保育士間におけるいじめは、保育士の離職率にも繋がる大変深刻な問題です。実際に、保育園での人間関係に疲弊して、転職を考えたことがある人も多いのではないでしょうか?

いじめは保育士としての立場は関係なく、人として絶対にやってはいけない卑劣な行為です。いじめられている側が我慢する必要はありません。そこで今回は、保育士のいじめの原因や、いじめられた時の対処法について解説します。

1 保育士間で起こるいじめの原因

どんなに雰囲気の良い職場でも、いじめが起きる可能性はゼロではありません。では、保育園でいじめが起きる原因には、どういったものが挙げられるのでしょうか?詳しく解説していきます。

1-1 女性が多い閉鎖的な空間

女性のみで形成される集団では、女性特有の陰湿ないじめが発生することがあります。保育園で働く男性保育士の人数は増加傾向にありますが、今だに9割以上が女性保育士です。また、保育施設の半数が女性保育士のみで運営されているのが現状です。

出典:保育士の現状と主な取組(厚生労働省)

女性が多い閉鎖的な空間では、波長が合う人同士でグループを作ったり、派閥のようなものができたりします。そのため、周りの意見に同調せず、どのグループにも属さないタイプの女性がいじめの対象になることもあるようです。

1-2 労働環境が悪い

保育士のいじめには、施設の労働環境の悪さも影響します。保育士不足は深刻化し続けており、なかには休憩時間も取れないほど大変な保育園もあるようです。そういった日々の忙しさから、新米保育士に強くあたってしまう先輩保育士も少なくないようです。

また、国が定める保育士の配置基準は「子どもの安全を確保するために必要な最低基準」であり、決して余裕のある人数ではありません。あまりの忙しさから心に余裕を持てず、周りにきつく当たってしまうことは誰にでも起こりうるのではないしょうか?

また、保育士は子ども達のお昼寝中など、短い時間でたくさんの事務作業を終わらせなければなりません。そのような状況の中で「あの先生は仕事が遅いから同じクラスの担任になりたくない」というような陰口がでることもあります。このように、小さな影口からいじめに発展するケースも考えられるでしょう。

出典:保育士等の関する関係資料(厚生労働省)

1‐3 園長や主任保育士の力不足

園長や、主任保育士の保育方針や管理体制がいじめの原因になることもあります。行き過ぎた指導を行うベテラン保育士を放っておいたり、悩んでいる新人保育士を見て見ぬふりしたりすることで、その状況が日常化してしまいます。

「面倒なことには関与したくない」「嫌ならやめればいい」と、問題に目を背けるような園長や主任保育士がいれば、いじめがなくなることはありません。

2 保育士のなかで起きるいじめの具体例

保育士は子ども達の保育を通して、さまざまな意見交換を行っています。そのなかで、意見の食い違いからいじめに繋がることも少なくありません。ここからは、保育士のなかで起きるいじめの具体例をご紹介します。

2-1 雑用ばかり押し付けられる

保育士のなかでも、自分の意見をハッキリ言えないタイプに起こる事例です。「雑用を頼んだら快く引き受けてくれる」ことから、面倒なことはなんでも押し付けるいじめへと発展していきます。

たとえば、子ども達がお昼寝している間の清掃や製作など「断らない人」に仕事を振っておくことで、自分が楽をしようと考える陰湿な保育士もいます。なんでも引き受けるのではなく「当番制にしませんか?」と言える勇気が必要です。

2-2 アイディア等を必要以上に否定される

保育園では、季節の行事や製作を実施する際に、アイディアの考察を行います。保育園によっては、先輩保育士や主任保育士に試作を見せて、アイディアの許可をもらうところもあります。「ここは乳児さんには難しいから、このやり方に変えた方がいいよ」と、適切なアドバイスをもらうことができれば、保育士としても成長できる良い機会になるでしょう。

しかし、相談内容を必要以上に否定し、何度もアイディアを再提出させ、どこが悪いのか明確に指示してくれないといった事例も存在します。これは新人保育士への教育と見せかけた、陰湿ないじめといえるでしょう。

2-3 保育観を否定される

保育士はそれぞれ信念や保育観を持っています。「どれだけ汚れてもいいから外遊びはしっかり取り入れたい」「ケガをさせないことが保育士の仕事だから、少しでも危険が予測される遊びは取り入れたくない」など、保育士によって考え方はさまざまです。

しかし、意見が同じ保育士が集まって、特定の保育観を持つ保育士を否定することもあります。「あの考え方はどうかと思う」という意見から、陰口に繋がるケースです。

2-4 無視などの人格否定をされる

保育をしているなかで、連絡不足や準備不足などのミスをしてしまうことがあります。仕事のミスは誰にでもあることですが、そのミスが原因で他の保育士から無視されたり「保育士に向いていない」と、陰口を言われることがあります。

また、体調不良で仕事を休み迷惑をかけた翌日から無視されるといったケースもあります。クラスのチームワークが乱れてしまうと、子ども達や保護者へ迷惑がかかる可能性も出てくるでしょう。

とはいえ、無視や陰口に泣き寝入りする必要はありません。くれぐれも「いじめられるのは私が保育士に向いていないから…」と、不用意に自分を責めるのはやめましょう。

3 保育士がいじめられた時の対処法

子ども達に関する悩みは、保育士としての成長に繋がりますが、人間関係の悩みは仕事へ悪影響を及ぼしかねません。ここからは、保育士がいじめられた時の対処法をご紹介します。

3-1 理不尽な要求に意見する

あまりにも理不尽な要求には、まず意見するところから始めてみましょう。新人保育士で、自身の力量に不安を感じていたとしても、理不尽な要求を鵜呑みにする必要はありません。「どうしてですか?」「理由を教えてください」と、少し強気な姿勢を見せることが大切です。

また、産前産後休業や育児休業、時短勤務などの働き方の変化により「迷惑だ」と冷たい態度を取る保育士も存在します。これも劣悪な労働環境からくる苛立ちを、理不尽にぶつけている結果といえます。また、働き方に対して園長や主任保育士から嫌な態度を取られることも考えられます。「これは働く女性の権利です」と、胸を張って意見しましょう。

3-2 いじめの内容を記録する

いじめられたら、その内容を記録しておきましょう。いざ問題が明るみに出た時、きちんと詳細を話せるよう準備しておく必要があります。陰口や言葉の暴力はボイスレコーダーで、持ち物や書類への嫌がらせは写真で記録するのがオススメです。

また、理不尽な要求や雑用の押し付けに関しては、日誌として記録につけておくのも良いでしょう。いじめの内容をうやむやにされないために、記録はしっかり取っておきましょう。

3-3 園長や主任保育士への相談

園長や主任保育士がいじめに気付いていない場合は、一度相談してみてはいかがでしょうか?辛い思いをしていること、保育士間で溝ができてしまって保育に支障がでていることを報告すれば、なにか手を打ってくれるかもしれません。

しかし、園長や主任保育士が見て見ぬふりをしている場合は逆効果になる可能性もあります。親身になってくれる上司がいる場合のみ、相談してみることをオススメします。

3-4 いじめ専門機関への相談

園長や主任保育士への相談が難しい場合は、いじめの専門機関へ相談しましょう。第三者に相談することで、気持ちが楽になったり、考えが整理されたりするかもしれません。

国や自治体が開設している相談窓口は、秘密厳守ですので気軽に相談してみてください。いじめは、あってはならない行為です。いじめられた側が遠慮する必要はありません。

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3-5 他の保育園へ転職

「いじめの状況が改善されない」「もう保育士を辞めたい」と考えている場合は、他の保育園への転職をオススメします。同じ状況下では精神的にも辛く、心を壊してしまう恐れがあります。

また、いじめる側の言葉を鵜呑みにして「保育士に向いていない」と思う必要はありません。保育園が変われば、人間関係も変わります。自分らしく伸び伸びと保育ができるよう、転職を決めるのも良いでしょう。

4 まとめ

残念ながら、未だにいじめが横行している保育園も存在します。いじめが原因で保育士を辞めてしまうのは、大変もったいないことです。とはいえ、いじめを我慢する必要はありません。思い切って第三者に相談したり、転職先を探してみたりしてはいかがでしょうか?

新しい保育園への転職は、いじめから逃げているというわけではありません。環境を変えることは、保育士として成長できる有効な手段です。

しかし、人間関係は実際に働いてみないと分からないこともあります。新しい転職先を探す際には、いじめの原因に繋がるような職場の環境や労働環境ではないか、よく調べてみてください。

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