寝つきが悪い子どもでも保育士の寝かしつけでスッと心地良く眠れたら、きっと保育園のお昼寝の時間が大好きになってくれることでしょう。
では、そのためにはどんなことが必要なのでしょうか。

1.お昼寝はなぜ必要?

1-1 保育園でお昼寝するのはなぜか

保育園では、お昼寝を午睡(ごすい)と呼び、多くの保育園で1日のスケジュールの中にに組みこまれています。

これは、平成30年4月から適用されている保育所保育指針の「保育の計画及び評価」という項目で「午睡は生活のリズムを構成する重要な要素」と記載されており、お昼寝は適度な休息をとるために必要なことだと考えられているためです。

活動する時間と休息する時間の両方をバランス良く過ごすことで生活リズムが整い、子どもたちは元気に保育園で過ごすことができるのです。

1-2 お昼寝時間はどのくらい必要?

元気に活動するために必要なお昼寝ですが、その時間は成長とともに変化していきます。年齢別に見ていきましょう。

一般的に、0歳児のお昼寝時間は2時間から4時間ほどです。ただし、0歳児は授乳があったり、午前中に1時間ほど寝てしまったりと、生活リズムが不安定なため、月齢や個人によってさまざまです。子どもの様子をよく見てお昼寝時間を設定しましょう。

1〜3歳児のお昼寝時間は、1時間から3時間ほどです。体力がついてくることや、生活リズムが安定してくるため、0歳児ほどお昼寝の時間は必要ありません。しかし、多くの子どもはしっかりお昼寝すると疲れが取れ、午後の活動に落ち着いて参加することができます。

4〜5歳児は、お昼寝が必要な子であれば1時間ほどのお昼寝で十分です。だんだんとその1時間のお昼寝も必要のない子どもが増えてきます。午前の活動内容や子どもの体調や様子を総合的に観察し、お昼寝が必要かどうかを考え、できるだけ個別に対応しましょう。

2 お昼寝する環境を整えましょう

心地良いお昼寝のために、環境整備はとても重要です。逆を言えば、環境が整わないと、子どもたちはお昼寝ができないこともあります。環境をしっかりチェックして、子どもたちが良質な睡眠を取れるようにしましょう。

2-1 お布団をチェック

保育園によっては、お昼寝用のお布団の全てを保護者に用意してもらうこともあるでしょう。その場合、敷布団や掛け布団は子どものお昼寝に適しているか、保育士がよく確認する必要があります。

まず敷布団は、フカフカなものを用意してあげたくなりますが、それはNGです。窒息防止のために、固めのものを使います。また、子どもは汗をかきやすいため、シーツは汗を吸いやすい素材のものが心地良く過ごせるでしょう。

掛け布団については、季節や子どもの汗のかきやすさに応じて用意します。汗をかきやすい時にはタオルケットを、寒い時期には中綿入りの掛け布団や場合によっては毛布を使うと温かく眠れます。

2-2 温度、湿度をチェック

厚生労働省によると、保育室の室温は夏季26℃~28℃、冬季20℃~23℃、湿度は約60%に調整することが望ましいとされています。これを基準とし、子どもの様子や保育室の状況に応じてエアコンや加湿器等で温度と湿度の両方を管理しましょう。

温度と湿度は、高すぎても低すぎても心地良く眠れることはありません。そのため、保育室に温度と湿度の両方を測れる温湿度計を用意すると調整しやすいでしょう。

2-3 明るさ、音をチェック

お昼寝の時にはカーテン等で日差しを遮り薄暗くすると、子どもたちは眠りにつきやすくなります。ただし、暗すぎると子どもの様子を確認することができません。子どもの表情がわかる程度の薄暗さにすることが重要です。

音については、できる限り静かな雰囲気にすることが必要です。クラスによってお昼寝の 開始時間が違う場合もあるため、ある時間になったら各クラスのドアをしっかり閉めるようにする、隣のクラスがお昼寝時間になった時は活動内容に注意する等、クラス間の配慮が必要なこともあります。

また、全くの無音にするよりもオルゴール等の高音のゆっくりとした音楽をかけるほうが、子どもたちがリラックスできることがあります。お昼寝の時の音楽を決めて毎日流すようにすると、子どもたちが音楽を覚えて安心して眠ることができることがあるためおすすめです。

2-4 保育士の見守りを万全に

全ての環境を整えて子どもたちがグッスリ眠っても、それでOKではありません。お昼寝中も普段の保育中と同じくらい保育士が子どもたちの様子をよく観察しましょう。

具体的には、乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐための午睡チェックを行ない、記録を残します。乳幼児突然死症候群は、何の予兆もなく既往症もない子どもが睡眠時に突然亡くなってしまう恐ろしい病気です。

乳幼児突然死症候群の原因は不明ですが、発症のリスクを減らすためには仰向けで寝かせることが重要です。また子どもの異変をすぐに察知できるように、お昼寝の時は0歳児は5分ごと、1〜2歳児は10分ごと、3歳児以上も10〜15分ごとに子どもの様子をチェックし、記録を残しましょう。

3 保育士の寝かしつけ術

家庭では眠れない子どもでも保育園では眠ってしまうことがある保育士の寝かしつけ。保育士の寝かしつけ術はどんなものがあるのでしょうか。

3-1 お昼寝の導入を行なう

これからお昼寝をすることを子どもに伝えるために、毎日決まった形の導入を行ないましょう。例えば、毎日決まった場所で絵本や紙芝居を読んでから、お昼寝をします。そうすることで子どもたちにお昼寝が始まることが伝わり、スムーズに眠りにつくことができます。

3-2 抱っこやおんぶをする

泣いてお昼寝を嫌がる子どもには、抱っこやおんぶで寝かしつけをします。その際、子どもが落ち着くようにゆらゆら揺らすと効果的です。

また、抱っこやおんぶをする際、体をおくるみやタオルケット等で包んであげると、安心して眠りやすくなります。

3-3 体をトントン、すりすりする

横になれるけれどなかなか寝つけない場合は、体をトントン優しくたたきます。たたく場所は背中や腰、胸のあたりがおすすめです。

少し早いテンポでたたくと、体の揺れがリラックス効果に繋がり、子どもが眠りやすくなります。大人も電車や車に乗っていると、眠くなりやすくなることがありますが、それと同様の効果があるとされるためです。

トントンではなく優しく体を撫でると安心して眠ることもあります。撫でる場所はたたく時と同様の背中や腰、胸や、また足を撫でるとリラックスできる場合もあります。

3-4 手や足裏のマッサージをする

手や足裏をマッサージのように軽く親指で押すと、寝付けることもあります。コツは、親指の腹で軽く押すことと、手や足裏の全体を温めるようにしながら押すことです。

子どもは眠くなると手足が温かくなりますが、逆に手足を温めると眠くなることがあるとされるためです。

3-5 頭や眉間を優しくなでる

頭や顔の眉の間あたりを優しくなでると、寝付きやすくなります。頭は優しくなでる程度の力加減ですが、眉間をなでる場合は触れるか触れないか位の軽い力加減がおすすめです。

また、耳のあたりを優しくなでるとよく眠れる子どももいます。子どもの様子をよく観察して、気持ちの良さそうな場所を探しましょう。

4 眠れない子への対応

保育士が寝かしつけをいくら頑張っても、眠れない子がいるかもしれません。そんな子どもにはどのように対応すれば良いのでしょうか?

4-1 生活習慣の見直しをする

お昼寝できない子についてまず行なうことは、毎日の就寝時間や起床時間の確認です。夜遅くまで起きていて、朝は登園時間ギリギリまで寝ている子どもは、お昼寝時間に眠くならないことが多いためです。

保育園で元気に活動するために保護者にも保育園での様子を伝え、家庭で早寝早起きをしてもらえるように協力をお願いしましょう。

4-2 個人差やその子の特性の場合も

毎日3時間近くお昼寝をする子どももいれば、あまりお昼寝をしない子どももいます。
また、発達障害のある子どもは睡眠障害があることもあります。いろいろな性格の子どもがいるように、睡眠の仕方にも睡眠の必要性は個人差があります。

お昼寝ができない子どもがいても、その子の生活の中で疲れが見える、機嫌が悪くなる等困った様子が見えていないのなら、ゆったりとした気持ちで見守りましょう。

4-3 横になるだけでもOK

疲れをとるためには睡眠が1番ですが、横になるだけでも休息になります。疲れている様子がある場合、お昼寝の時間は横になり体を休める時間にできると午後の活動を元気に過ごせるでしょう。

4-4 焦らず他の職員と連携して対応

他の子どもはみんな寝てしまったのに、この子だけいつまで経っても眠れない、という状況はもしかしたら保育士にとって焦りに繋がるかもしれません。

けれど、焦りは禁物です。子どもはこちらが思っている以上に保育士の気持ちに敏感だからです。子どもが眠れなくても焦らずに穏やかな気持ちで接するようにしましょう。

ある程度寝かしつけをしても子どもが寝ない場合、違う保育士と交代すると気分が変わるのかスッと眠ることもあります。1人で抱え込まず、他の職員とうまく協力しましょう。

5 お昼寝の適切なサポートで健やかな成長を

保育園のお昼寝の時間は、子どもの成長に密接に関わります。保育士の適切なサポートで子どもたちが健康に過ごせるようにしましょう。

Share.

子育て・教育・介護・医療・健康・LGBT・教養・法律など福祉を中心にしたテーマを発信する専門家集団です。各分野の専門家の意見や取材、キュレーションを通じて、幅広い視点で子育て世帯・介護世代に情報価値を提供します。日本の福祉の未来をつなぐ架け橋として活動を行っています。

Exit mobile version