男性の育児休業取得率が、初めて5割を超えました。
2026年7月31日に厚生労働省が公表した令和7年度の調査では、男性の育児休業取得率は50.9%。前年度の40.5%から10.4ポイント上昇し、過去最高となりました。
一方、同じ日に公表された若年層の意識調査では、子育て世代のうち家事・育児を「5:5」で分担したい人は38.4%いるのに対し、実際に5:5となっている人は20.8%にとどまっています。
男性育休を「取る」ことは、確実に一般的になってきています。しかし、そのことと家庭内の家事・育児負担が公平になることは、必ずしも同じではありません。
この記事では、厚生労働省の「令和7年度育児休業取得率の調査結果」と「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)」をあわせて読み解きながら、男性育休50.9%という数字の意味と、その先にある「共育て」の現在地を整理します。
目次
男性の育児休業取得率は50.9%─何が変わったのか?

結論から言うと、令和7年度の男性の育児休業取得率は50.9%となり、前年度の40.5%から10.4ポイント上昇しました。男性育休の取得率としては過去最高です。
政府が2025年の目標として掲げていた50%も上回りました。次の政府目標は2030年の85%です。
育児休業取得率は、男性の場合、対象となる1年間に配偶者が出産した人のうち、調査時点までに育児休業を開始した人、または開始予定の申出をしている人の割合です。令和5年度以降は、出生時育児休業、いわゆる「産後パパ育休」も含まれます。
つまり50.9%は、「現在、男性の半数が同時に育休中」という意味ではありません。育休という選択肢がどの程度実際に利用されているかを見るための指標です。
有期契約労働者についても、男性の育児休業取得率は40.4%で、前回調査の33.2%から7.2ポイント上昇しました。女性の有期契約労働者は74.8%です。正規雇用だけでなく、有期契約労働者でも取得率の上昇が確認されています。
女性は88.3%、政府目標との比較
女性の育児休業取得率は88.3%で、前年度の86.6%から1.7ポイント上昇しています。
女性はすでに2030年の政府目標である85%を上回っていますが、男性は50.9%であり、男女の取得率には依然として差があります。
男女別・取得率比較表
| 項目 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 令和7年度 取得率 | 50.9% | 88.3% |
| 令和6年度 取得率 | 40.5% | 86.6% |
| 前年差 | +10.4ポイント | +1.7ポイント |
| 取得期間 | 2週間~3か月未満の合計が58.3% | 6か月以上が93.0% |
| 有期契約労働者の取得率 | 40.4% | 74.8% |
| 政府目標 | 2025年50%/2030年85% | 2030年85% |
(参照:令和7年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて|厚生労働省)
取得率は伸びたのに、なぜ「取っただけ」に見えるのか?

男性育休が5割を超えた今、取得率だけで実態を判断することは難しくなっています。次に注目したいのが、「どのくらいの期間休んでいるのか」という点です。
令和7年度の男性の育休取得期間を見ると、「2週間~1か月未満」が28.0%、「1か月~3か月未満」が30.3%で、合わせて58.3%。男性の約6割が2週間以上3か月未満の育休を取得しています。
一方、女性では6か月以上の取得が93.0%となっており、取得期間には依然として大きな男女差があります。
なお、令和5年度までの取得期間は延べ人数で集計されているため、令和7年度との単純比較はできません。
(参照:令和7年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて|厚生労働省)
また、男性の育休取得者のうち産後パパ育休を取得した人の割合は58.3%で、前回調査の60.6%からやや低下しています。こちらは取得期間の58.3%とは別の指標です。
取得率が高くなること自体は重要な前進です。しかし、数週間休んだ家庭も数か月休んだ家庭も、取得率という指標では同じ「取得者」として数えられます。
男性育休が5割を超えた今、取得率の重要性がなくなるわけではありません。ただ、「取得したかどうか」だけでは、共育ての実態を十分に測れなくなってきていると感じます。
これまでは「男性が育休を取った」ということ自体が大きなニュースでした。しかし、これから本当に見たいのは、その後です。
どのくらい休めたのか。育休中にどのような役割を担ったのか。復職した半年後にも家事・育児を担えているのか。パートナーの働き方やキャリアはどう変わったのか。
50.9%は「男性育休が完成した数字」ではなく、取得率に加えて、取得期間や取得後の生活まで見る段階へ進むための節目ではないでしょうか。
家事・育児「5:5」を望む人は約4割、実際は約2割

男性育休の取得率とあわせて注目したいのが、厚生労働省の共育プロジェクトが公表した「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)」です。
調査は2026年6月13日から17日に実施され、全国17~39歳の高校生・大学生などと社会人、計15,845人が回答しています。
その中でも象徴的なのが、家事・育児分担に関する「希望」と「現実」の差です。
子どもがいる社会人のうち、配偶者・パートナーがいる1,207人に聞いたところ、家事・育児を5:5で分担したい人は38.4%でした。
しかし、実際に5:5で分担している人は20.8%です。
| 家事・育児分担 | 希望 | 実際 |
|---|---|---|
| 厳密に5:5 | 38.4% | 20.8% |
| ほぼ同程度(4:6・5:5・6:4) | 62.9% | 38.3% |
(参照:若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)|厚生労働省 共育プロジェクト)
「5:5」だけでなく、4:6・5:5・6:4を「夫婦が同程度に分担している」と捉えると、希望は62.9%、実際は38.3%です。
つまり、若い世代の意識としては「夫婦のどちらか一方が大部分を担う」状態から離れたい人が多い一方、現実の家庭生活はまだそこまで追いついていません。
希望と実際の分担割合(男女別)
男女別の結果を見ると、女性では実際の家事・育児分担が自分側に大きく偏っていると回答する割合が高くなっています。
働き方の希望にも違いがあります。
子どもが生まれた後に希望する働き方では、男性は「フルタイムで働くが、定時で帰宅したい」が41.9%と最も多くなっています。
女性では「短時間勤務をしたい」が36.1%で最も多く、「フルタイムで働くが、定時で帰宅したい」が29.6%と続きます。
ここで注意したいのは、これは「現在どのように働いているか」ではなく、子どもが生まれた後に希望する働き方についての回答だという点です。
(参照:若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)|厚生労働省 共育プロジェクト)
また、将来子どもをもつことを「希望している」「どちらかというと希望している」学生や現在子どもがいない社会人のうち、87.2%が育休を取得したいと回答しています。
男性でも83.5%、女性では91.4%です。
若年層全体の87.2%という意味ではありませんが、将来子どもを希望する層では、育休を取ること自体はすでに非常に一般的な希望になっていることが分かります。
なぜギャップは埋まらないのか?両立しやすい職場との差
家事・育児分担のギャップは、夫婦間の話し合いだけで解決できる問題ではありません。今回の調査からは、職場環境との強い関連も見えてきます。
子どもがいる社会人のうち、「自分の職場は子育てとの両立がしやすい」と感じている人では、「今の職場で働き続けたい」「どちらかというと働き続けたい」と回答した割合が78.0%でした。
一方、両立しにくいと感じる人では33.1%で、その差は44.9ポイントあります。
これは因果関係そのものを証明する数字ではありませんが、仕事と子育てを両立しやすい職場環境と、働き続けたいという意向の間に大きな差があることは確認できます。
(参照:若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)|厚生労働省 共育プロジェクト)
企業・職場に求められること
子育て中の人が、希望する働き方や育児との両立を実現するために企業や周囲へ求めていることとして、次の項目が上位に挙げられています。
- 業務量の適正化:37.5%
- 上司・管理職の理解促進:32.5%
- 長時間労働・残業の削減:29.6%
- 制度を利用しやすい雰囲気づくり:27.6%
- 配偶者・パートナーと家事・育児を分担しやすくするための支援:24.8%
(参照:若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)|厚生労働省 共育プロジェクト)
興味深いのは、「制度そのもの」だけではなく、業務量や残業、上司の理解、利用しやすい雰囲気といった制度を実際に使える環境が重視されていることです。
育休制度があっても、休むことで同僚に大きな負担がかかる、復帰後も長時間労働が前提になる、評価や昇進への不安が残るようでは、家庭での分担を変えることも難しくなります。
男性育休が5割を超えたことで、企業側にも「制度があるか」だけではなく、取得した後も働き続けられるかを問う視点がより重要になっています。
共育てを「仕組み化」するために、今日からできること【チェックリスト】
家庭でできることも、「意識を高める」だけではありません。今回の調査では、希望する働き方ができている人ほど、夫婦・パートナー間で具体的な情報共有や話し合いを行っている割合が高くなっています。
たとえば「お互いの勤務予定や繁忙期を共有している」「家事・育児の分担について定期的に話し合っている」といった行動です。
(参照:若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)|厚生労働省 共育プロジェクト)
家事・育児には、料理や掃除、送迎のように見えやすい仕事だけでなく、予定を覚える、保育園からの連絡を確認する、日用品の不足に気づく、通院を予約するといった「段取り」の仕事もあります。
まずは、次の項目について夫婦それぞれがどう考えているか確認してみてください。
- お互いの勤務予定や繁忙期を共有できているか
- 家事・育児の分担について、最後に話し合ったのはいつか
- 子どもの発熱など、急な対応が必要なときの担当を決めているか
- 保育園・学校からの連絡や予定管理をどちらが担っているか
- 通院、予防接種、行政手続きなどの担当が偏っていないか
- 家事・育児だけでなく、お互いの休息時間も確保できているか
- 一度決めた分担を定期的に見直しているか
「何対何にするか」を先に決めるよりも、まず家庭の中で誰が何を担っているのかを見える状態にすることが大切です。
家事・育児分担について話し合うときは、「希望する分担」と「現在の分担」を一度書き出してみると整理しやすくなります。
5:5にすることそのものをゴールにする必要はありません。勤務時間、子どもの年齢、体調、家族の状況によって、無理のない分担は家庭ごとに異なります。
まず現在地を共有し、必要に応じて見直せる状態をつくることが、家庭に合った共育てを考える第一歩です。
育休中の経済的な支援について確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
育児休業給付金について詳しく知りたい方はこちらです。
育休後の復職時期や働き方を考えている方はこちらも参考になります。
よくある質問(FAQ)
男性育休50.9%という数字や、今回の家事・育児分担調査について、誤解しやすいポイントを整理します。
- Q1. 令和7年度の男性の育児休業取得率は何%ですか?
- A. 50.9%です。 前年度の40.5%から10.4ポイント上昇し、過去最高となりました。
- Q2. 政府目標の育休取得率50%はいつ達成されましたか?
- A. 2025年の政府目標50%に対し、令和7年度調査で男性の育児休業取得率が50.9%となりました。 次の政府目標は2030年の85%です。
- Q3. 男性の育休はどのくらいの期間取得している人が多いですか?
- A. 2週間以上3か月未満の取得が合計58.3%です。 内訳は「2週間~1か月未満」28.0%、「1か月~3か月未満」30.3%です。
- Q4. 育児休業取得率はどうやって計算されていますか?
- A. 男性の場合、対象となる1年間に配偶者が出産した男性を分母とし、そのうち調査時点までに育児休業を開始した人、または開始予定の申出をしている人を分子として算出します。
女性の場合は、対象期間に在職中に出産した女性が分母になります。 - Q5. 家事・育児を5:5にしたい人と、実際に5:5の人はどのくらいですか?
- A. 希望する人は38.4%、実際に5:5となっている人は20.8%です。 4:6・5:5・6:4を「同程度の分担」とすると、希望62.9%に対して実際は38.3%です。
- Q6. 有期契約労働者の育休取得率はどうなっていますか?
- A. 令和7年度は男性40.4%、女性74.8%です。 男性は前回調査の33.2%から7.2ポイント上昇しています。
(参照:令和7年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて|厚生労働省)
(参照:若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)|厚生労働省 共育プロジェクト)
男性育休は、「5割到達」という一つの大きな節目を迎えました。
一方で、今回の調査を重ねて見ると、制度上の変化と家庭生活の変化にはまだ距離があることも分かります。
家事・育児を5:5で分担したい人は38.4%いるのに対し、実際に5:5となっている人は20.8%。共育てを必要だと考える若い世代が増えても、時間や業務量、職場環境が変わらなければ、家庭だけの努力で理想に近づくことには限界があります。
だからこそ、これから男性育休を見るときは「取得率は何%か」だけでなく、どのくらい休めたのか、復職後も育児に関われるのか、家庭内の負担がどう変わったのかまで見る必要があります。
育休は共育てのゴールではなく、入口の一つです。
5:5という数字に家庭を合わせるのではなく、それぞれの家庭が現在地を共有し、生活や仕事の変化に合わせて役割を見直せること。その状態を家庭だけでなく職場や社会も支えられることが、これからの「共育て」に必要なのではないでしょうか。




