だるまさんが転んだのアレンジ

  • ルールが理解できるまでは鬼役とタッチする役を保育士が担う
  • 鬼が振り向いたときの静止ポーズを「変な顔」「片足立ち」など、あらかじめ決めておく

だるまさんが転んだの注意点

  • 大人数でおこなうと、ケガにつながる可能性があるため人数に留意する
  • 鬼から逃げる際に、お友達を押さないよう注意する

3-2 「しっぽ取りゲーム」

しっぽ取りゲームは、鬼ごっこを理解しはじめた3歳児にピッタリの運動遊びです。スズランテープなどで作成したしっぽをお尻につけ、一番多く取った子や、最後まで取られなかった子が勝ちとなるゲームです。

しっぽ取りゲームのアレンジ

  • 最初はタッチされたらその場で座るなど、鬼ごっこの延長としておこなう
  • しっぽがない場合は、帽子を使用する
  • 帽子の色を変えて、チームで戦う

しっぽ取りゲームの注意点

  • しっぽを取られて泣き出す子が続出するため、気持ちを切り替えられるよう声をかける
  • 「次は勝ちたい」という気持ちを持たせるため、何度も繰り返す
  • 走り回っても危険がないよう、広い場所でおこなう

3‐3 「けんけんぱ」

昔ながらのけんけんぱは、子ども達にも大人気の運動遊びで、とくに片足立ちができるようになる3歳児におすすめです。地面にかいた丸をけんけんしながら飛んで遊びます。

けんけんぱのアレンジ

  • チームで競争する
  • けんけんぱの丸を、子ども達が自分でかいて楽しむ
  • 丸をかく代わりに、ミニサイズのフープを設置する

けんけんぱの注意点

  • 片足ジャンプが難しい場合は、全て両足ジャンプに変更する
  • フープを使用する場合は、つまずくことが多くなるため注意する

3‐4 「なわとびジャンプ」

体を動かすことが大好きな3歳児には、両足ジャンプができるなわとびもおすすめです。しかし、自分で縄を回せないため、保育士が工夫してなわとびジャンプを取り入れます。

なわとびジャンプアレンジ

  • 縄を何本か等間隔に配置し、一本ずつジャンプしていく
  • 保育士がヘビのように揺らしている縄をジャンプする
  • 高い縄は下をくぐり、低い縄は飛び越えられるようなサーキットを作る

なわとびジャンプ注意点

  • 縄へ恐怖心を持つ子どももいるため、楽しく取り組めるようにする
  • 足を引っかけて転倒する可能性があるため注意する
  • お友達とぶつからないように、環境構成に留意する

3‐5 「チーム鬼ごっこ」

「鬼にタッチされたら次は自分が鬼になる」というルールが理解できるようになる3歳児は、鬼ごっこのさまざまなアレンジを楽しめるようになります。チーム鬼ごっこは、チームに分かれて鬼にタッチされたら相手の仲間になる遊びです。

チーム鬼ごっこのアレンジ

  • タッチされた子が鬼になり、そのまま手を繋いで他の子を追いかける「手つなぎ鬼」
  • 警察チームと泥棒チームに分かれて、捕まえた子を集める「けいどろ」

チーム鬼ごっこの注意点

  • チームを分かりやすくするため帽子の色を変える
  • 鬼ごっこ中は遊具に昇らないことや、逃げる範囲などのルールを明確にしてお
  • 体力には個人差があるため、短めに時間制限を設ける

4 3歳児の運動遊びの指導案をかくときの注意点

3歳児の運動遊びは、乳児期よりもたくさんの要素を取り入れられます。しかし、配慮すべき点も多くなるため、指導案の記入が複雑になります。そこでここからは、3歳児の運動遊びに関する指導案のポイントを解説します。

4-1 発達段階に合わせた設定をおこなう

3歳児といっても、進級してすぐでは2歳の子がほとんどです。また、3歳児クラスから保育園に新入園する子も多く、生活に慣れていない場合もあるでしょう。季節ごとに、子どもの発達を把握し、段階に合わせた設定をしましょう。

4-2 ねらいを明確にする

運動遊びには、ご紹介した他にもさまざまな種類が存在します。体のバランス感覚を養うものや、ルールのある遊び、お友達と協力することなど、遊びによってねらいは異なります。指導案では、どういったねらいが含まれているか明確に記入しましょう。

4‐3 ケガがないよう環境構成に留意する

少しずつ体のコントロールができるようになる3歳児ですが、まだまだ発達は未熟です。ぶつかったり、転んだりすることもあるので、ケガには十分注意しなければなりません。

そのためには、余裕のあるスペースや、人数配分などの配慮が大切です。考えられるトラブルに全て対応できるよう、環境構成に留意しましょう。

5 まとめ

今回は、3歳児にピッタリな運動遊びをご紹介しました。3歳児の運動遊びには、体の発達を促したり、遊びのルールを守ったりするねらいがあります。そのため、どんどん新しい遊びを取り入れたり、繰り返していきましょう。

とはいえ、まだまだルールを覚えることは安易ではありません。そのため、簡単にアレンジして導入したり、何度も見本を見せたりして実践へとつなげていく必要があります。

子どもが楽しめるような設定はもちろんですが、ケガなく安全に遊べるよう配慮しながら取り入れてみてください。

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