現在では、箸の持ち方や使い方の練習を行う保育園も多いです。しかし、実際に「どのように指導するのがベストなのか」や「楽しく学べる方法はないのか」と悩む保育士の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、保育園で実践できる箸トレーニングの方法をご紹介します。また、本記事を読むことで子どもが楽しく箸の練習ができるアイデアを知れるだけでなく、注意点まで詳しく理解することができるでしょう。

箸の練習を始める年齢は?

園によって指導を開始する時期は異なるものの、3歳前後から始めることがほとんどです。

なぜなら、3歳ごろになると心身ともに発育が著しくなり「年上の子や先生と同じように箸を使用してみたい」と思う子どもが増えはじめるからです。さらに、手先も自由に動かせるようになるという点からも箸のトレーニングを始めるのに3歳前後は最適な時期と言えるでしょう。

年齢以外にも、以下のシチュエーションがあれば箸のトレーニングを検討するのもおすすめです。

  • 箸に興味を持ち始めたとき
  • 鉛筆で線をかけるようになったとき
  • ピースサインや簡単なじゃんけんができるようになったとき
  • スプーンやフォークの使い方が上達したとき

箸の練習を始める手順

箸の練習は、正しい順序で行うとより効果的なトレーニングになります。箸のトレーニングが上手くいかずつまずいてしまった場合は、以下の手順で練習を進めましょう。

ここでは、手順ごとに詳しくトレーニング内容をご紹介します。

まずはスプーンやフォークを持てるようにする

スプーンやフォークが上手く使用できない間は、まだ手先が十分に発達していない可能性があり、箸のトレーニングを始めるにはまだ早い状態と言えます。

そのため、保育園では子どもたちの日々の様子をしっかりと観察し、スプーンやフォークをどのように使用しているかチェックするようにしましょう。

また、スプーンの持ち方は箸の持ち方にも似ています。スプーンが正しく持てていれば箸のトレーニングにすんなりと移行できる可能性も高いため、まずはスプーンやフォークを正しく使用できるように指導しましょう。

お絵描きや工作で手指を鍛える

箸のトレーニング以外の方法で手先を鍛えるのもひとつの手段です。お絵描きや工作を行い、手指の運動を促しましょう。

とくに鉛筆やはさみを使用する工作の場合、手先を細かく動かすことで指先の動かし方や繊細な力加減などを自然と身に付けさせることもできます。

正しい使い方を学ぶ

始めは箸の使い方を理解していない子も多いため、まずは正しい使い方を指導しましょう。最初に正しい使い方を学んでおくことで、後から矯正する必要がなくなり、子どもたちの負担も減ります。

箸の使い方を教える際の手順は以下の通りです。

1.箸を1本だけ鉛筆握りし上下に動かす
2.もう1本を差し込み2本で動かす
3.下の箸を動かさずに上の箸だけ動かす
4.輪ゴム付き箸で、スポンジやポンポンボールを掴む練習をする
5.輪ゴムのない状態の箸で、物を掴む練習をする

遊びながら箸の使い方に慣れる

箸の使い方が何となく分かってきたら、遊びながら箸の使い方に慣れていきましょう。箸を使ったゲームをするのが主流です。子どもたちが、ポンポンボールやスポンジを皿から皿に移し替え、その際の速さや箸の持ち方の正しさなどを競争します。

ただし、あくまで箸の使い方に慣れるのが目的です。競争の順位やゲームの盛り上がりよりも「楽しく学ぶ」ことに重きをおいて指導しましょう。

手指を鍛える遊び5選

箸トレーニングを始める前に、まずは手指を鍛える練習を行っておくことが大切です。遊びを取り入れながら楽しく運動しましょう。手先の運動におすすめの遊びを5つご紹介します。

シール張り

台紙からシールを剥がし、指定された場所に貼るという作業は、意外にも緻密性の高い作業です。手先をコントロールする力が育まれます。

【用意するもの】

  • 丸シール(色を複数用意する)
  • シールを入れる容器
  • ゴミ(台紙)を入れる容器

【遊び方】

  • 丸や絵柄を記載した台紙を用意する
  • 好きな色のシールを選ぶ
  • 台紙からシールを剥がし、丸の中に貼る

小麦粉粘土

小麦粉粘土は手の指先の感覚を養う「感覚遊び」に最適です。小麦粉で作る粘土のため、万が一口の中に入れてしまっても問題がなく、保育園でも安心して使用できます。ただし、小麦粉にアレルギーがある子の有無は事前にしっかりと確認してから行いましょう。

【用意するもの】

  • 小麦粉(1人あたり300~500g)
  • 水(適量)
  • サラダ油(少々)
  • 塩(少々)
  • ボール

【遊び方】

  • ボールに小麦粉と塩を入れる
  • 小麦粉の固さを確認しながら水を入れる
  • 練るように混ぜる
  • 油を少々加える
  • 再度混ぜ合わせる
  • 完成した小麦粉を使用し、動物や食べ物などを作成したりちぎったりして楽しむ

紐通し

紐に、ビーズのように穴の開いたものを通す遊びです。穴が小さければ小さいほど難易度は上がります。また、ビーズだけでなくフエルトやトイレットペーパーの芯などを使用して自作することも可能です。自分で作れる紐通し玩具の作り方をご紹介します。

【用意するもの】

  • トイレットペーパーの芯(1個)
  • 紐(1本)
  • マスキングテープ
  • はさみ
  • 穴あけパンチ

【遊び方】

  • トイレットペーパーの芯を適当な大きさで切る
  • マスキングテープの幅で芯を装飾する
  • 切った芯を軽く折り、真ん中に穴あけパンチを当てて穴をあける
  • 穴の部分に紐を通して遊ぶ
    ※難易度を下げる場合は、パンチで穴を開けずに、筒状の部分に紐を通していく

ちぎり絵

ちぎり絵は、季節の壁面製作でよく使用される技法です。紙をちぎり、好きなように装飾しながら台紙に貼っていきます。紙をちぎる作業や、のりで貼り付ける作業などは指先の緻密さが求められるため、手指の運動に適しています。

【用意するもの】

  • 折り紙
  • 画用紙
  • マーカーやクレヨン
  • のり

【遊び方】

  • 折り紙をちぎる
  • ちぎった折り紙にのりを付けて台紙に貼る
  • 余白の部分に絵を描く

コマ回し

コマは指先の力が発達していなければ上手に回転させることができません。そのため、手指のトレーニングに最適な遊びです。また、コマは回る様子を観察しているだけでも楽しめるので、クラスみんなで楽しみを共有できるメリットもあります。

3歳児クラスでコマを作成する際は、安全性の高いコマを選択しましょう。ここでは牛乳パックを使って作れるコマをご紹介します。

【用意するもの】

  • 牛乳パック
  • クレヨンやマジック
  • マスキングテープ
  • ペットボトルのキャップ
  • テープ
  • ボタン
  • はさみ

【遊び方】

  • 牛乳パックの底を中心にして切り開く
  • マスキングテープやクレヨンなどで装飾する
  • ペットボトルのキャップを牛乳パックの底の中心部分に貼り付ける
  • 裏側にはボタンを貼り付ける
  • コマを回して遊ぶ

箸トレーニングの遊び方

指先が自由に動かせるようになってきたら、箸トレーニングに移行しましょう。箸に慣れるためには、楽しく箸の動かし方を学習できる遊びを展開することが大切です。箸トレーニングの始め方をご紹介します。

道具を集める

箸トレーニングは箸と掴める物さえあれば簡単に開始できます。ただし、工夫を加えることでよりトレーニングしやすくなるので、まずはトレーニングに必要な道具を集めましょう。箸トレーニングに必要な道具は以下の通りです。

  • フェルトボールやスポンジ、豆など
  • タッパー
  • ラミネートコーティングフィルム
  • 動物のイラスト
  • 割り箸
  • 洗濯ばさみ
  • テープ
  • ハサミ
  • カッター

玩具の作り方

玩具を可愛くデコレーションすることで子どもたちの気分が盛り上がり、より楽しく箸トレーニングを進められます。玩具の作り方・遊び方は以下の通りです。

  • イラストをラミネートする
  • タッパーのフタにイラストを貼り付ける
  • 口の部分をカッターで切り穴をあける
  • 割り箸を割り、持ち手の部分に洗濯ばさみをテープで貼り付ける
    (持ち手の部分が小さく、口の部分が大きく開くように)
  • フェルトボールやスポンジ、豆などを箸で摘み、口の部分に入れていく

箸トレーニング遊びを行う際の注意点

箸トレーニング遊びを展開する際は、いくつか注意点があります。楽しく、かつ、効果的なトレーニングを行うためには以下のポイントに注意しながら進めましょう。

自発的に「やりたい」と思う気持ちを大切に

箸を正しく持てるようにしてあげたいという気持ちが先行しすぎてしまうと、ついつい指導に熱が入り厳しくなってしまうこともあります。しかし、箸トレーニングは楽しい雰囲気で進めることが大切です。

子どもが自ら「トレーニングしたい」「早く箸を使えるようになりたい」と思う気持ちを育てましょう。箸トレーニングを強制したり、失敗したことを叱ったりする必要はありません。

食事の際は遊ばないように声掛けする

箸を使用する際のルールやマナーも一緒に教えていきましょう。楽しくトレーニングを進めることは大事ですが、楽しさの中に「学び」を取り入れることを忘れてはいけません。

「箸を使う際はふざけない」「箸を友達の方に向けたり、太鼓のバチのように使用したりしない」といった基本的なマナーを事前に伝えておく必要があります。

子どもの発達に合わせて進める

心身の発達には個人差があるものです。2歳で箸に興味を持つ子もいれば、5歳ごろまでスプーンやフォークを使用したがる子もいます。

3歳ごろで箸トレーニングを始める保育園が多いですが、3歳児だからといって必ずしも箸を使えなければいけないことはありません。焦らず、個人のペースに合わせてトレーニングを進めましょう。

また、箸トレーニングを嫌がる子には、家庭での協力を要請するのも方法のひとつです。保育園では一斉保育でカリキュラムをこなさなければいけないことも多いため、個別指導が難しい場合もあります。「保育園でやらせなければ」と保育士が思えば思うほど子どもの負担になりかねませんので、注意しましょう。

まとめ

3歳頃になると心身が発達し、「箸を使いたい」という気持ちも自然と出てきます。手先の運動を取り入れながら箸トレーニングを進めましょう。

箸トレーニングでは、スポンジやフエルトボールなど柔らかく持ちやすいものから始めて「できた!」「楽しい」という気持ちを育むことが重要です。今回ご紹介した遊びやトレーニング内容も、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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