保育士は子どもの保育だけでなく、保護者との信頼関係構築にも留意する必要があります。しかし、保護者のなかには非常識なクレームや要望を伝えてくる人も少なくありません。日々の保育のなかで、ひどいクレームを入れてくる保護者に疲弊している保育士も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、保育園で見られる「モンスターペアレント」について解説します。また、モンスターペアレントになりうる保護者の特徴やその対応をご紹介しますので、参考にしてみてください。

1 モンスターペアレントとは?

モンスターペアレントとは、学校や保育園に対して自己中心的で理不尽な苦情や要求をする保護者のことです。略して「モンペ」と呼ばれることもあります。

教育や保育に携わる「先生」にとって、モンスターペアレントへの対応は重大な問題です。なかには、そのような保護者への対応に疲弊して退職を考える人も少なくありません。

しかし、保護者からのクレームをすべてモンスターペアレントという言葉で片付けることはできません。クレームのなかには、保育士の不適切な保育やミスを指摘するものもあります。保育園に対する貴重なご意見と、理不尽なクレームを混同しないよう注意しましょう。

2 実際にあった!モンスターペアレントの実例

理不尽なクレームや要求を繰り返すモンスターペアレントは、実際にどのような内容を訴えてくるのでしょうか?ここからは、実際にあったモンスターペアレントの実例をご紹介します。

2-1 行事の日程や内容に口出しする

保育園では、季節に応じてさまざまな行事を企画・運営しています。入園式や遠足、参観日、運動会、生活発表会や卒園式などの行事は、保護者にとって子ども達の成長を感じられる大変貴重な機会です。

そのため「子どもが頑張る姿を見たい」と、前のめりになる保護者が多いのも事実です。大切なわが子を思っての行動なので、保育士も気持ちは理解しています。しかし、なかには以下のような要求が届くことも少なくありません。

  • 「旅行の予定があるので運動会の日を変更してください」
  • 「午後から用事があるので、この子の出番は午前中にしてください」
  • 「うちの子はダンスが得意なので発表会は劇ではなくダンスにしてください」
  • 「私は背が小さいので子どもは1列目にしてもらわないと見えません」

保育園の行事は、年度初めに年間行事計画として提示していますし、個人の旅行の都合で変更できるものではありません。また、保育園での行事内容は子ども達の発達状況や意見を合わせて慎重に考案しています。しかし、このような理不尽な要求を伝えるモンスターペアレントは少なくないのが現状です。

2-2 保育園生活でのルールを変更しようとする

保育園には、さまざまなルールがあります。しかし、決められたルールを守らないどころか変更しようとする保護者は少なくありません。実際に届いた保育園のルールに関する要望は以下の通りです。

  • 夜7時までしか開所していない保育園に「今日は仕事が8時までなので、お迎えは8時すぎになります」と要求
  • 発熱が37.5℃あればお迎えの要請をする保育園に「仕事が忙しいから無理です。夕方までちゃんと預かってください」と懇願

このように、保育園で決められているルールを守らないだけではなく「ルールを変更してほしい」と要求してくる保護者もいます。まさにモンスターペアレントの理不尽な要求といえるでしょう。

2-3 給食やおやつに対する過度な要求

保育園で提供される、給食やおやつに対する過剰な要求はあとを絶ちません。以下のような要望が事例として挙げられます。

  • 「この子は少食だから給食費半分にしてほしい」
  • 「朝は忙いので朝食も提供してほしい」
  • 「牛乳が苦手なのでジュースにしてください」

給食やおやつに関しては、子どもの成長に配慮してさまざまな工夫がなされています。しかし、個人的な都合で過度な要求をする保護者は少なくありません。もちろん、アレルギー対応は細かいところまで徹底して対応しますが、好き嫌いでメニューを変更していたら、栄養士や保育士が何人いても足りません。

2-4 保育士の声かけや対応への言いがかり

保護者のなかには、保育園運営へのクレームだけでなく保育士の対応について意見を伝える人もいます。不適切な保育や保育士側に問題がある場合は、その意見は真摯に受け止めるべきです。しかし、以下のように驚くほど過剰ないいがかりをつけてくることもあります。

  • 「うちの子まだオムツ取れないんですけど早くしてもらえますか?」
  • 「お箸の持ち方が変なんですけど責任取ってください!」
  • 「あの先生の声が嫌いなので担任から外してください」

実際にあったクレームですが、保護者と保育士の信頼関係が全く築けていないことが分かります。このように「保育士は保護者の意見を聞いて当たり前」という態度で接する保護者は少なくありません。

3 モンスターペアレントとなる保護者の特徴

理不尽すぎるモンスターペアレントからの要求を先述しましたが、一体どのような保護者がモンスターペアレントへと変身するのでしょうか?特徴を知っていれば、問題が起きる前に対処できるかもしれません。そこでここからは、モンスターペアレントとなる保護者の特徴を解説します。

3-1 自己中心的な考えを持っている

モンスターペアレントになりうる保護者は、自己中心的な考えを持っているといえます。「保育園の決まりがどうか」「保育士の負担にならないか」「子ども自身はどう思っているのか」といった、ほかの人も気持ちをうまく読み取ることができません。

自己中心的な考えを持っている人は、自分の子どもさえよければいいと考えます。そのため、このような保護者は行事や保育園のルールについて口出しする傾向があります。

3-2 保育園での集団生活に理解がない

保育園に初めて子どもを預ける保護者のなかには、集団生活への理解が乏しい人もいます。「保育園ではどこまで個別に対応してもらえるのか」「大切なわが子を特別扱いしてほしい」といった気持ちから、行き過ぎた要求をするケースも少なくありません。

しかし、多くの子ども達が一緒に生活する空間で、過度な要求を受け止めることはできません。「これくらい対応できるでしょ?」と、集団生活への理解がないタイプの保護者がモンスターペアレントになるケースも少なくないといえるでしょう。

3-3 保育園や保育士に過度に依存している

モンスターペアレントになる保護者の特徴には、保育園や保育士に対する過度な依存も挙げられます。もちろん、協力して子どもの健やかな成長を願っていることに間違いはありません。

しかし「一緒に子育てしているんだからこれもお願い」と、依存が過度な要求へと変わってしまうこともあるようです。「朝食を食べる時間がないからお願い」「仕事終わらないからまだ保育園開けておいて」などは、保育士への依存からくるセリフです。

頼み事の多い保護者は「これがいいならあれも」と、要求をエスカレートしていく傾向があるので注意が必要です。

3-4 コミュニケーション能力が不足している

保護者と保育士は、しっかりコミュニケーションを取って信頼関係を築く必要があります。その関係が、子どもの保育に影響するといっても過言ではありません。

しかし、なかにはコミュニケーション能力が不足している保護者も少なくありません。うまくコミュニケーションがとれない保護者は「子どもがこう言っていた」「もしかしたら〇〇なのかもしれない」といった被害妄想からクレームにつながることも考えられます。

一言話をすれば解決する問題も、コミュニケーション不足から大問題に発展することも考えられます。

4 保育士必見!モンスターペアレントへの対応

保育士にとって、モンスターペアレントは退職を考えるくらい恐ろしく疲弊する存在です。しかし、言われるがまま心を病んで退職に追い込まれる必要はありません。ここからは、モンスターペアレントへの適切な対応をご紹介します。

4-1 適切な意見と理不尽なクレームを区別する

保護者からの意見のなかには、適切な意見と理不尽なクレームがあります。この区別を間違えて、早々にモンスターペアレントと判断するのは良くありません。

なかには「面倒なことを言われた」「私では対応できない」と、すぐに主任保育士や園長に話を上げたくなる保育士もいるでしょう。

しかし、それが適切な意見だった場合「ただ担任の先生を話をしたかっただけなのに」と、保護者を失望させてしまうことにつながりかねません。まずは、保護者の意見がどのような内容か聞き分けるよう意識してみましょう。

4-2 些細なことでも言い合える関係を構築する

保育士と保護者は、子どもの健やかな成長のために「何でも言い合える関係」であることが求められます。関係ができていない場合は、保護者が不満や意見を溜め込んで一気に爆発して大きなクレームにつながることもあります。

そのため、普段から些細なことでも言い合える関係を構築しておくことが大切です。保護者の意見に耳を傾けながらも「それはできないんですよ。すみません!でもまた何かあれば遠慮なく言ってくださいね!」と、親しみのある対応を目指しましょう。

4-3 反論せず話をしっかり最後まで聞く

モンスターペアレントとはいえ、なかにはクレームの内容が事実の場合もあります。その場合は、否定や反論をせず誠心誠意対応する姿勢が大切です。

また、クレームが理不尽な内容であったり、事実と異なる場合であっても途中で反論するのは良くありません。相手の気持ちを逆なでしてヒートアップする可能性があります。まずは言いたいことを全て吐き出して落ち着いてもらうことを意識しましょう。

4-4 ほかの保育士も同席し内容を記録する

興奮状態である保護者を対応するには、反論せず聞き役に徹する必要があります。しかし、ずっと一人で対応していては心が苦しくなってしまうでしょう。また、保護者の勢いに負けて必要以上に謝罪したり、話の内容を全て理解できなかったりすることもあります。

そのため、モンスターペアレントの対応は複数の保護者で対応することをおすすめします。「大切なお話なので」と、メモを取るのも良いでしょう。もし話がうまくまとまらないのであれば、主任保育士や園長への報告、自治体を管轄する保育課への相談も早めにおこないましょう。

5 まとめ

今回は、保育園での「モンスターペアレント」について解説しました。理不尽なクレームを突きつけてくる保護者には、さまざまな特徴があります。

保育士には、保護者がモンスターペアレントにならないよう事前に対策する力が求められます。そのためには、しっかりコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくことが大切です。

しかし、実際にモンスターペアレントとして理不尽な要求をおこなう保護者への対応は安易ではありません。ひとりで抱え込まず、保育園全体の問題としてチームで対応できるよう心掛けましょう。

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